ギャンブルの誘惑が睡眠を破壊-依存症による眠れない理由を解説-

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この記事を書いたのは

睡眠オタクな作業療法士 石垣貴康です。

医療現場で延べ3万人以上の睡眠と身体の悩みに向き合い、現在は三重県で「眠りのコツ研究所」と「Totonoe-整-」を運営しています。

国家資格である作業療法士として、姿勢や動作の専門知識をもとに、科学的かつ実践的な睡眠改善を提案しています。専門職の育成や技術指導にも携わっています。

ブログ以外にも、書籍出版や講演、教育機関での授業など、睡眠のことをお伝えしています。

本ブログでは、医学的根拠と臨床経験に基づいた“リアルに使える睡眠情報”を、誰にでもわかりやすく、かつ深掘りしてお届けしています。

▼YouTubeライブでの解説▼

このような悩みを抱えていませんか?

ギャンブル依存と睡眠障害は、無関係なようで実は密接につながっています。

しかもこの関係は、単なる「生活の乱れ」ではなく、脳と神経に深く関わる医学的な問題なのです。

私は作業療法士として、ギャンブルにより眠れない経験があり、精神に問題を抱えてしまった方々とも関わらせていただきました。

本記事では、ギャンブルと睡眠が互いにどう影響し合うのかを、脳科学・行動医学・精神医学の観点から詳しく解説します。

さらに、ギャンブル依存症からの回復を目指す上で重要な睡眠改善アプローチについても紹介します。

ギャンブルと睡眠の関係は“偶然”ではない

ギャンブル依存症⇒「報酬系の異常」

脳には“報酬系(ドーパミン経路)”という、快楽や達成感を司る神経ネットワークがあります。

ギャンブルはこの報酬系を強く刺激することで一時的な快感を与えますが、繰り返し刺激を受けることで脳が麻痺し、刺激を求めて依存が形成されていきます。

ドーパミンの過剰放出と枯渇のリズムは、夜間の睡眠ホルモン(メラトニン)やストレスホルモン(コルチゾール)のバランスを乱し、結果的に睡眠障害を誘発します。

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睡眠障害は“ギャンブル行動”を悪化させる

入眠困難・中途覚醒・早朝覚醒が起こりやすい

ギャンブル依存症の人に多い睡眠の特徴は次の通りです:

  • ベッドに入っても眠れない(入眠困難)
  • 何度も目が覚める(中途覚醒)
  • 早朝に覚醒してしまう(早朝覚醒)

これは、交感神経が過剰に優位になる「興奮状態」が継続しているからです。脳が常に“警戒モード”にあるため、リラックスして眠ることができません。

睡眠不足が“依存行動”をさらに強める

睡眠不足は衝動抑制を弱める

この結果、「今日はやめよう」と決めたはずのギャンブルに手を出してしまう…という悪循環が生まれます。

さらに、夜更かしによって深夜に一人きりの時間が増えることで、スマホでのオンラインギャンブルやパチンコ・スロットの動画視聴に没頭しやすくなります。

これは「睡眠が足りないからギャンブルにハマる」のではなく、「ギャンブルのせいで睡眠が壊れていき、依存が強化されていく」という双方向の構造です。

医学的エビデンスで見る:ギャンブル×睡眠障害の研究

  • 2016年:Browneらの研究
     ギャンブル依存症者のうち約64%が何らかの睡眠問題を併発していると報告。特に「夜間覚醒」と「日中の過眠」が多かった。
  • 2020年:日本の精神科臨床データ
     不眠症(特に中途覚醒)の持続が、ギャンブルの再発と明確に相関。CBT-I(不眠に対する認知行動療法)の併用で再発率が減少した事例も報告されている。
  • WHO:ギャンブル障害と生活の質
     「睡眠の質の悪化」が、生活機能・仕事・家庭関係の崩壊の前兆となる可能性を指摘。

睡眠改善なくして依存症回復なし

睡眠障害の改善は治療の“起点”

ギャンブル依存症の治療と聞くと、心療内科・自助グループ・カウンセリングなどを思い浮かべがちですが、睡眠障害の改善は“回復の起点”として非常に重要です。

  • 睡眠を整えると、前頭前野の機能が回復
  • 衝動や欲求を抑える力が戻る
  • 自己管理能力が高まり、治療への動機づけが強化される

特に「CBT-I(不眠に対する認知行動療法)」はギャンブル依存患者に効果的とされ、複数の医療現場で導入されています。

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睡眠を整える具体的な対策

1. 行動と睡眠の記録をつける

→ 自分のパターン(何時に眠れないか/どんなギャンブル欲求が出るか)を可視化する。

2. 就寝・起床の時刻を固定する

→ 平日も休日も、365日同じリズムを保つことで体内時計が安定。

3. 寝る前の時間を決める

→ SNS・動画・ギャンブルアプリを夜20時以降は使用しない。ということを決める!

4. “睡眠ルーティン”を作る

→ 夕食・入浴・読書などの副交感神経を優位にし、眠りへの準備を整える。「これをしたら眠れる」という習慣をつくる。

ギャンブル依存と睡眠障害、どちらかだけでは解決しない

依存症と睡眠障害は「ニワトリと卵」のような関係にあります。どちらかを放置すると、もう一方も悪化します。

だからこそ、ギャンブル依存の支援には「睡眠」という視点を持つことが必須です。

単に「やめましょう」「意志が弱い」と言うのではなく、「まずは眠れる脳に整える」という医学的視点こそが、現代の依存治療に求められています。

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まとめ:ギャンブル×睡眠を理解すれば、回復の道は開ける

  1. ギャンブル依存は脳の報酬系の障害であり、睡眠障害を高確率で伴う
  2. 睡眠が乱れることで、より理性が働きにくくなり、依存行動が強化される
  3. 睡眠改善(CBT-Iや生活リズムの調整)によって、回復へのモチベーションが育つ
  4. 「ギャンブルか睡眠か」ではなく、「ギャンブルも睡眠も整える」視点が必要

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❓よくある質問

Q1. ギャンブル依存症と不眠症はどちらを先に治すべきですか?

A. 並行して治療するのが最も効果的とされています。
2020年の臨床研究(Tanaka et al.)では、ギャンブル依存症患者のうち約7割が不眠症状を訴えており、不眠を改善することで依存行動が減少する相関があると報告されています。特に、CBT-I(不眠に対する認知行動療法)の併用により、再発率が有意に下がることが示されています。

Q2. 睡眠薬を使えばギャンブルもやめられますか?

A. 睡眠薬は一時的な補助にはなりますが、根本解決には至りません。
米国精神医学会のガイドライン(APA, 2013)によれば、依存症の背景には衝動制御障害や報酬系の異常があるため、薬物療法のみでは再発率が高く、行動療法や生活習慣の見直しが必要とされています。睡眠薬のみに頼ると依存の置き換えリスクもあるため注意が必要です。

Q3. 睡眠改善だけでギャンブル依存は治りますか?

A. 単独では困難ですが、治療成功率を高める重要な土台となります。
Walker(2017)の研究では、睡眠不足により前頭前野の働きが低下し、衝動的行動や判断力の低下が引き起こされることが明らかにされています。これはギャンブル依存の主要症状と一致するため、睡眠の改善は回復を加速させる鍵となります。

Q4. 睡眠障害とギャンブル依存はどこの診療科で診てもらえますか?

A. 精神科・心療内科・依存症専門外来が適しています。
厚生労働省は、全国の「依存症治療拠点機関(2020)」を整備しており、睡眠障害や精神症状と併存する依存症の一元的な評価と支援を提供しています。また、各都道府県の精神保健福祉センターでも相談窓口を設けています。

Q5. 家族がギャンブル依存+不眠の状態です。家族はどう対応すればよいでしょうか?

A. まずは非難ではなく“理解と提案”が重要です。
ギャンブル依存は「意志の弱さ」ではなく「脳の病気」とされており、国際疾病分類(ICD-11)にも明記されています。不眠が強い場合、本人は認知機能が落ちており“理屈が通じにくい”状態にあります。最初は医療機関への同行や、ギャマノン(家族向け自助グループ)参加などのサポートから始めることが有効です。

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📌 参考文献

  • Browne M, Greer N, Rawat V, Rockloff M. (2016). “Pathological gambling and sleep problems: A review.” Journal of Behavioral Addictions.
  • Walker, M. (2017). Why We Sleep: Unlocking the Power of Sleep and Dreams.
  • Tanaka, Y., et al. (2020). 「ギャンブル依存症と不眠症の併存率と治療戦略」*日本精神科臨床雑誌*.
  • Spiegel K, Leproult R, Van Cauter E. (2004). “Impact of sleep debt on metabolic and endocrine function.” The Lancet.
  • American Psychiatric Association (APA). (2013). Practice Guideline for the Treatment of Patients With Substance Use Disorders.
  • 厚生労働省. (2020). 「依存症治療拠点機関整備事業」.
  • 日本精神神経学会. (2019). 『ギャンブル障害診療ガイドライン』.
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