
この記事を書いたのは
睡眠オタクな作業療法士 石垣貴康です。
医療現場で延3万人以上の睡眠と身体の悩みに向き合い、「動きと休息のすゝめ」をベースに、現在は「Totonoe-整-」を運営しています。
国家資格である作業療法士として、姿勢や動作の専門知識をもとに、科学的かつ実践的な睡眠改善を提案しています。専門職の育成や技術指導にも携わっています。
ブログ以外にも、書籍出版や講演、教育機関での授業など、睡眠のことをお伝えしています。
本ブログでは、医学的根拠と臨床経験に基づいた“リアルに使える睡眠情報”を、誰にでもわかりやすく、かつ深掘りしてお届けしています。
「7時間寝れば健康。」
「8時間寝るのが理想。」
そんな話を、一度は聞いたことがあるんじゃないでしょうか?
睡眠の講演をしていると、本当によくいただく質問があります。
「先生、私は何時間寝ればいいですか?」
子どもから大人まで、本当に多い質問です。
でも、この質問に対して私は、
「あなたは7時間です。」
「8時間寝てください。」
とは、すぐに答えません!
なぜなら、必要な睡眠時間は人によって違うからです。
7時間でスッキリ起きられる人もいます。
一方で、8時間寝ても疲れが残る人もいます。
さらに、同じ人でも、運動量が多い日、仕事が忙しい時期、ストレスが強い時期、体調を崩している時期では、必要な睡眠時間が変わることもあります。
つまり、大切なのは、
「平均で何時間寝ればいいか」ではありません。
大切なのは、自分に必要な睡眠時間を知ること。
この記事では、睡眠オタクな作業療法士の視点から、
・なぜ必要な睡眠時間を知る必要があるのか
・どうすれば自分に必要な睡眠時間がわかるのか
・なぜ人によって睡眠時間が違うのか
・必要な睡眠時間を知ったあと、どう生活に活かすのか
について、研究報告も踏まえながらお伝えします。

なぜ、自分に必要な睡眠時間を知る必要があるのか?
まず、ここが大事です。
睡眠時間を知る目的は、
「長く寝るため」
ではありません。
翌日の生活の質を守るためです。
睡眠時間が足りないと、ただ眠くなるだけではありません。
集中力、判断力、注意力、記憶、感情の安定にも影響します。
実際に、慢性的に睡眠時間を制限すると、本人が思っている以上に注意力や認知機能が低下することが報告されています。【E1】
ここが怖いところです。
人は睡眠不足に慣れた気がします。
「私は6時間でも大丈夫です。」
「昔から短くても平気です。」
こう言われる方もいます。
でも、身体や脳は本当に平気なのでしょうか?
私は、ここを疑うことが大切だと思っています。
睡眠時間を知るということは、単に何時間寝るかを決めることではありません。
自分が日中にきちんと動ける状態を知ることです。
朝起きられる。
仕事や勉強に集中できる。
身体が軽い。
イライラしにくい。
人と関われる。
趣味を楽しめる。
こうした生活を支えるために、自分に必要な睡眠時間を知る必要があります。

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まず目安として、成人は7時間以上が推奨されています
研究やガイドラインでは、成人は健康維持のために7時間以上の睡眠が推奨されています。【E2】
また、年齢別では、成人は7〜9時間、高齢者は7〜8時間、思春期は8〜10時間などが目安とされています。【E3】
ただし、ここで誤解してほしくないことがあります。
これは「全員が7時間で大丈夫」という意味ではありません。
あくまで目安です。
推奨睡眠時間は、答えではなく、出発点です。
まずは7〜9時間を目安にしながら、自分の身体がどのくらいの睡眠で回復するのかを確認していく。
この考え方が大切です。

どうしたら自分に必要な睡眠時間がわかるのか?
では、ここからが本題です。
自分に必要な睡眠時間を知るには、いきなり「私は何時間」と決めるのではなく、順番があります。
私は、次の5つの流れで見るのが良いと考えています。
① まず睡眠不足を返す
最初にやることは、睡眠時間を測ることではありません。
まずは、睡眠不足を減らすことです。
平日は6時間睡眠。
休日は10時間寝る。
こういう方は少なくありません。
この場合、休日の10時間が「本来必要な睡眠時間」とは限りません。
平日に足りなかった睡眠を返しているだけかもしれません。
いわゆる睡眠負債です。
睡眠の借金といわれるものです。
睡眠負債がたまっている状態では、本当に必要な睡眠時間が見えにくくなります。
まずは1週間ほど、できるだけ睡眠時間をしっかり確保してみてください。
正直なところ、この時点で難しいんですよね・・
② 自然に目が覚める時間を見る
睡眠不足が少し減ってきたら、次は目覚まし時計を使わずに寝てみます。
できれば、連休や予定の少ない日が良いです。
毎日できるだけ同じ時間に寝る。
そして、自然に目が覚めるまで眠る。
これを数日続けると、自分がどれくらい眠ると自然に起きやすいのかが見えてきます。
ただし、1日だけで判断しないでください。
飲酒、旅行、強い疲労、ストレスなどで睡眠時間は変わります。
最低でも3〜5日。
できれば1週間くらい見ると良いです。
③ 日中の状態を見る
ここが一番大事です。
睡眠時間を知るには、夜だけ見ても足りません。
日中を見てください。
・朝スッキリ起きられる
・午前中から頭が働く
・昼間に強い眠気がない
・集中力が続く
・身体が軽い
・休日に寝だめしない
これらがそろっているなら、その睡眠時間は自分に合っている可能性があります。
逆に、8時間寝ていても、朝から疲れている。
日中に眠い。
集中できない。
休日だけ長く寝てしまう。
この場合は、睡眠時間や睡眠の質を見直した方が良いかもしれません。
④ 2週間だけ記録する
睡眠は感覚だけではわかりにくいです。
なので、2週間だけ記録してみてください。
難しいことはしなくて大丈夫です。
・寝た時間
・起きた時間
・夜中に起きた回数
・朝のスッキリ感
・日中の眠気
・身体の疲れ
これだけで十分です。
記録してみると、
「7時間半寝た日は調子がいい」
「6時間の日は午後に眠くなる」
「夜中に起きた日は身体が重い」
というように、自分の傾向が見えてきます。
⑤ 15〜30分単位で調整する
自分の傾向が見えてきたら、睡眠時間を少しずつ調整します。
いきなり1時間変える必要はありません。
15分〜30分単位で十分です。
例えば、6時間半で眠気が残るなら、まずは7時間にしてみる。
7時間でまだ眠いなら、7時間半にしてみる。
反対に、長く寝すぎて朝が重い場合は、起床時間を一定にして、リズムを整えることも大切です。
自分に必要な睡眠時間は、頭で決めるものではありません。
記憶と体感から見つけていけるもいいですね。
▼睡眠リハビリテーション▼

人によって必要な睡眠時間が違う理由
ここも大切です。
必要な睡眠時間は、なぜ人によって違うのでしょうか?
主な理由は、次のようなものです。
年齢による違い
子どもは成長や発達のために多くの睡眠を必要とします。
思春期も、脳や身体が大きく変化する時期なので、成人より長い睡眠が必要です。
一方、高齢になると睡眠は浅くなりやすく、夜中に目が覚めやすくなることもあります。
年齢によって必要な睡眠時間が違うのは自然なことです。
遺伝による違い
ショートスリーパーという言葉があります。
短時間睡眠でも元気に過ごせる人のことです。
ただし、これは努力でなるものではありません。
自然な短時間睡眠には、DEC2/BHLHE41などの遺伝的要因が関係することが報告されています。【E4】
つまり、
「睡眠時間を削ればショートスリーパーになれる」
という考え方は危険です。
多くの場合、それはショートスリーパーではなく、睡眠不足を我慢している状態かもしれません。
活動量による違い
たくさん身体を使った日。
頭を使った日。
緊張が続いた日。
こういう日は、いつもより長く眠りたくなることがあります。
身体も脳も、使った分だけ回復が必要です。
だから、毎日まったく同じ睡眠時間である必要はありません。
自分の活動量に合わせて、必要な睡眠時間は変わります。
ストレスによる違い
ストレスが強い時は、眠っていても回復しにくいことがあります。
寝つきが悪くなる。
夜中に起きる。
朝早く目が覚める。
こうした変化が出ることもあります。
この場合、単に睡眠時間を伸ばすだけではなく、日中のストレスや生活リズムも見直す必要があります。
体内時計による違い
朝型の人もいれば、夜型の人もいます。
これは気合いだけの問題ではありません。
体内時計の個人差も関係します。
同じ7時間睡眠でも、自分のリズムに合っているかどうかで、朝のスッキリ感は変わります。
病気や睡眠障害による違い
十分な睡眠時間を確保しているのに疲れが取れない場合、睡眠時間だけの問題ではないことがあります。
例えば、
・いびきが大きい
・睡眠中に呼吸が止まる
・夜中に何度も起きる
・朝起きると頭痛がある
・日中に強い眠気がある
こうした場合は、睡眠時無呼吸症候群などが隠れている可能性もあります。
「長く寝ればいい」で終わらせず、必要に応じて医療機関へ相談してください。
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必要な睡眠時間がわかったら、どうしたらいいのか?
ここまで来ると、自分に必要な睡眠時間の目安が少し見えてきますかね?
では、それがわかったらどうしたらいいのか?
まずは、その睡眠時間を生活の中で確保できるようにします。
例えば、自分は7時間半眠ると調子が良いとわかったとします。
朝6時に起きる必要があるなら、22時半には眠れる準備をする必要があります。
ここで大切なのは、寝る時間だけではありません。
夕食の時間。
入浴の時間。
スマホを見る時間。
仕事を切り上げる時間。
朝起きる時間。
こうした生活全体を整える必要があります。
つまり、必要な睡眠時間を知ることは、夜だけの話ではありません。
生活の組み立て方を考えることにつながります。
ここに、睡眠リハビリテーションの視点があります。
私は睡眠を、夜だけの問題だとは考えていません。
睡眠は、翌日の生活を支える土台です。
仕事。
勉強。
家事。
運動。
人との関わり。
趣味。
こうした生活を取り戻すために、自分に必要な睡眠時間を知る。
これが大切だと私は考えてます。
まとめ
自分に必要な睡眠時間を知ることは、とても大切です。
なぜなら、睡眠時間は、翌日の集中力、判断力、身体の軽さ、生活のしやすさに関わるからです。
ただし、答えは一つではありません。
成人は7時間以上が目安とされています。
でも、それは全員にとっての正解ではありません。
必要な睡眠時間は、年齢、遺伝、活動量、ストレス、体内時計、病気、睡眠環境によって変わります。
だからこそ、
まず睡眠不足を返す。
自然に目が覚める時間を見る。
日中の状態を見る。
2週間記録する。
15〜30分単位で調整する。
この流れで、自分に必要な睡眠時間を見つけていきましょう!
睡眠時間は、長ければ良いわけではありません。
短ければ悪いわけでもありません。
大切なのは、
あなたが翌日、自分らしく生活できるかどうか。
必要な睡眠時間を知ることは、その第一歩です。
睡眠時間を追いかけるのではなく、自分の生活を支える睡眠を見つけていきましょう。
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Q: 睡眠不足はどのくらいで健康に影響を与えますか?
睡眠不足は短期間でも健康に悪影響を与える可能性があります。1〜2日程度の睡眠不足でも集中力や判断力が低下し、気分の不安定さが増します。
睡眠不足の影響時間が1週間以上続くと、免疫力の低下やストレスホルモン(コルチゾール)の増加、記憶力の低下などの症状が現れます。
さらに、長期的な睡眠不足は、心血管疾患、糖尿病、肥満などのリスクを高めるとされています。6時間未満の睡眠が続くと、認知機能の低下が48時間徹夜と同等になることも研究で示されています。
- 定期的に7〜9時間の睡眠を確保することが、健康的な生活を送るための基本です。
Q: 自分に必要な睡眠時間を見つける際の重要な要素は何ですか?
自分に必要な睡眠時間を見つけるには、以下の要素が重要です。
- 個人差: 年齢、遺伝的要素、生活リズムによって最適な睡眠時間は異なります。成人の平均的な睡眠時間は7〜9時間ですが、これに当てはまらない人もいます。自分の体調や日中のパフォーマンスを見極めることが大切です。
- 睡眠の質: 睡眠時間だけでなく、深い睡眠(ノンレム睡眠)やレム睡眠の割合も重要です。これにより、効率的な睡眠がとれ、短時間の睡眠でも回復効果が高まります。
- 生活リズム: 毎日同じ時間に寝起きすることで、体内時計を整え、より質の高い睡眠を確保できます。一貫したリズムを持つことで、自然に目覚める時間も一定になり、健康的な睡眠パターンを維持しやすくなります。
Q: ショートスリーパーになれますか?
一般的に、ショートスリーパーは遺伝的な要因によって決まるため、誰もが意図的にショートスリーパーになるわけではありません。
ショートスリーパーの人々は、通常、6時間未満の睡眠でも完全に回復できる特異な体質を持っていますが、これは非常に稀なケースです。
研究によると、全人口のわずか1〜3%がショートスリーパーであるとされています。
- 一般の人が意識的にショートスリーパーになることは難しく、むしろ無理に睡眠時間を短縮することで、睡眠不足の影響を受けやすくなります。パフォーマンスの低下や健康リスクを避けるためにも、自分に合った適切な睡眠時間を確保することが大切です。
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参考文献・参考情報
- Van Dongen HPA, Maislin G, Mullington JM, Dinges DF.
The cumulative cost of additional wakefulness: dose-response effects on neurobehavioral functions and sleep physiology from chronic sleep restriction and total sleep deprivation. Sleep. 2003.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12683469/ - Watson NF, Badr MS, Belenky G, et al.
Recommended Amount of Sleep for a Healthy Adult: A Joint Consensus Statement of the American Academy of Sleep Medicine and Sleep Research Society. Sleep. 2015.
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4442216/ - Hirshkowitz M, Whiton K, Albert SM, et al.
National Sleep Foundation’s updated sleep duration recommendations: final report. Sleep Health. 2015.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29073412/ - Pellegrino R, Kavakli IH, Goel N, et al.
A Novel BHLHE41 Variant is Associated with Short Sleep and Resistance to Sleep Deprivation in Humans. Sleep. 2014.
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4096202/ - He Y, Jones CR, Fujiki N, et al.
The transcriptional repressor DEC2 regulates sleep length in mammals. Science. 2009.
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC2884988/ - 厚生労働省.
健康づくりのための睡眠ガイド2023.
https://www.mhlw.go.jp/content/001305530.pdf - 厚生労働省 e-ヘルスネット.
睡眠と健康.
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-01-001.html
「これ、自分だけじゃないかも」と感じたら、同じように悩んでいる人にもシェアしてあげてください。
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睡眠の質を高めるために知っておきたい公的エビデンス
睡眠の質は「なんとなく良い・悪い」で判断するものではなく、科学的にも明確な指標や推奨が存在します。
例えば、厚生労働省では生活習慣や環境が睡眠に与える影響について詳しく解説されており、日中の活動量や光の使い方、就寝前の行動が睡眠の質を左右することが示されています( 厚生労働省 睡眠対策ページ)。
また、最新の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」では、適切な睡眠時間や生活リズムの整え方が具体的に示されており、特にスマートフォンの使用や夜間の光環境が睡眠に大きな影響を与えることが明記されています( 睡眠ガイド2023(厚生労働省))。
さらに、国立精神・神経医療研究センターのガイドラインでは、不眠や日中の眠気といった睡眠障害のメカニズムや対処法についても詳しく解説されており、医学的な視点からも睡眠の重要性が示されています( 睡眠障害ガイドライン(NCNP))。
国際的にも、WHO(世界保健機関)は睡眠を健康の重要な要素と位置づけ、身体活動や生活習慣と並ぶ「健康の柱」として推奨しています( WHO 睡眠に関するガイドライン)。
このように、睡眠は個人の感覚だけでなく、国内外の研究や公的機関によってその重要性が裏付けられています。
だからこそ「なんとなく」ではなく、根拠に基づいた習慣づくりが重要になります。



