はじめに
鼻中隔湾曲症（Deviated Septum）は、鼻腔を左右に分ける鼻中隔が偏っている状態を指します。この状態は先天的に生じる場合もあれば、外傷などによって後天的に生じる場合もあります。
鼻中隔湾曲症が引き起こす症状として、鼻詰まり、鼻血、頻繁な副鼻腔炎、顔面痛などが挙げられますが、特に睡眠に関連する影響も大きいです。
この記事では、鼻中隔湾曲症が睡眠に及ぼす影響や対処法について、専門的な視点から詳しく解説します。
鼻中隔湾曲症が睡眠に及ぼす影響
鼻詰まりと呼吸困難
鼻中隔湾曲症による鼻詰まりは、睡眠中の呼吸を妨げることがあります。鼻呼吸が困難になると、口呼吸に頼ることになり、これが睡眠の質に影響を与える可能性があります。
口呼吸は口腔内や喉の乾燥を引き起こし、これがさらなる不快感を生むことがあります。
睡眠時無呼吸症候群（OSA）
鼻中隔湾曲症は、睡眠時無呼吸症候群（Obstructive Sleep Apnea, OSA）のリスクを高める要因の一つです。OSAは、睡眠中に気道が一時的に閉塞し、呼吸が一時停止する状態を指します。
これにより、睡眠の質が著しく低下し、日中の疲労感や集中力の低下を引き起こします。OSAは、高血圧、心臓病、脳卒中などの重大な健康リスクとも関連しています。
いびき
鼻中隔湾曲症による鼻詰まりは、いびきの原因となることがあります。いびきは、気道が狭くなり、空気の流れが乱れることで発生します。
いびきは、本人だけでなく、家族やパートナーの睡眠にも影響を及ぼします。長期的ないびきは、OSAの前兆となることもあります。
▼睡眠に必要な鼻の機能４▼
鼻中隔湾曲症による生活面での悪影響や症状
慢性的な鼻詰まり
鼻中隔湾曲症は、慢性的な鼻詰まりを引き起こし、日常生活においても呼吸が困難になることがあります。これは特に運動時や急いでいるときに顕著です。
鼻詰まりは、夜間だけでなく日中の活動にも支障をきたし、集中力の低下やストレスの増加を招きます。
頻繁な副鼻腔炎
鼻中隔湾曲症は、副鼻腔の排出が不十分になるため、副鼻腔炎を繰り返すことがあります。これにより、鼻水や顔面の痛み、圧迫感が続くことがあります。副鼻腔炎は、鼻詰まりや頭痛を引き起こし、生活の質を低下させます。
嗅覚の低下
鼻詰まりが続くことで、嗅覚が低下することがあります。これにより、食事の楽しみが減少し、食欲不振に繋がることもあります。
嗅覚の低下は、危険物の察知能力を低下させ、事故のリスクを増加させることもあります。
口呼吸による乾燥と感染症リスク
鼻呼吸が困難なために口呼吸が増えると、口腔内や喉が乾燥しやすくなり、これが口腔内の感染症や喉の痛みを引き起こすことがあります。
口呼吸は、歯肉炎や虫歯のリスクを高める要因ともなります。
日中の疲労感と集中力の低下
睡眠の質が低下することで、日中の疲労感や集中力の低下を招き、仕事や学業のパフォーマンスに悪影響を及ぼすことがあります。これにより、社会生活や職業生活においても支障をきたすことがあります。
▼イビキについて詳しく▼
対処法と治療法
生活習慣の改善
寝室の湿度を適切に保ち、乾燥を防ぐことで鼻詰まりを軽減することができます。
また、アレルギー対策として、ペットやホコリを避けるようにしましょう。空気清浄機の使用も効果的です。
鼻腔洗浄
鼻腔を洗浄することで、鼻詰まりを軽減し、呼吸をスムーズにすることができます。
生理食塩水を使った鼻腔洗浄が一般的です。鼻腔洗浄は、鼻粘膜の保護と清潔を保つためにも重要です。
薬物療法
鼻詰まりを軽減するために、抗ヒスタミン薬やデコングスタント（鼻詰まり解消薬）が使用されることがあります。
しかし、長期間の使用は避けるべきです。特に、デコングスタントはリバウンド効果を引き起こす可能性があります。
手術
鼻中隔の偏りが著しい場合、外科的に修正する手術（鼻中隔矯正術）が必要となることがあります。
手術により、鼻腔の通りが改善され、呼吸がスムーズになり、睡眠の質が向上します。私も手術をしたことにより、呼吸量が改善されたこと体感しています。
手術は、全身麻酔または部分麻酔で行われ、回復期間は個人差がありますが、数週間を要することが一般的です。私は日帰り手術を受けました。
睡眠の質向上のために
睡眠環境の整備
寝室を快適に保つことが重要です。適切な温度、湿度、暗さ、静けさを保ちましょう。快適な寝具を使用し、寝室内の雑音や光を最小限に抑える工夫が必要です。
寝る前のルーチン
リラックスするためのルーチンを作りましょう。
例えば、温かいお風呂に入る、ストレッチをする、瞑想を行うなどです。寝る前にリラックスできる環境を整えることで、入眠しやすくなります。
定期的な運動
適度な運動は睡眠の質を向上させることが証明されています。ただし、寝る直前の激しい運動は避けましょう。
運動は、体内時計の調整と深い睡眠を促進する効果があります。
食事とカフェインの管理
寝る前の重たい食事やカフェインの摂取を避け、消化の良い食事を心掛けましょう。
アルコールやニコチンも睡眠の質に悪影響を与えるため、摂取を控えることが望ましいです。
▼睡眠オタOTオススメ記事３選▼
結論
鼻中隔湾曲症は、鼻詰まりや睡眠時無呼吸症候群など、睡眠に重大な影響を与える可能性があります。
適切な対処法や治療法を用いることで、症状を軽減し、睡眠の質を向上させることができます。専門医に相談し、最適な治療法を見つけることが重要です。
よくある質問と回答
質問1: 鼻中隔湾曲症の手術は痛みを伴いますか？
鼻中隔矯正術は麻酔下で行われるため、手術中に痛みを感じることはありません。
しかし、手術後は数日間の軽い痛みや不快感を感じることがあります。適切な痛み止めの処方により、これらの症状は管理されます。
質問2: 鼻中隔湾曲症が原因で嗅覚が完全に失われることはありますか？
鼻中隔湾曲症により嗅覚が低下することはありますが、完全に失われることは稀なようです。治療や手術により鼻腔の通りが改善されれば、嗅覚も回復する可能性があります。
質問3: 鼻中隔湾曲症がある場合、どのようなスポーツが適していますか？
鼻中隔湾曲症があっても、軽度の有酸素運動（ウォーキング、サイクリング、スイミングなど）は一般的に問題ありません。しかし、激しい運動やコンタクトスポーツは避けるべきです。運動前に専門医に相談することをお勧めします。
質問4: 鼻中隔湾曲症は子供にも影響しますか？
鼻中隔湾曲症は子供にも影響を及ぼすことがあります。特に、睡眠時無呼吸症候群や慢性的な鼻詰まりが見られる場合、早期に専門医の診察を受けることが重要です。
早期の治療により、発育や学習能力への影響を最小限に抑えることができます。個人的には、手術の検討は高校生くらいからだと考えております。
質問5: 鼻中隔湾曲症の治療にはどのくらいの時間がかかりますか？
鼻中隔湾曲症の治療には個人差がありますが、手術の場合、入院期間は通常1日から2日程度です。回復期間は数週間を要し、その間に適切なケアとフォローアップが必要です。具体的な治療計画は、専門医と相談して決定することが重要です。
TikTokで睡眠情報発信しています
引用文献
- American Academy of Otolaryngology-Head and Neck Surgery. “Deviated Septum.”
- Mayo Clinic. “Sleep Apnea.”
- National Heart, Lung, and Blood Institute. “What Is Sleep Apnea?”
- Journal of Clinical Sleep Medicine. “Impact of Nasal Obstruction on Sleep Quality.”