寝返りと睡眠の関係性:作業療法士が語る健康な睡眠の重要性

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こんにちは、作業療法士であり、睡眠オタクの石垣貴康です。今回は、睡眠の中で非常に重要な役割を果たす「寝返り」について深掘りし、そのメカニズムや健康への影響について詳しく解説します。

医療用語を取り入れた専門的な内容でお届けしますので、睡眠の質を向上させたい方、睡眠リテラシーを高めたい方の参考になれば幸いです。

1. 寝返りとは?

寝返りは、睡眠中に体の位置を変えるための自然な動作であり、健康な睡眠を維持するために不可欠です。寝返りは筋肉、関節、神経系の協調的な働きによって実現され、体のさまざまな部位にかかる圧力を分散させる役割を果たします。これにより、血行が促進され、筋肉や関節の健康が維持されます。

2. 寝返りの役割

2.1 体圧分散

寝返りを打つことで、体の一部に集中する圧力を分散させることができます。長時間同じ姿勢で寝ていると、体の一部に過剰な圧力がかかり、血行不良や組織のダメージを引き起こす可能性があります。これにより、褥瘡(床ずれ)や筋肉の硬直が発生するリスクが高まります。寝返りは、これらのリスクを軽減し、皮膚や組織の健康を保つために重要です。

2.2 筋肉と関節の健康維持

寝返りは、筋肉と関節の柔軟性を保つために必要です。筋肉は、一定の時間動かさないと硬直し、関節の可動域が狭くなります。寝返りを打つことで、これらの部位が動かされ、柔軟性が維持されます。特に高齢者や筋力が低下している人にとって、寝返りは非常に重要です。

2.3 呼吸の確保

寝返りは、呼吸のリズムを調整し、気道が閉塞するのを防ぐ役割も果たします。特に仰向けで寝ていると、舌が喉の奥に落ち込み、気道が部分的に閉塞されることがあります。寝返りを打つことで、気道が開放され、呼吸がスムーズに行われるようになります。これは、睡眠時無呼吸症候群の予防にもつながります。

2.4 睡眠の質向上

適度な寝返りは、深い睡眠を促進し、睡眠の質を向上させます。深い睡眠は、身体の修復や成長、免疫機能の強化に重要な役割を果たします。寝返りが少なすぎると、逆に睡眠の質が低下し、疲労感が残ることがあります。

3. 寝返りの頻度と影響

健康な成人は一晩に約20〜40回の寝返りを打つとされています。しかし、寝返りの頻度は個人差があり、年齢や健康状態によっても異なります。以下は一般的なガイドラインです:

年齢層寝返りの頻度(回/夜)
幼児40〜60
子供30〜50
成人20〜40
高齢者10〜30

寝返りが少ないと、褥瘡(床ずれ)のリスクが高まり、筋肉の硬直や血行不良が発生しやすくなります。これにより、睡眠の質が低下し、日中の活動に支障をきたす可能性があります。

4. 寝返りを促す方法

4.1 適切な寝具の選択

寝返りを打ちやすくするためには、適切な寝具を選ぶことが重要です。柔らかすぎるマットレスは体が沈み込み、寝返りを打ちにくくします。一方で、硬すぎるマットレスは体の圧力を十分に分散できず、寝返りの頻度が増える可能性があります。体に合った適度な硬さのマットレスを選びましょう。

4.2 寝室の環境整備

快適な寝室環境を整えることで、自然な寝返りを促進します。寝室の温度や湿度を適切に保ち、静かで暗い環境を作ることが重要です。また、広い寝床を確保し、寝返りを打つスペースを十分に取ることも大切です。

4.3 日中の適度な運動

日中に適度な運動を取り入れることで、筋力を維持し、寝返りを打ちやすくなります。特にストレッチや柔軟運動は、筋肉や関節の柔軟性を高めるために有効です。

4.4 睡眠姿勢の改善

仰向け、横向き、うつ伏せのいずれの姿勢でも快適に寝られるように、枕やクッションを利用して体をサポートすることが有効です。特に、横向きで寝ることは、気道を確保しやすく、寝返りも打ちやすい姿勢とされています。

5. 寝返りと睡眠各ステージの関係性

5.1 ノンレム睡眠(NREM睡眠)

ノンレム睡眠は、入眠期、軽い睡眠、中程度の深い睡眠、深い睡眠の4つのステージに分かれます。

ステージ1: 入眠期

睡眠の初期段階であり、浅い眠りです。体がまだリラックスしていないため、寝返りは少ないです。

ステージ2: 軽い睡眠

睡眠が少し深くなり、体温が低下し、心拍数や呼吸が安定します。筋肉がさらにリラックスし、寝返りが比較的頻繁に見られます。

ステージ3: 中程度の深い睡眠

深い睡眠状態に入り、脳波が徐波(デルタ波)に変わります。この段階では寝返りの頻度が減少しますが、体の健康を保つために重要です。

ステージ4: 深い睡眠

最も深い睡眠段階であり、身体の修復や成長が最も活発に行われます。この段階では寝返りは最も少なくなりますが、必要なときには打たれます。

5.2 レム睡眠(REM睡眠)

レム睡眠は目が急速に動く特徴があり、夢を見ている段階です。脳波が覚醒時に近いパターンを示し、脳の活動が活発になりますが、筋肉は一時的に麻痺状態にあります。このため、レム睡眠中は寝返りを打つことはほとんどありません。しかし、レム睡眠の終わりに近づくと、麻痺が解かれ、寝返りを打つことがあります。

6. 寝返りをしない人の特徴

寝返りが少ない、あるいはほとんどしない人にはいくつかの共通した特徴や原因があります。これらは生理的な要因、環境的な要因、健康状態によるものなどさまざまです。

6.1 健康状態

筋力低下

筋肉の力が弱い人は、寝返りを打つためのエネルギーが不足していることがあります。特に高齢者や長期間寝たきりの人は筋力が低下しやすく、寝返りを打つのが難しくなります。

関節の問題

関節炎や関節の硬直がある人は、痛みや不快感のために寝返りを打ちにくくなります。関節の可動域が制限されている場合も同様です。

神経系の障害

パーキンソン病や脳卒中など、神経系の障害を持つ人は、寝返りを打つための運動機能が制限されることがあります。

6.2 睡眠環境

不適切な寝具

柔らかすぎる、または硬すぎるマットレスや枕は、寝返りを打つのを妨げる可能性があります。適切な寝具がないと、体が自然に動かず、寝返りが少なくなります。

狭い寝床

ベッドや布団が狭すぎると、寝返りを打つスペースが限られ、動きが制約されます。

寝室の温度と湿度

寝室が暑すぎたり寒すぎたりすると、快適な睡眠が妨げられ、寝返りを打ちにくくなります。適度な温度と湿度が重要です。

6.3 睡眠習慣

浅い睡眠

睡眠が浅いと、寝返りを打つ回数が減ることがあります。浅い睡眠は、ストレス、カフェインの摂取、寝る前の過剰な活動などによって引き起こされることがあります。

固定した睡眠姿勢

ある特定の姿勢で寝る習慣がある人は、寝返りを打たずにその姿勢を保ち続けることがあります。

6.4 生理的要因

肥満

体重が重い人は、寝返りを打つのが物理的に困難になることがあります。体の動きが制限されるため、寝返りの頻度が減少します。

加齢

年齢とともに寝返りの頻度は減少する傾向にあります。高齢者は筋力低下や関節の硬直、神経系の変化などの影響で寝返りが少なくなります。

7. 寝返りの筋活動

寝返りは、睡眠中に体の位置を変えるために行われる複雑な運動であり、さまざまな筋肉が協調して働く必要があります。以下に、寝返りに関与する主な筋肉とその役割について詳しく解説します。

7.1 主な筋肉群

腹筋群

  • 腹直筋:寝返りを打つ際に体をねじる動作に関与します。特に仰向けから横向きに変わるときに重要です。
  • 外腹斜筋と内腹斜筋:体を回転させる動作を助けます。寝返りの際、体をねじる動作で活躍します。

背筋群

  • 脊柱起立筋:背中を支える重要な筋肉であり、寝返りを打つ際に体を安定させる役割を果たします。
  • 多裂筋:脊柱を支え、体の回転を助けます。小さな動きを細かく制御するために重要です。

臀筋群

  • 大臀筋:寝返りを打つ際に下半身を回転させるために重要な役割を果たします。体を持ち上げる動作に関与します。
  • 中臀筋と小臀筋:体のバランスを保ち、寝返りの動作をスムーズに行うために必要です。

股関節屈筋群

  • 腸腰筋:股関節を屈曲させる筋肉で、脚を引き上げる動作を助けます。寝返りを打つ際に重要です。
  • 大腿四頭筋:大腿を持ち上げる動作をサポートします。

肩甲骨周囲筋群

  • 僧帽筋:肩甲骨を動かし、上半身の回転を助けます。
  • 広背筋:背中の広範囲にわたる筋肉であり、寝返りを打つ際に体を安定させます。

首筋群

  • 胸鎖乳突筋:頭を回転させる動作を助けます。寝返りの際に首を支えるために重要です。
  • 頸部深層筋群:頭と首を安定させる役割を果たします。

7.2 筋活動のプロセス

寝返りの動作は、連続した筋活動の結果として実現されます。以下に、典型的な寝返り動作のプロセスを解説します。

動作の開始

腹直筋と腹斜筋の収縮:体をねじるために腹筋が収縮し始めます。この動作により、体幹が回転し始めます。

背筋の協調

脊柱起立筋と多裂筋の協力:背中の筋肉が収縮し、脊柱を安定させます。これにより、体の動きがスムーズに行われます。

下半身の動作

大臀筋と腸腰筋の収縮:下半身を持ち上げるために、臀筋と腸腰筋が活動します。これにより、脚が持ち上がり、体全体が回転しやすくなります。

肩と首の動作

僧帽筋と胸鎖乳突筋の活動:上半身と首が動き、体のバランスを保ちます。これにより、寝返りがスムーズに完了します。

8. 寝返りと健康への影響

寝返りが少ない、またはほとんどしない人には、さまざまな健康問題が発生するリスクがあります。以下に、その影響と対策について詳しく解説します。

8.1 健康問題

褥瘡(床ずれ):長時間同じ姿勢で寝ていると、体の一部に圧力がかかり続け、褥瘡が発生するリスクが高まります。特に高齢者や寝たきりの人に多く見られます。

筋肉の硬直:同じ姿勢を続けることで筋肉が硬直し、痛みや不快感を感じることがあります。これにより、睡眠の質が低下します。

血行不良:長時間同じ姿勢でいると血行が悪くなり、体全体に酸素や栄養が十分に供給されなくなります。これが長期間続くと、体の機能が低下する可能性があります。

呼吸障害:仰向けで寝続けると、睡眠時無呼吸症候群のリスクが高まります。気道が閉塞されやすくなるため、寝返りを打つことが重要です。

8.2 改善策

適切な寝具の選択:体に合ったマットレスや枕を選ぶことが重要です。適度な硬さとサポートを提供する寝具を使用しましょう。

睡眠環境の整備:寝室の温度や湿度を適切に調整し、快適な睡眠環境を整えましょう。また、広い寝床を確保することで寝返りを打ちやすくなります。

日中の活動:適度な運動を取り入れることで筋力を維持し、寝返りを打ちやすくします。また、リラクゼーションやストレッチも効果的です。

医療的なサポート:関節や神経系に問題がある場合は、医師や理学療法士に相談し、適切な治療やリハビリを受けることが重要です。

9. 結論

寝返りは健康な睡眠を維持するために不可欠な役割を果たし、そのメリットは多岐にわたります。体圧の分散、筋肉と関節の健康維持、呼吸の確保、睡眠の質向上など、寝返りを打つことで得られる健康効果は計り知れません。

適切な寝具の選択や寝室環境の整備、日中の生活習慣を見直すことで、自然な寝返りをサポートし、より良い睡眠を目指しましょう。

よくある質問と回答

質問1:適切な寝具の選び方について教えてください。

回答: 適切な寝具は個々の体型や体重、睡眠姿勢に応じて選ぶことが重要です。マットレスは中程度の硬さが推奨され、体圧を均等に分散させる機能があるものが理想的です。枕は首のカーブを自然にサポートする高さと硬さが求められ、特に頸椎のアライメントを保つことが重要です。個々の体の特性や睡眠習慣に基づいて選択することが望ましいです。

質問2: 寝返り改善の運動やストレッチはありますか?

回答: 寝返りを増やすためには、コアマッスル(腹直筋、腹斜筋、背筋群)を強化する運動が有効です。プランクやブリッジ、ツイストクランチなどの運動が推奨されます。また、ハムストリングスや腸腰筋を柔軟に保つためのストレッチも重要です。ヨガのポーズである「キャットカウ」や「スパインツイスト」も効果的です。

質問3: 日中の活動が睡眠中の寝返りにどのように影響しますか?

回答: 日中の活動、特に適度な運動は筋力を維持し、関節の可動域を広げるため、睡眠中の寝返りを打ちやすくします。運動は血行を促進し、筋肉の柔軟性を向上させるため、筋肉の硬直を防ぎます。これにより、寝返りが容易になり、快適な睡眠が得られます。さらに、適度な疲労感は入眠をスムーズにし、深い睡眠を促進します。

質問4: 高齢者が寝返りを打ちやすくするための工夫はありますか?

回答: 高齢者が寝返りを打ちやすくするためには、ベッドの高さやマットレスの硬さを調整することが有効です。適度に硬いマットレスは、身体のサポートを提供し、寝返りを助けます。また、サポートクッションや体位変換クッションを使用して、体の一部にかかる圧力を分散させることも有効です。さらに、夜間に適度な水分補給を行い、筋肉の弾力性を維持することも重要です。

質問5: 特定の睡眠姿勢が寝返りに影響を与えることはありますか?

回答: はい、特定の睡眠姿勢は寝返りの頻度や質に影響を与えます。例えば、仰向けで寝る姿勢は、舌が喉に落ち込みやすく、睡眠時無呼吸症候群を引き起こす可能性があります。一方、横向きの姿勢は気道を開放しやすく、寝返りを打ちやすい姿勢とされています。うつ伏せで寝る場合、首や背骨に負担がかかるため、頻繁な寝返りが必要となることがあります。適切な姿勢を維持し、寝返りを促進するために、体にフィットする枕やサポートクッションの使用が推奨されます。

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参考文献

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