「嫌なことがあって眠れない」「頭の中でいつの間にか嫌なこと考えてて寝付けない」
お金の悩みや人間関係など、そのようなことで「なかなか眠れない経験」はありませんか?
日々の生活の中で、仕事や人間関係のトラブル、家庭の問題など、私たちはさまざまなストレスにさらされています。
そして、そのストレスが夜になるとふと蘇り、眠れなくなってしまうことは多くの人が抱える悩みです。
しかし、嫌な出来事があった日は脳や自律神経が過剰に働き、眠れない原因となります。放っておくと、睡眠不足がさらなるストレスや体調不良を引き起こし、悪循環に陥ってしまいます。
本記事では、「嫌なことがあったときに眠れない理由」を科学的な観点から徹底解説します。
さらに、専門家が推奨するぐっすり眠るための具体的な対策法を紹介します!
今日から実践できる方法で、心地よい眠りと健康的な毎日を取り戻しましょう。

目次
嫌なことで眠れないのはなぜ?
ストレスが脳を過剰に刺激する
嫌なことがあった日の夜に眠れない主な原因は、扁桃体(amygdala)の過剰な活動にあります。
扁桃体は恐怖や不安といった感情の処理を担う脳の部位で、ストレスがかかると視床下部-下垂体-副腎(HPA)軸が活性化します。
この結果、コルチゾールというストレスホルモンが分泌され、心拍数や血圧が上昇し、体が覚醒状態になります(McEwen, 2006)。
HPA軸が活性化すると、副腎皮質からストレスホルモンであるコルチゾールが分泌されます(McEwen, 2006)。
コルチゾールは本来、ストレスへの対処に必要なホルモンですが、過剰に分泌されると、心拍数や血圧の上昇、血糖値の変動を引き起こし、身体が緊張状態に陥ります。
この状態では体が「戦うか逃げるか(fight-or-flight)」の準備をしており、リラックスして眠ることができません。
さらに、ストレス下では脳の前頭前皮質(prefrontal cortex)の働きが低下し、理性的な判断が難しくなります。
これにより、嫌な出来事が頭から離れず、同じことを何度も反芻(はんすう)する反芻思考が起こります(Nolen-Hoeksema, 2000)。
この思考のループが、入眠を妨げる大きな要因となります。

自律神経の乱れ
ストレスがかかると、自律神経系(autonomic nervous system)のバランスが崩れます。自律神経は、交感神経と副交感神経から構成されており、交感神経は体を覚醒状態にし、副交感神経はリラックス状態に導きます。
嫌なことがあったときは、交感神経が過剰に優位になり、心拍数の上昇、呼吸の浅さ、筋肉の緊張など、体が覚醒状態に陥ります(Kim & Dimsdale, 2007)。この状態が続くと、体内時計(概日リズム)にも影響が及び、メラトニン(睡眠ホルモン)の分泌が妨げられます(Buckley & Schatzberg, 2005)。
また、ストレスによる交感神経の過剰な働きは、腸脳相関(gut-brain axis)にも影響します。腸内環境が乱れることで、セロトニン(感情の安定や睡眠に関与する神経伝達物質)の生成が低下し、さらに不安やイライラが増幅されます(Mayer et al., 2015)。

神経伝達物質のアンバランス
ストレスや不安は、神経伝達物質のバランスにも影響を与えます。特に、睡眠と関係の深いセロトニンとメラトニンの分泌が乱れることがわかっています。
- セロトニン(Serotonin):幸福感や安心感をもたらす神経伝達物質。セロトニンが不足すると、心が不安定になり、睡眠の質が低下します。セロトニンは夜になるとメラトニンへ変換されるため、不足すると入眠障害の原因になります(Crockett et al., 2012)。
- メラトニン(Melatonin):睡眠を促すホルモン。ストレスが多いと、光に敏感になり、メラトニンの分泌が抑制されます(Brainard et al., 2001)。
嫌なことがあった日の睡眠不足がもたらす悪影響
日中の集中力・判断力の低下
睡眠不足は、前頭前皮質(prefrontal cortex)の働きを低下させ、集中力や意思決定能力が鈍くなります(Killgore, 2010)。
これにより、仕事や学業の効率が悪化し、さらなるストレスの原因となります。
免疫力の低下
睡眠は免疫機能をサポートする重要な役割を担います。
特に、睡眠中にナチュラルキラー細胞(NK細胞)の活性が高まり、ウイルスや細菌の撃退に関与します(Irwin et al., 1996)。
睡眠不足はこの免疫機能を著しく低下させ、感染症リスクを高めます。
感情コントロールの低下
扁桃体の過剰な興奮が続くと、感情の制御が困難になり、怒りや不安といったネガティブな感情が増幅します(Yoo et al., 2007)。
これは人間関係の悪化やさらなるストレスの蓄積につながります。

嫌なことがあった日でもぐっすり眠るための具体的対策
① 寝る前にリラックス習慣をつくる
深呼吸やストレッチは、副交感神経を優位にしてリラックス状態を作り出します。
特に4-7-8呼吸法は、ストレス軽減と睡眠の質向上に有効とされています(Jerath et al., 2015)。

また、40℃程度のぬるめのお風呂に15分ほど浸かることで、深部体温が下がりやすくなり、入眠がスムーズになります(Haghayegh et al., 2019)。
ただ寝る直前に体温を上げ過ぎるのは眠れない原因になるので、就寝2時間前に終えておくことがオススメです。
② 思考を整理する「ジャーナリング」
ジャーナリング(感情や出来事を書き出すこと)は、ストレスや不安の軽減に有効です(Pennebaker & Chung, 2011)。
私はジャーナリングをよくするので、これはオススメです。なぜか落ち着きます。
ペンでなくても、スマホで入力したり、とりあえずアウトプットするといいです!
特に、感情の解放や問題の客観視が促され、心が落ち着きやすくなります。
③ 寝室環境を整える
- 室温は16~20℃、湿度は50~60%が理想的(Okamoto-Mizuno & Mizuno, 2012)。
- 遮光カーテンで光を遮断し、ホワイトノイズや耳栓で音の刺激を最小限にすることで、睡眠の質が向上します(Basner et al., 2014)。
④ 夜のスマホ・PC使用を控える
スマートフォンやPCのブルーライトは、睡眠ホルモンメラトニンの分泌を抑制します(Harvard Health Publishing, 2020)。寝る1時間前からのデジタルデトックスが推奨されます。
⑤ 軽い運動でストレス発散
ヨガや軽いストレッチは、心拍数や血圧を下げ、リラクゼーション効果があります(Field, 2011)。
特に、リストラティブヨガはストレス軽減と睡眠の質向上に有効です。

嫌なことがあった日の睡眠を改善する3つのポイント
- 副交感神経を優位にするリラックス習慣(深呼吸・ストレッチ・アロマ)を取り入れる
- 思考の整理として、ジャーナリングで気持ちを書き出す
- 寝室環境(温度・湿度・光・音)を最適化する
【よくある質問(FAQ)】
Q1. 嫌なことを思い出してしまい眠れません。どうすればいいですか?
A. 5分間の深呼吸や瞑想が脳の活動を落ち着かせます(Zeidan et al., 2010)。また、ジャーナリング(思ったことを紙にただひたすら書く)で思考を整理することも効果的です。
Q2. ストレスで眠れないときに飲むと良い飲み物は?
A. カモミールティーは、リラックス効果があり、不安軽減に役立つと言われています(Amsterdam et al., 2009)。
また、ホットミルクは睡眠ホルモンセロトニンの分泌を助けると言われています。ただ、牛乳は体質に合わない日本人が多いので、個人的にはオススメしていません。
Q3. 眠れないときにやってはいけないことは?
A. スマホやパソコンの使用、激しい運動、アルコール摂取は脳を覚醒させ、睡眠の質を下げます(Roehrs & Roth, 2001)。
▼気になる記事7選▼
TikTokで睡眠情報発信しています
子ども自身が読んで学べる睡眠書籍
\こども睡眠テキスト/

▼睡眠オタ推し!テコリア販売しています▼
画像をクリックでShopへ

▼YouTubeを参考に講演イメージください▼


参考文献
- McEwen, B. S. (2006). Sleep deprivation as a neurobiologic and physiologic stressor. Sleep, 29(7), 887-888.
- Killgore, W. D. (2010). Effects of sleep deprivation on cognition. Progress in Brain Research, 185, 105-129.
- Irwin, M., et al. (1996). Partial sleep deprivation reduces natural killer cell activity. Psychosomatic Medicine, 58(4), 325-332.
- Yoo, S. S., et al. (2007). The human emotional brain without sleep. Current Biology, 17(20), R877-R878.
- Haghayegh, S., et al. (2019). The effect of body warming on sleep onset latency. Sleep Medicine Reviews, 46, 87-99.