眠れない夜を抱いて。睡眠の専門家が考える「眠れない夜」の意味

この記事を書いたのは

睡眠オタクな作業療法士 石垣貴康です。

医療現場で延3万人以上の睡眠と身体の悩みに向き合い、「動きと休息のすゝめ」をベースに、現在は「Totonoe-整-」を運営しています。

国家資格である作業療法士として、姿勢や動作の専門知識をもとに、科学的かつ実践的な睡眠改善を提案しています。専門職の育成や技術指導にも携わっています。

ブログ以外にも、書籍出版や講演、教育機関での授業など、睡眠のことをお伝えしています。

本ブログでは、医学的根拠と臨床経験に基づいた“リアルに使える睡眠情報”を、誰にでもわかりやすく、かつ深掘りしてお届けしています。

睡眠の専門家が、こんなことを書くと怒られるかもしれません。

でも私は、人生には「眠れない夜」も必要なんじゃないかと思っています。

もちろん、不眠を勧めたいわけではありません。

眠れないことが続くなら、それは身体や心からのサインです。必要であれば、医療につながることも大切です。

でも今日は、そんな医学の話ではありません。

今日は、人としての話をしたいと思います。

好きな人を思って、眠れなかった夜

青春時代。

好きな人のことばかり考えて、眠れなかった夜がありました。

「なんで返信が来ないんだろう」

「もしかして、嫌われたのかな」

「明日、学校で会ったら何を話そう」

そんなことばかり考えて、時計を見るたびに時間だけが過ぎていく。

(早く寝なきゃ)

そう思えば思うほど、眠れないんですよね。

失恋した夜もそうでした。

胸が苦しくて、何をしていても、その人のことばかり考えてしまう。

朝になっても、何も解決していない。

それでも学校へ行って、いつもどおりに笑っていました。

失恋って、本当につらいですよね。

でも今思えば、あの眠れない夜も青春だったんだと思います。

大人になると、眠れない理由が変わっていく

大人になると、眠れない理由は少し変わります。

会社を経営し、仕事が思うようにいかなかった夜。

「来月、大丈夫かな」

「このままで、本当に続けられるのかな」

「もっと自分にできることがあるんじゃないか」

そんなことを考えていると、眠ろうとしても頭だけが働き続けます。

(なんとかしなきゃ)

(でも、何をすればいいんだろう)

静かな部屋ほど、不安は大きく聞こえるものです。

布団の中で考えたところで、売上が増えるわけでも、問題が解決するわけでもありません。

それでも、考えることを止められなかった。

責任が増えるほど、人は簡単には眠れなくなることがあります。

生まれたばかりの子どもと過ごした夜

そして、父親になってから。

これは今でも忘れられません。

私には双子の子どもがいます。

二人が生まれたあと、一人は先に退院しましたが、もう一人はまだ病院に入院していました。

妻もその子に付き添っていたため、家にいたのは私と、生まれて間もない赤ちゃんだけ。

まだ生まれて一週間ほどしか経っていない小さな子どもに、三時間おきに授乳をしていました。

夜中に泣けば、抱っこをする。

ミルクを作って、おむつを替えて、もう一度寝かしつける。

ようやく眠ったと思ったら、また次の授乳の時間がやってくる。

時計を見るたびに、

「もう朝か」

「いや、まだ二時間しか経っていないのか」

そんな夜を過ごしました。

正直、きつかったです。

眠いという言葉だけでは、足りませんでした。

不安もありました。

(自分一人で、本当に大丈夫なのかな)

(ちゃんとミルクを飲んでくれているのかな)

小さな命を預かる責任の重さに、怖くなることもありました。

でも、不思議なんです。

今振り返ると、その時間は、私の人生で最も愛おしい時間の一つでもあります。

眠れなくて、つらくて、不安だった。

それでも、あの夜にしか見ることのできなかった子どもの表情がありました。

あの夜にしか感じられなかった温かさがありました。

眠れない夜があったから、眠れることを知った

睡眠の専門家として、私はいつも、睡眠の大切さを伝えています。

眠ることは、身体と脳を回復させるために欠かせません。

睡眠不足が続けば、集中力や感情、身体機能にも影響します。

だから、眠れない状態を我慢し続けてほしいとは思いません。

それでも私は、こうも思うんです。

眠れない夜があったからこそ、眠れることのありがたさを知った。

朝まで何度も起きた経験があるから、一晩ぐっすり眠れることが、どれほど幸せなのか分かる。

不安で眠れなかった夜があるから、安心して目を閉じられる夜の尊さが分かる。

当たり前に眠れているときには、気づけないこともあります。

何かを大切にしているから、眠れない

人は、感情が動く生き物です。

恋をすれば、眠れない。

失恋をすれば、眠れない。

夢を追えば、眠れない。

子どもを育てれば、眠れない。

仕事やお金の不安を抱えれば、眠れない。

誰かを大切に思うから、眠れない。

そう考えると、眠れない夜というのは、何かを本気で大切にしている証拠なのかもしれません。

何も感じていなければ、心は動きません。

失いたくないものがある。

守りたい人がいる。

諦めたくない夢がある。

だから、眠れなくなる。

もちろん、眠れない夜を美化したいわけではありません。

「眠らなくても大丈夫」

そんなことを言いたいわけでもありません。

ただ、人生には、どうしても眠れない夜があります。

そんな夜まで、自分の弱さだと思わなくてもいいんじゃないでしょうか。

「今日は、いろいろ考えてしまう夜なんだな」

「それだけ、自分にとって大切なことなんだな」

そう受け止められるだけで、少しだけ心が軽くなることがあります。

眠れない夜も、自分の人生の一部になる

ZARDの『眠れない夜を抱いて』という曲があります。

若い頃は、その言葉の意味を何となく受け止めていました。

でも、年齢を重ねたいま、思います。

人生には、本当に眠れない夜がある。

その夜を越えてきたからこそ、今の自分がいる。

あの夜がなければ、気づけなかったこと。

あの夜がなければ、出会えなかった自分。

あの夜がなければ、分からなかった誰かの痛み。

眠れなかった経験があるから、今、眠れない人のつらさを想像できます。

子育てで眠れなかった経験があるから、夜泣きに悩む親御さんの言葉を、簡単には片づけたくないと思えます。

仕事やお金が不安で眠れなかった経験があるから、「寝れば大丈夫ですよ」とは簡単に言えません。

睡眠の知識だけでは届かない夜がある。

私は、そう思っています。

今夜、眠れないあなたへ

睡眠は、人生を豊かにするためにあります。

だから私は、これからも良い睡眠を伝え続けます。

眠れない状態が長く続くのであれば、原因を整理し、必要な支援や医療につながることも大切です。

でも、それと同じくらい、眠れなかった夜を生き抜いてきたあなたの人生も大切にしたいと思っています。

今日、ぐっすり眠れる人は、その幸せを味わってください。

そして、もし今夜、眠れない人がいたら。

焦らなくても大丈夫です。

無理に前向きにならなくてもいい。

眠れない自分を責めなくてもいい。

その夜もきっと、あなたの人生の一部になります。

いつか振り返ったときに、

「あの夜があったから、今の自分がいる」

そう思える日が来るかもしれません。

眠れない夜を、無理に忘れなくてもいい。

抱えたままでも、人は少しずつ朝へ向かっていける。

私は、そう思っています。

この記事を書いたのは

睡眠オタクな作業療法士 石垣貴康です。

睡眠を、ただ「眠るための方法」としてではなく、毎日の生活や心身の状態、そして人生を楽しむための土台として伝えたい。そんな想いで、この記事を書いています。

作業療法士としての臨床経験と、睡眠に関する研究や知識をもとに、難しい内容もできる限り生活に落とし込んでお届けします。

睡眠を知ることで、自分の身体や暮らしを少し大切にしたくなる。そんなきっかけになれば嬉しいです。

この記事が、身近な方の睡眠や生活を見つめ直すきっかけになりそうだと感じたら、ぜひシェアしてください。

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睡眠の質を高めるために知っておきたい公的エビデンス

睡眠の質は「なんとなく良い・悪い」で判断するものではなく、科学的にも明確な指標や推奨が存在します。

例えば、厚生労働省では生活習慣や環境が睡眠に与える影響について詳しく解説されており、日中の活動量や光の使い方、就寝前の行動が睡眠の質を左右することが示されています( 厚生労働省 睡眠対策ページ)。

また、最新の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」では、適切な睡眠時間や生活リズムの整え方が具体的に示されており、特にスマートフォンの使用や夜間の光環境が睡眠に大きな影響を与えることが明記されています( 睡眠ガイド2023(厚生労働省))。

さらに、国立精神・神経医療研究センターのガイドラインでは、不眠や日中の眠気といった睡眠障害のメカニズムや対処法についても詳しく解説されており、医学的な視点からも睡眠の重要性が示されています( 睡眠障害ガイドライン(NCNP))。

国際的にも、WHO(世界保健機関)は睡眠を健康の重要な要素と位置づけ、身体活動や生活習慣と並ぶ「健康の柱」として推奨しています( WHO 睡眠に関するガイドライン)。

このように、睡眠は個人の感覚だけでなく、国内外の研究や公的機関によってその重要性が裏付けられています。

だからこそ「なんとなく」ではなく、根拠に基づいた習慣づくりが重要になります。

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