この記事を書いたのは

睡眠オタクな作業療法士 石垣貴康です。

医療現場で延べ3万人以上の睡眠と身体の悩みに向き合い、現在は三重県で「眠りのコツ研究所」と「Totonoe-整-」を運営しています。

国家資格である作業療法士として、姿勢や動作の専門知識をもとに、科学的かつ実践的な睡眠改善を提案しています。専門職の育成や技術指導にも携わっています。

ブログ以外にも、書籍出版や講演、教育機関での授業など、睡眠のことをお伝えしています。

本ブログでは、医学的根拠と臨床経験に基づいた“リアルに使える睡眠情報”を、誰にでもわかりやすく、かつ深掘りしてお届けしています。

はじめに

こんにちは、睡眠オタクな作業療法士です。いびきは多くの人々にとって悩みの種であり、特に睡眠の質を低下させる要因の一つです。

本ブログでは、「いびき」「筋肉」「睡眠」の三つのキーワードに焦点を当て、いびきのメカニズム、関与する筋肉、そしてその対策について専門的に解説します。

いびきのメカニズム

いびきは、睡眠中に気道が部分的に閉塞されることで発生する音です。具体的には、気道が狭くなることで空気の流れが乱れ、周囲の組織が振動して音を発生させます。いびきの発生には以下の要因が関与しています。

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軟口蓋と咽頭筋の役割

軟口蓋筋(なんこうがいきん)は、軟口蓋(なんこうがい)を持ち上げたり、緩めたりする筋肉です。

軟口蓋が十分に持ち上がらないと、気道が狭くなり、いびきの原因となります。

咽頭筋(いんとうきん)は咽頭の壁を構成する筋肉で、呼吸時に咽頭を広げる働きをします。この筋肉が十分に機能しないと、気道が狭くなり、いびきを引き起こします。

舌筋と顎の筋肉の影響

舌筋(ぜっきん)は舌を動かす筋肉で、特に舌根が喉の方へ落ち込むと気道を狭めていびきを引き起こします。

また、顎の筋肉(あごのきんにく)は下顎を支える筋肉で、寝ている間に顎が後ろに引っ張られると気道が狭くなり、いびきが発生します。

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いびきの原因とリスクファクター

いびきの原因は多岐にわたりますが、以下の要因が主要なリスクファクターとなります。

肥満

肥満は気道周囲の脂肪組織の増加を引き起こし、気道の閉塞を助長します。特に首周りの脂肪が増加すると、気道が狭くなり、いびきの発生率が高まります。

年齢

加齢に伴い、咽頭筋や舌筋の筋力が低下し、気道の弾力性も減少します。これにより、気道が容易に閉塞しやすくなり、いびきを引き起こしやすくなります。

アルコールと薬物

アルコールや特定の薬物(例:鎮静剤や筋弛緩剤)は、咽頭筋や舌筋を弛緩させ、気道の閉塞を助長します。これにより、いびきが発生しやすくなります。

鼻づまり

鼻づまりは鼻呼吸を困難にし、口呼吸を強制します。口呼吸は気道の狭窄を引き起こし、いびきの原因となります。

いびきの影響とリスク

いびきは単なる音の問題に留まらず、健康に対する深刻な影響を及ぼすことがあります。特に、以下のようなリスクが指摘されています。

睡眠時無呼吸症候群 (SAS)

いびきは睡眠時無呼吸症候群(SAS)の初期症状であることが多いです。SASは、睡眠中に気道が完全に閉塞され、呼吸が一時的に停止する状態です。これにより、酸素供給が低下し、心血管系への負担が増加します。

睡眠の質の低下

いびきは、本人だけでなく同居者の睡眠の質も低下させます。頻繁ないびきは睡眠の中断を引き起こし、日中の眠気や集中力の低下を招くことがあります。

心血管疾患のリスク

いびきは、長期的には高血圧や心臓病、脳卒中などの心血管疾患のリスクを増加させる可能性があります。特に、SASとの関連が強い場合は注意が必要です。

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いびきの診断と治療

いびきの診断には、専門医による詳細な評価が必要です。一般的には、以下のような診断方法が用いられます。

睡眠検査

睡眠検査(ポリソムノグラフィー)は、睡眠中の呼吸、脳波、心拍数、酸素飽和度などを記録し、いびきや睡眠時無呼吸の有無を評価します。これにより、いびきの原因や重症度を明らかにします。

内視鏡検査

内視鏡検査は、気道の構造を直接観察するための方法です。これにより、気道の閉塞部位や異常を特定し、治療方針を決定します。

いびきの治療法

いびきの治療法は、原因や重症度によって異なります。一般的には、以下のような治療法が選択されます。

ライフスタイルの改善

肥満が原因の場合、体重を減らすことでいびきの改善が期待できます。バランスの取れた食事と定期的な運動が重要です。

寝姿勢の改善

仰向けで寝ることは気道の閉塞を助長するため、横向きで寝ることが推奨されます。また、寝室の環境を整えることも重要です。

デバイスの使用

いびき防止デバイス(例:マウスピースやCPAP)は、気道を開放し、いびきを軽減するために使用されます。

特にCPAP(シーパップ)は、睡眠時無呼吸症候群の治療に効果的です。ただ、対処療法的になりますが、なしで眠るはオススメできません。CPAPを検討してみてください。

手術

重度のいびきやSASの場合、手術による治療が検討されます。具体的には、軟口蓋や咽頭の組織を切除する手術や、顎の位置を調整する手術などがあります。

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筋肉トレーニングとリハビリテーション

いびきの改善には、関与する筋肉のトレーニングが効果的です。特に、以下の筋肉トレーニングが推奨されます。

舌筋トレーニング

舌を上顎に押し付ける運動や、舌を左右に動かす運動が効果的です。これにより、舌筋の強化と舌根の位置調整が期待できます。

咽頭筋トレーニング

発声練習や、特定の音を繰り返し発声することで、咽頭筋の強化が図れます。例えば、「エー」や「オー」といった音を発声する練習が効果的です。

顎の筋肉トレーニング

顎を前後に動かす運動や、口を開け閉めする運動が効果的です。これにより、顎の筋力を強化し、気道の確保が期待できます。

結論

いびきは、多くの人々にとって睡眠の質を低下させる要因となっています。

しかし、そのメカニズムを理解し、適切な対策を講じることで改善することが可能です。

肥満やライフスタイルの改善、適切な治療法の選択、そして関与する筋肉のトレーニングが効果的です。

睡眠オタクな作業療法士として、いびきに悩む皆さんが質の高い睡眠を取り戻すためのお手伝いができれば幸いです。

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引用

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  2. Schwab, RJ, Pasirstein, M., Pierson, R., Mackley, A., Arens, R., Maislin, G., … & Pack, AI (2003). 容積磁気共鳴画像法による閉塞性睡眠時無呼吸症の上気道解剖学的危険因子の特定。American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine、168(
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