
この記事を書いたのは
睡眠オタクな作業療法士 石垣貴康です。
医療現場で延3万人以上の睡眠と身体の悩みに向き合い、「動きと休息のすゝめ」をベースに、現在は「Totonoe-整-」を運営しています。
国家資格である作業療法士として、姿勢や動作の専門知識をもとに、科学的かつ実践的な睡眠改善を提案しています。専門職の育成や技術指導にも携わっています。
ブログ以外にも、書籍出版や講演、教育機関での授業など、睡眠のことをお伝えしています。
本ブログでは、医学的根拠と臨床経験に基づいた“リアルに使える睡眠情報”を、誰にでもわかりやすく、かつ深掘りしてお届けしています。
「睡眠は大切です。」
これは、もう多くの人が知っています。
でも、本当に睡眠が大切なのは、ただ疲れを取るためだけでいいんですか?
私は、そうは考えていません。
睡眠は、ただ身体を休ませる時間ではありません。
翌日の自分をつくる時間です!
朝起きた瞬間の姿勢。
集中力。
判断力。
身体の軽さ。
呼吸のしやすさ。
仕事の生産性。
スポーツのパフォーマンス。
人とのコミュニケーション。
これらはすべて、前日の睡眠の影響を受けています。
つまり、睡眠は「夜の出来事」ではなく、日中のパフォーマンスを決める時間なんです。
私は、この考え方を「パフォーマンス睡眠」と呼んでいます。

パフォーマンスとは、スポーツだけの話ではない
「パフォーマンス」と聞くと、多くの人はスポーツ選手を思い浮かべるかもしれません。
もちろん、それもパフォーマンスです。
でも、それだけでいいんですか?
私は、パフォーマンスとは「その人が持っている力を、必要な場面で発揮できること」だと考えています。
たとえば、
朝スッキリ起きられる。
仕事に集中できる。
階段を軽やかに上れる。
子どもを笑顔で抱っこできる。
会議で冷静に判断できる。
人と気持ちよく会話できる。
趣味を思いきり楽しめる。
これも、すべてパフォーマンス!
つまり、パフォーマンスはアスリートだけのものではなくって、「生活そのもの」です。
ここが大切です!
睡眠が乱れると、最初に落ちるのは筋力だけではありません。
注意力。
判断力。
感情のコントロール。
姿勢制御。
身体のキレ。
人に対する余裕。
こういった「人としての機能」が、少しずつ落ちていきます。
だから私は、睡眠を単なる休息ではなく、生活機能を高めるための準備だと考えています。

身体は筋肉だけで動いているわけではない
作業療法士として身体を見ていると、強く感じることがあります。
それは、身体は筋肉だけで動いているわけではないということです。
筋力があれば動ける。
柔軟性があれば動ける。
もちろん、それも大切です。
でも、それだけで本当に身体はうまく使えるんでしょうか?
人の身体は、
視覚。
前庭感覚。
体性感覚。
呼吸。
姿勢制御。
重力への適応。など。
これらを脳が統合することで、初めてスムーズに動けます。
たとえば、寝不足の日。
なんとなく身体が重い。
反応が遅い。
つまずきやすい。
首や肩に力が入りやすい。
集中できない。
こういうことってありませんか?
これは、急に筋力が落ちたわけではありません。
神経系がうまく働いていない可能性があります。
身体を動かすというのは、筋肉の問題だけではなく、脳と神経の問題でもあるんです。
だから、パフォーマンスを考えるなら、筋肉だけではなく、神経系まで見ないといけません。
そして、その神経系を整えるうえで、睡眠はめちゃくちゃ重要です。
▼睡眠リハビリテーション▼

睡眠中、脳は休んでいない
眠っているとき、身体は静かに見えます。
でも、脳は何もしていないわけではありません。
むしろ、めちゃくちゃ働いています。
睡眠中には、
記憶の整理。
運動学習の定着。
感情の整理。
不要な情報の整理。
シナプスの再編成。
脳内老廃物の除去。
こういったことが行われています。
つまり、睡眠とは「何もしない時間」ではありません。
脳と身体を再構築する時間です。
日中に学んだこと。
練習したこと。
経験したこと。
感じたこと。
それらを翌日の能力に変えていく。
その大切な時間が睡眠なんです。
ここを見落としてはいけません。
練習を頑張る。
仕事を頑張る。
勉強を頑張る。
それはもちろん大切です。
でも、その頑張りを定着させる睡眠が崩れていたらどうでしょうか?
せっかく積み上げたものが、身体に残りにくくなってしまうかもしれません。
努力を結果に変えるためにも、睡眠は必要です。

運動学習と睡眠はつながっている
ここは、スポーツやリハビリの現場でもかなり大切です。
人は、動きを覚えるときに、その場だけで完結しているわけではありません。
練習しているときに学ぶ。
そして、眠っている間に整理される。
この流れがあります。
たとえば、新しいフォームを覚える。
楽器を練習する。
リハビリで新しい動作を練習する。
スポーツで技術を身につける。
これらは、単に反復回数を増やせばいいというものではありません!!
リハビリで多いんですよ。ただただ反復、、
反復ももちろん必要ですが、脳がその動きをどう学習し、どう定着させるかが重要です。
そして、その定着に睡眠が関わっています。
だから私は、睡眠を「回復」だけでなく、「学習」の時間としても見ています。
もちろん能動的かどうか、意欲なども大事!
ここが、パフォーマンス睡眠の大切な視点です。
睡眠は、疲れを取るだけではない。
昨日の経験を、明日の能力に変える時間なんです!

パフォーマンスを支えるのは呼吸
私は睡眠を考えるとき、必ず呼吸を見ます。
なぜなら、呼吸はただ酸素を取り込むだけのものではないからです。
呼吸は、
姿勢。
胸郭。
横隔膜。
自律神経。
心拍。
睡眠。
これらすべてとつながっています。
呼吸が浅くなると、首や肩に力が入りやすくなります。
胸郭が動きにくくなります。
交感神経が優位になりやすくなります。
身体がリラックスしにくくなります。
そして、眠りにも影響します。
逆に、胸郭がしなやかに動き、横隔膜が働きやすくなると、呼吸が深くなりやすい。
呼吸が整うと、自律神経も整いやすい。
自律神経が整うと、眠りに入りやすくなる。
この流れがあります。
だから私は、呼吸を「睡眠と身体をつなぐ架け橋」でもあると考えています。
ここも大切です。
呼吸を整えるというのは、ただ深呼吸をすることではありません。
胸郭が動くか。
横隔膜が働くか。
首や肩で頑張りすぎていないか。
肋骨が固まりすぎていないか。
吐くことができているか。
こういう身体の状態まで見る必要があります。
睡眠を整えるなら、呼吸を見ないわけにはいかないですね。
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姿勢と睡眠もつながっている
睡眠と姿勢。
一見、別々の話に聞こえるかもしれません。
日中の姿勢が悪ければ、呼吸が浅くなりやすい。
呼吸が浅くなれば、自律神経が乱れやすい。
自律神経が乱れれば、眠りに入りにくくなる。
そして、眠りが悪くなれば、翌日の姿勢制御も乱れやすくなる。
つまり、姿勢と睡眠は一方通行ではありません。
お互いに影響し合っています。
特に現代人は、スマホやパソコンで胸郭が固まりやすい。
目も疲れやすい。
首肩も緊張しやすい。
この状態で「さあ寝ましょう」と言われても、身体はすぐに休息モードへ切り替われないことがあります。
だから睡眠を考えるときは、夜だけを見るのではなく、日中の身体の使い方まで見る必要があります。
睡眠は夜だけの問題ではないんです。

寝具もパフォーマンスを左右する
ここは、私が特に大切にしている視点です。
寝具は、ただ寝心地を良くするためのものではありません。
私は、寝具もパフォーマンスを支える環境因子だと考えています。
なぜなら、立っている身体と、眠っている身体では条件がまったく違うからです。
立っているときは、足裏で床を感じ、重力に対して身体を支えています。
一方で、寝ているときは、身体全体が寝具に支えられています。重力がよりかかりアライメントは崩れます。
支持面が違う。
重力のかかり方が違う。
感覚入力が違う。
呼吸のしやすさも変わる。
寝返りのしやすさも変わる。
だから、立位姿勢だけを見て枕やマットレスを決めることには限界があります。
本当に見るべきなのは、寝ているときの身体です。
仰向けでどう支えられているか。
横向きで肩や骨盤に負担がかかっていないか。
寝返りがしやすいか。
呼吸がしやすいか。
首だけでなく、胸郭や骨盤まで含めて整っているか。
ここまで見ないと、本当の意味で「合う寝具」とは言えないと私は考えています。
寝具は、身体を休ませる道具であると同時に、翌日の身体をつくる環境でもあります。

パフォーマンス睡眠の5つの柱
私は、パフォーマンス睡眠を5つの柱で考えています。
① 神経
まずは私が大好き神経です。
脳が回復し、情報を整理し、学習できる状態をつくること。
これがパフォーマンスの土台になります。
集中力、判断力、反応速度、運動学習。
これらは神経系の働きと深く関係しています。
だから、睡眠不足で神経系が疲れている状態では、本来の力を発揮しにくくなります。
② 呼吸
次に呼吸です。
呼吸は、身体のリズムをつくります。
胸郭、横隔膜、自律神経、心拍、姿勢。
すべてと関係します。
睡眠を考えるなら、呼吸を整えることは外せません。
睡眠中の呼吸もめちゃくちゃ大事です。
③ 身体
3つ目は身体です。
姿勢制御。
重心制御。
寝返り。
胸郭の可動性。
首肩の緊張。
身体が整っていないと、眠る姿勢も崩れやすくなります。
そして、眠る姿勢が崩れると、翌日の身体にも影響します。
④ 環境
4つ目は環境です。
寝具。
温度。
湿度。
光。
音。
空気。
これらはすべて睡眠に影響します。
どれだけ身体を整えても、寝室環境が悪ければ、睡眠の質は下がりやすい。
だから環境も整える必要があります。
⑤ 生活
最後は生活です。
朝の光。
日中の活動量。
運動。
食事。
ストレス。
体内時計。
これらが睡眠を支えています。
睡眠は夜だけで完結しません。
朝から始まっています。
もっと言えば、日中の過ごし方が夜の眠りをつくっています。
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睡眠時間だけを追いかけても十分ではない
「何時間寝ればいいですか?」
「先生は何時間寝てるんですか?」
これは本当によく聞かれます。
もちろん、睡眠時間は大切です。
短すぎる睡眠が続けば、心身に負担がかかります。
でも、睡眠時間だけを見ていて本当にいいんですか?
私は、それだけでは不十分だと考えています。
同じ7時間寝ても、スッキリ起きられる人もいます。
逆に、7時間寝ても疲れが残る人もいます。
この違いは、睡眠時間だけでは説明できません。
呼吸。
姿勢。
寝具。
生活リズム。
ストレス。
活動量。
体内時計。
医学的な問題。
こうした要素が関係しています。
だから大切なのは、睡眠時間だけではなく、
身体がきちんと回復できているか。
ここなんです。
これは他の記事でも何度も伝えていますが、私は睡眠を見るときに「何時間寝たか」だけではなく、「その睡眠で日中の生活機能が高まっているか」を見ます。
朝起きて動けるか。
集中できるか。
呼吸しやすいか。
身体が軽いか。
人に優しくできる余裕があるか。
ここまで含めて、睡眠の価値だと思っています。

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パフォーマンス睡眠は、睡眠リハビリテーションにつながる
私は、睡眠を改善すること自体を目的にはしていません。
ここは大事です。
目的は、よく眠ることだけではありません。
目的は、日中の生活機能を高めることです。
仕事ができる。
運動できる。
家事ができる。
育児ができる。
人と関われる。
自分の人生を楽しめる。
そのために睡眠があります。
だから私は、睡眠を「生活機能を再構築するリハビリテーション」として考えています。
これが、睡眠リハビリテーションです。
睡眠リハビリテーションは、ただ睡眠時間を増やすことではないです。
身体。
呼吸。
神経。
生活。
環境。
これらを自身に合わせて整えながら、眠れる身体と生活をつくり直すこと。
有名人がやってるとか、今流行ってるとか、そんなものではない!!
「自分に合わせて最適化する」その先にあるのがパフォーマンス睡眠です。
よく眠る。
よく動く。
よく考える。
よく働く。
よく遊ぶ。
よく生きる。
この流れをつくることが、本当に大切だと考えています。
▼睡眠リハビリテーション▼

今日からできるパフォーマンス睡眠
では、何から始めればいいのか?
難しいことをいきなりやる必要はないんです。
まずは、朝に光を浴びる。
日中に少し身体を動かす。
夜はスマホや強い光を少し減らす。
寝る前に呼吸をゆっくり整える。
枕やマットレスが身体に合っているか見直す。
寝室の温度や湿度を整える。
これだけでも、睡眠は変わる可能性があります。
特に私が大切にしているのは、寝る前に頑張りすぎないことです。
寝る前に気合いを入れてストレッチをする。
頑張って深呼吸をする。
無理にリラックスしようとする。
これでは、逆に身体が緊張することもあります。
大切なのは、身体が自然に休息モードへ入れる準備をすることです。
呼吸を静かにする。
部屋を少し暗くする。
スマホから離れる。
身体の力が抜ける環境をつくる。
それだけでいいんです。

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まとめ
睡眠は、疲れを取るだけの時間ではありません。
翌日の自分をつくる時間です。
身体を動かす力。
集中する力。
判断する力。
感情を整える力。
人と関わる力。
人生を楽しむ力。
これらを支えているのが睡眠です。
だから私は、睡眠を「休息」ではなく「パフォーマンスをつくる時間」と考えています。
パフォーマンス睡眠とは、アスリートだけのものではありません。
仕事をする人。
子育てをする人。
学ぶ人。
挑戦する人。
毎日を少しでも良く生きたい人。
すべての人に必要な考え方です。
睡眠は、人生を止める時間ではありません。
人生のパフォーマンスを高めるために、身体を再構築する時間です!
これが、私の考えるパフォーマンス睡眠です!!
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参考文献
- Rasch B, Born J. About Sleep’s Role in Memory. Physiological Reviews. 2013;93(2):681-766.
睡眠中に記憶の整理や固定が行われる根拠として参考にしています。 - Walker MP, Stickgold R. Sleep-dependent learning and memory consolidation. Neuron. 2004;44(1):121-133.
睡眠が学習や運動記憶の定着に関係する根拠として参考にしています。 - Xie L, Kang H, Xu Q, et al. Sleep Drives Metabolite Clearance from the Adult Brain. Science. 2013;342(6156):373-377.
睡眠中に脳内老廃物の排出が促進されるグリンパティックシステムの根拠として参考にしています。 - Laborde S, Mosley E, Thayer JF. Heart Rate Variability and Cardiac Vagal Tone in Psychophysiological Research. Frontiers in Psychology. 2017;8:213.
呼吸、心拍変動、迷走神経、自律神経の関係を説明する補助文献として参考にしています。 - Mah CD, Mah KE, Kezirian EJ, Dement WC. The Effects of Sleep Extension on the Athletic Performance of Collegiate Basketball Players. Sleep. 2011;34(7):943-950.
睡眠延長がスポーツパフォーマンス、反応時間、疲労感、気分に関係する研究として参考にしています。
「これ、自分だけじゃないかも」と感じたら、同じように悩んでいる人にもシェアしてあげてください。
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睡眠の質を高めるために知っておきたい公的エビデンス
睡眠の質は「なんとなく良い・悪い」で判断するものではなく、科学的にも明確な指標や推奨が存在します。
例えば、厚生労働省では生活習慣や環境が睡眠に与える影響について詳しく解説されており、日中の活動量や光の使い方、就寝前の行動が睡眠の質を左右することが示されています( 厚生労働省 睡眠対策ページ)。
また、最新の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」では、適切な睡眠時間や生活リズムの整え方が具体的に示されており、特にスマートフォンの使用や夜間の光環境が睡眠に大きな影響を与えることが明記されています( 睡眠ガイド2023(厚生労働省))。
さらに、国立精神・神経医療研究センターのガイドラインでは、不眠や日中の眠気といった睡眠障害のメカニズムや対処法についても詳しく解説されており、医学的な視点からも睡眠の重要性が示されています( 睡眠障害ガイドライン(NCNP))。
国際的にも、WHO(世界保健機関)は睡眠を健康の重要な要素と位置づけ、身体活動や生活習慣と並ぶ「健康の柱」として推奨しています( WHO 睡眠に関するガイドライン)。
このように、睡眠は個人の感覚だけでなく、国内外の研究や公的機関によってその重要性が裏付けられています。
だからこそ「なんとなく」ではなく、根拠に基づいた習慣づくりが重要になります。



