片麻痺になる瞬間-特有の動作・姿勢の理由&手の曲がりや内反の改善方法-

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片麻痺による歩行や姿勢異常の主な原因とは?

片麻痺は脳卒中後に起こる代表的な後遺症の一つです。歩行や立ち座りの不安定さや姿勢異常は、患者の生活の質を大きく左右します。

片麻痺によって、手が曲がる、足部が内反するといった姿勢の問題が発生することが多く、日常生活においてこれらの問題がさらに悪化する可能性があります。

進行性ではないのに、なぜでしょうか?

これらの姿勢異常の背後には、いくつかの医療的および日常的な要因が絡んでいます。

私は名古屋で脳梗塞後遺症のリハビリに特化した施設「脳リハ名古屋」で、作業療法士としても活動しています。

その経験をもとに記事を作成しております。以下の内容を参考にしてください。

片麻痺における医療的な要因

脳卒中による神経損傷

片麻痺の最も大きな原因は、脳卒中によって引き起こされる中枢神経系の損傷です。

脳卒中は、脳出血や脳梗塞によって血液供給が途絶え、脳の一部が損傷を受けます。この神経損傷によって、片側の手足の運動麻痺が生じ、筋肉の収縮や筋の出力低下が進行します。これにより、歩行の不安定さや姿勢異常が引き起こされるます。

筋力低下と関節拘縮

脳卒中後の片麻痺では、麻痺側の筋肉の活動が著しく低下し、関節の可動域が制限されることやそもそも関節を動かすことが難しくなります。

これにより、非麻痺側(一般的に言われる麻痺していない側または健側)での代償活動がみられ、身体の左右差・二分化が著名にみられます。

多くの方が姿勢の傾きがみられ、そのことが動作の際により強くみられます。

片麻痺者は足部内反や手の曲がりといった姿勢異常は、不安定な動作姿勢から姿勢への変換(立ち座り、立位→歩行など)の際に強調されることで、多くの方を悩ませます。

特に、歩行中の足部内反は、転倒リスクを高め、歩行を不安定する原因になります。

感覚障害と筋肉の過剰な緊張

片麻痺者には、運動麻痺だけでなく、感覚障害も生じることが多いです。

足や手の感覚が鈍くなることで、足部内反が起こりやすくなり、歩行中に足が不安定になります。この背景には、足部からの感覚情報を補うために視覚での感覚情報で代償することで、視線が下がることがあります。そうなると頭が下がることで重心が下がり、より足が出しづらい原因となります。

これは脳の損傷からくるものに加え、姿勢戦略の中でより足の動きを低下させる原因となります。

このように不安定な姿勢戦略によって、より非麻痺側の筋肉が過剰に緊張することで、固定側となる麻痺側の手が曲がる姿勢が強調され、日常動作が制限されることもあります。

愛知県作業療法士学会シンポジウム登壇時の様子

日常生活における要因

補助具による不適応

片麻痺者が歩行や立ち座りの際に補助具を使用することで、姿勢の傾きや左右差強くなることがあります。

多くの方がトイレの手すりやベッドからの立ち上がりで柵をつかむ経験があるかと思います。この動作が絶対にダメだというわけではありません。

ただ、そのような動作の中で、姿勢の非対称が強くなっているのを体感されていますでしょうか?

歩行補助具や立ち座りでの手すりの使用時は姿勢が変わる瞬間になります。

座位から立位。臥位(仰向け)から座位など。この際に非麻痺側で動きを代償することで、姿麻痺側は固定することを優先し、姿勢の左右差が強調されます。このときに、片麻痺らしい姿勢の状態になっている方が多いです。

中でも呼吸が止まっていたり、歯を強く噛み締めているなど、努力的であればあるほど片麻痺らしい特有の姿勢になっています。

短い入院期間で自宅に退院しなければならない。そのためには麻痺側が動かない状態でも、非麻痺側での自立を求められます。そのようなこともあり、補助具を使うのが必ずしもダメだというわけではありません。

その後のケアや麻痺側の扱いや管理をどうするか、によって今後の動作に影響するため参考にいただければと思います。

日常動作の不適切な反復

片麻痺者が無意識のうちに不適応な姿勢で動作を繰り返すことも、姿勢異常を経過と共に強める原因となります。

退院後に「手が曲がるのが強くなった」「内反して足先が痛い」「肩が痛くて亜脱臼が、、」など。退院後は活動量が増え、リハビリの量も減り、崩れた姿勢をケアする時間も軽減します。

例えば、座る時に常に同じ側に体重をかけたり、麻痺手がずっと曲がったままでいることで姿勢の左右差や傾き強くなり、そのようなよろしくない運動学習が促進され続ける可能性があります。

このような動作は、筋肉や関節に偏った負担をかけ、正常運動とは反して、片麻痺特有の固定化された姿勢を強める可能性があります。

今は大丈夫かもしれませんが、数年後・数十年後と長期的には転倒のリスクを上げることになりかねません。杖をついている手首の痛みや腰痛の原因もなる可能性があります。

生活環境の影響

生活環境も片麻痺による姿勢異常の悪化に影響を与えます。

例えば、狭い住環境や段差の多い住居では、麻痺側の足や手に過度な負担がかかりやすくなります。その他にも同じパターンで動き続けることで、同じ筋肉の収縮が続き、癖になりやすくなります。

片麻痺の方の特徴として、「運動パターンが少ない」という特徴があります。

・ここに手すりがないとトイレができない

・肩の可動域がなく、上のものが届かない

・まっすぐは歩けるけど、カーブが苦手

など運動の自由度がどうしても軽減してしまいます。

これにより、どうしても同じ動きばかりになり、身体への負担は大きくなります。足部内反や手の曲がりが悪化し、動作がさらに不安定になります。

心理的要因による影響

運動への恐怖心

人は恐怖や不安の際に身体を丸めることがあります。防御的な姿勢をとり、身体を固定することで自身を守ります。

片麻痺者は、歩行や立ち座りの際に転倒する恐怖から、無意識に麻痺側の手や足を保護しようとする

または非麻痺側を優位にして動作を行うことで麻痺側は曲げて1つに固定(例:肘や手を丸めて身体にくっつけるような)する戦略をとる。

この結果、手が曲がるや足部内反といった片麻痺特有の姿勢・動作が強調され、姿勢の異常が固定化されることがあります。心理的な要因が強く働くと、リハビリへの積極性が低下し、歩行や動作の改善へと影響することも少なからずみられます。

脳卒中交流会「運動障害」inNPO法人ドリーム

片麻痺からの改善脱却

どうしても生活のために非麻痺側での動作は避けることができません。そうしなければ、生活が成り立たないからです。

では、一体どうすればいいのでしょうか?

人によって動きの個人差は大きいのですが、共通して伝えられることを3つ簡略的に掲載させていただきます。

①両側のケアをする

麻痺側だけでなく、非麻痺側のケアをすることも大切です。普段同じような身体の使い方をしていることが多いため、マッサージなどで筋肉の血流を改善したり、いつも力みやすい筋肉を横になって力を抜く練習をゆったりしてみるなどがオススメです。

②気づくこと

これは私が提唱する「改善式リハビリ」の1つですが、原因となる場所に気づくことです。気づくことは、自分自身ができていない点を知ることなので、勇気が必要なこともあります。

いつ手足が曲がるのか?歩行でもどのタイミングで内反が強くなるのか?立ち上がるときに腕はどんな反応をしているのか?

自分自身を客観的に内観することが難しい方は、スマホで撮影してみることをオススメします。カメラがあるとより緊張してしまうかもしれませんが、自分がどのように動いているのか?を他人目線で知るのは、思ってもいなかった自分自身を知る機会にもなります。

③同じ動きをしない

肩や股関節、手首や足首は関節の自由度が高いです。しかし、普段の生活ではその自由度があるのに、一部の方向ばかりが動いているなんてこともあります。

そのため、ストレッチやリハビリの際にいつもと違う動きをすることをオススメします。これは脳への刺激にもなります。中でも、股関節は曲がりっぱなしで、伸びることが少ない方は多いです。

まとめ

片麻痺による歩行や姿勢異常は、単なる筋力低下や神経損傷だけではなく、日常生活の動作や心理的要因、さらには生活環境にまで原因が及ぶ複合的な問題です。

足部内反や手が曲がるといった片麻痺特有の姿勢異常は、これらの要因が相互に影響し合うことで発生し、進行疾患ではないものの、運動学習により強化されることが多いです。

早期からの適切なリハビリや、日常生活における動作の習慣化や気づきの獲得、両側の身体のケアが、これらの問題を未然に防ぐために重要です。

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  1. ピンバック: 脳梗塞後遺症による片麻痺者の体幹機能と神経生理学的アプローチ:日常生活の支障とエビデンス - Good Sense

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