「寝たら忘れる」という言葉を耳にしたことはありませんか?
これは、忘れたい記憶を寝ることでリセットできるというニュアンスで使われることが多いですが、科学的に正しいのでしょうか?
本記事では、睡眠が記憶に与える影響について、睡眠オタクな作業療法士の視点から深掘りしていきます。
目次
睡眠中の脳:記憶はどうなる?
睡眠中に記憶は整理される
私たちが眠っている間、脳は記憶の整理を行っています。
このプロセスを「記憶の固定化(memory consolidation)」といいます。
睡眠中の脳では以下のようなことが起きています。
- 海馬が短期記憶を長期記憶に移行
学んだ情報や出来事が一時的に保存される「海馬(hippocampus)」から、脳の他の領域に記憶が再配置され、より強固な記憶として保存されます。 - 不要な記憶の消去
必要のない情報や、感情的なストレスが大きい記憶が部分的に削除されることがあります。この現象を「シナプス刈り込み(synaptic pruning)」と呼びます。
レム睡眠とノンレム睡眠の役割
睡眠には大きく分けて「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」の二種類があります。
それぞれの記憶の役割を見てみましょう。
- ノンレム睡眠(深い眠り)
主に事実やスキルの記憶を強化。脳が情報を整理する時間です。
例:勉強した内容や運動スキルの習得。 - レム睡眠(浅い眠り)
感情や創造性に関する記憶を整理。夢を見ることが多いのもこのタイミング。
例:感情的な出来事やストレスの整理。
「寝たら忘れる」が起きる3つの理由
1. 感情的な記憶が薄れる
睡眠中、特にレム睡眠では、感情を伴う記憶が再整理され、ストレスやネガティブな感情が緩和されることがあります。これは、心の安定を保つための自然なメカニズムといえます。
ある研究では、睡眠がPTSD(心的外傷後ストレス障害)の症状を軽減する効果があることが示されています。嫌な記憶が薄れることが、ポジティブな精神状態に繋がるのです。
2. 不要な記憶が削除される
睡眠中の「シナプス刈り込み」によって、重要でない記憶は削除されます。これが「寝たら忘れる」感覚の正体かもしれません。
例:日中に見た広告や会話の細かい内容など、日常生活において重要でない情報が消去される。
3. 記憶の定着が起きる一方で、細部はぼやける
睡眠中に記憶の重要な部分は保持されますが、細かいディテールは失われることがあります。これにより、記憶全体が整理される一方、断片的な部分が消える現象が起きます。
逆に寝ないと忘れやすくなる?
睡眠不足は記憶力に大きな影響を与えます。
特に、睡眠が不足すると以下のことが起きます。
- 記憶の固定化が妨げられる
学んだ内容が短期記憶にとどまり、長期記憶として保存されない。 - 集中力の低下
睡眠不足で脳の働きが低下し、新しい情報を効率的に学ぶことが難しくなる。
まとめ:寝ることで本当に忘れるのか?
結論として、「寝たら忘れる」という言葉は一部正しいと言えますが、それは睡眠が記憶を削除するだけではなく、整理・固定する役割を持つからです。
特に感情的なストレスや不要な情報が薄れることで、ポジティブな効果をもたらします。
最後に、睡眠はただの「休息」ではなく、記憶や感情の整理の場です。
「寝たら忘れる」という言葉の背景にある科学を知ることで、より良い睡眠生活を送るヒントにしてください!
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