夜勤・深夜労働の裏側 !睡眠障害を招くシフト勤務の衝撃-無視できないその健康影響-

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この記事を書いたのは

睡眠オタクな作業療法士 石垣貴康です。

医療現場で延べ3万人以上の睡眠と身体の悩みに向き合い、現在は三重県で「眠りのコツ研究所」と「Totonoe-整-」を運営しています。

国家資格である作業療法士として、姿勢や動作の専門知識をもとに、科学的かつ実践的な睡眠改善を提案しています。専門職の育成や技術指導にも携わっています。

ブログ以外にも、書籍出版や講演、教育機関での授業など、睡眠のことをお伝えしています。

本ブログでは、医学的根拠と臨床経験に基づいた“リアルに使える睡眠情報”を、誰にでもわかりやすく、かつ深掘りしてお届けしています。

夜勤やシフト勤務で 「眠れない」「疲れが抜けない」 と悩んでいませんか?

不規則な勤務は、体内時計(サーカディアンリズム)を根こそぎ狂わせ、メラトニン分泌の低下・コルチゾール暴走・胃腸リズムの乱れといった“多重ストレス”を招きます。

そのまま放置すれば、慢性疲労・肥満・集中力低下・生活習慣病リスクが加速しかねません。

本記事は、光・食事・仮眠・メラトニン活用――

5つのステップで、今日からでも実践できる具体策を解説します。

深夜勤務でも体内時計改善テクを取り入れ、パフォーマンスと健康を同時に守りましょう。

目次

夜勤で眠れない本当の理由

トラブル要因仕組み代表的な症状
光刺激深夜の人工照明・スマホ光 → 松果体のメラトニン分泌↓入眠困難・浅い眠り
交感神経の亢進深夜作業でコルチゾール↑動悸・血圧上昇
食事リズムの乱れ深夜食+仮眠前の高GI食 → 胃腸時計が後倒し胃もたれ・肥満
睡眠分断仮眠時間が短い/静寂環境がない中途覚醒・日中眠気

ポイント:夜勤は“光・行動・食事”の3方向から体内時計をズラす。
そのズレを 「光の遮断と照射」「時間栄養学」「分割睡眠」 でリセットするのが最短ルート。

夜勤明けはサングラスをかけて帰宅するなど工夫ができます。

夜勤・シフト勤務者が感じやすい睡眠トラブルとは?

夜勤明けに「眠れない」「起きてしまう」

夜勤明けは体内時計が混乱しているため、眠りに入りにくく、眠ってもすぐに目が覚めてしまうことがよくあります。深部体温がまだ下がりきっていないことや、交感神経の興奮状態が続いていることが原因です。

「夜に寝られない」昼夜逆転の影響

夜勤を繰り返すうちに、昼夜逆転の生活リズムが定着してしまい、夜に眠れないという悩みを抱える人も少なくありません。メラトニン分泌のタイミングがズレることで、眠気を感じる時間帯が遅れていきます。

睡眠の質が浅くて疲れが取れない理由

交代勤務では、光や騒音などの環境的な要因に加え、体内リズムのズレが重なり、ノンレム睡眠が浅くなりやすいことが分かっています。その結果、たっぷり寝たはずなのに疲れが取れないという状態が続くのです。

▼夜勤と体内時計について(Youtube)▼

なぜ夜勤は睡眠の質を下げやすいのか?

メラトニン分泌と体内時計のズレ

夜勤中は本来メラトニンが分泌される時間帯(22時〜2時)に強い照明を浴びることが多く、これが体内時計を後退させてしまいます。結果として、寝るべき時間にメラトニンが出ず、睡眠導入が遅れることがあります。

深部体温と眠気のリズム

眠気は深部体温が下がるタイミングで生じます。日中に寝ようとしても、体温が高いままではなかなか入眠できません。遮光カーテンやアイマスクで環境調整することが重要です。

交感神経優位による寝つきの悪さ

夜勤中は業務で緊張状態が続くため、自律神経のうち交感神経が優位になっています。この状態では心拍数や血圧が高まり、入眠しづらくなります。副交感神経を優位にするためのリラクゼーションが有効です。

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シフト勤務が睡眠に与える影響の理解

特に夜勤は、体の内部時計である概日リズムを深刻に乱すことがあります。

概日リズムは、体温、ホルモン分泌、睡眠覚醒周期など、生体の多くの機能を調整しています。通常、このリズムは太陽光との関係で自然に調整されますが、夜間に活動することでこの自然なサイクルが狂い、生体内時計の乱れが生じます。

外部環境と体の内部時計のミスアラインメントにより、睡眠周期を調節する重要なホルモンであるメラトニンの産生が減少し、睡眠パターンが乱れる可能性があります。

シフト勤務の健康リスクとその予防法

睡眠不足と肥満・糖尿病リスク

交代勤務者では、内臓脂肪の増加やインスリン抵抗性の上昇が報告されており、メタボリック症候群のリスクが高い(Knutsson, 2003)。

うつ・不安障害との関連

慢性的な睡眠不足や社会的孤立は、うつ病や不安障害のリスクを高める要因です。とくに深夜勤務が続くと、セロトニン分泌の乱れにより情動コントロールが困難になります。

交代勤務とがんの関係(IARCの分類より)

国際がん研究機関(IARC)は、長期にわたる夜勤勤務を「発がん性の可能性がある」と分類しています。これは概日リズムの乱れによるDNA修復機能の低下やホルモン異常が要因と考えられています。

実際の講義資料

メラトニンは通常、暗くなると分泌が増加し、体を睡眠モードに誘導する重要な役割を担っています。

そのため、メラトニンの産生が減少すると、入眠困難や中途覚醒といった睡眠障害を引き起こす可能性が高まります。

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さらに、シフト勤務は通常の社会的活動とのズレを生じさせるため、社会的時差ボケとも呼ばれる現象が発生することがあります。

このように、シフト勤務による生体リズムの乱れは、単に睡眠パターンの乱れに留まらず、精神的、身体的健康にも広範な影響を与えることが明らかになっています。

したがって、シフト勤務者は、適切な光の管理や生活習慣の調整を行い、このリズムの乱れを最小限に抑える戦略を講じることが推奨されます。

以下の内容をぜひ参考にしてみてください。

夜勤明け・次のシフトに備える“仮眠”のコツ

仮眠時間のベストは「90分以内」

仮眠を取る際は、睡眠サイクルを考慮し90分または20分程度が理想です。中途半端な長さだと起床後に強い眠気が残ります。

仮眠前にカフェイン? それともNG?

仮眠前にコーヒーを飲むと、約20〜30分後に覚醒効果が現れるため、目覚めをスッキリさせる戦略として有効です。ただし、カフェインに敏感な人には逆効果の場合もあるので注意。

職場での仮眠スペース活用術

アイマスク・耳栓・ネックピローなどを持参し、できるだけ快適な仮眠環境を整えることがポイント。短時間でも回復効果が高まります。

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シフト勤務者7つの睡眠改善戦略

1. 光マネジメント:24時間“光シフト”戦略

タイミング取るべき光ねらい
出勤〜90分5,000 K 白色光・太陽光ドーパミン&コルチゾール↑で覚醒ブースト
勤務終了30分前電球色300 lx以下+ブルーライトカットメラトニン分泌スタート
帰宅後〜就寝遮光カーテン+アイマスク“擬似真夜中”を作り入眠スイッチON

ポイント:光は体内時計のリモコン。照度・色温度を使い分けて「眠い/起きたい」を自在に演出。

2. “ズレない体”を作る固定スケジュール

  • 休日も就寝&起床時刻は±60分以内
  • 分割睡眠なら 4.5 h+90 min をルーチン化

➜ 体内時計がブレず、夜勤⇆日勤の切り替えもラクに。

3. 睡眠環境チューニング

要素ベスト設定
マットレス体圧分散+通気性◎(硬すぎNG)
室温 / 湿度18–26 ℃ / 50–60 %
騒音カット耳栓orホワイトノイズ導入
ピロー選びオーダーメイド枕+高さ調整機能

4. 食事&ドリンクの“睡眠ハッキング”

  • カフェイン:勤務開始〜90分以内だけOK
  • アルコール:睡眠後半が浅くなるため就寝3 h前まで
  • 夜食:高GI・高脂肪は×、バナナ+ギリシャヨーグルト◎

5. メラトニン&薬理サポート

  • メラトニン0.5 mg:就寝30 min前にマイクロドーズ
  • 短期睡眠薬:医師の指示で2週間以内を基本

体内時計リセット+睡眠潜時短縮を狙い、長期連用は避ける。

6. CBT-I(認知行動療法)で“脳習慣”を再配線

  1. 刺激コントロール:ベッド=寝る場所だけに限定
  2. 睡眠制限:眠れない時間をベッドに持ち込まない
  3. 認知再構成:「寝られない=ダメ」という思考を修正

シフト勤務でずれた「睡眠=不安」回路を再教育できる最強メソッド。

7. アクティブレスト:運動と睡眠のゴールデンタイム

運動強度実施タイミング効果
有酸素(ウォーキング等)就寝4–6 h前深部体温↓で入眠促進
軽ストレッチ・ヨガ就寝1 h前副交感神経↑リラックス
激しい筋トレ就寝3 h以内は避ける交感神経過剰で覚醒
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睡眠を助けるツールと技術

ツールや技術がシフト勤務者の睡眠パターンを効果的に管理するのに役立ちます。

  1. ウェアラブル睡眠トラッカー: これらのデバイスは睡眠パターンや品質についての洞察を提供し、潜在的な中断や改善の余地を特定するのに役立ちます。
  2. ブルーライトフィルター: 電子デバイスからのブルーライトをフィルタリングするアプリケーションや眼鏡は、メラトニンの生成への干渉を減少させ、睡眠の開始と質を改善するのに役立ちます。
  3. ホワイトノイズマシン: これらのデバイスは、周囲の騒音をマスキングし、睡眠に適した心地よい音の風景を作り出すことができます。
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結論

シフト勤務は、健康的な睡眠パターンを維持するための独自の課題を提示します。

特殊なライフスタイルにこそ、戦略的な睡眠改善が必要です。

自分の勤務リズムに合わせて、光・食事・環境・思考を調整し、睡眠の質を底上げしましょう。

シフト勤務者は睡眠の質を大幅に改善することが可能です。

戦略を取り入れた日と取り入れていない日の身体の調子を比べてみてください。

毎日の蓄積が、健康・集中力・パフォーマンスに直結します。

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▼気になる記事3選▼

よくある質問

Q: シフト勤務中にカフェインを摂取すると、どのような影響がありますか?

A: カフェインは中枢神経系を刺激するアルカロイドで、覚醒状態を促進する作用があります。夜勤の初めに摂取することで注意力を高めることができますが、ハーフライフは約5〜6時間とされており、就寝前5時間以内の摂取は睡眠の質を低下させる可能性があるため、適切なタイミングでの摂取が推奨されます。

Q: シフト勤務者向けの理想的な運動時間帯はありますか?

A: 理想的な運動時間は、シフト終了後の数時間以内です。運動は交感神経活動を促進し、セロトニンのような神経伝達物質の分泌を促しますが、就寝の3時間前までに終えることで、運動による交感神経の活性化が睡眠前のリラクゼーションと干渉しないようにすることが望ましいです。

Q: メラトニンサプリメントの使用は常に推奨されますか?

A: メラトニンは体内時計の再同期に効果的ですが、個々の健康状態や既存の医療条件によっては推奨されない場合があります。概日リズム障害や重度の睡眠逸脱には有効ですが、専門の医療提供者と相談し、適切な投与量と使用タイミングを決定することが重要です。

Q: 睡眠環境を最適化する具体的な方法は何ですか?

A: 睡眠環境を最適化するためには、遮光性と遮音性に優れたカーテンや窓用のアクセサリーを使用し、室内温度は約16〜18度に保つことが理想的です。さらに、オルソスタティックな寝具を使用することで、脊椎と首のアライメントを保ち、睡眠中の身体的負担を軽減します。

Q: 認知行動療法(CBT-I)はどのようにしてシフト勤務者の睡眠に役立つのですか?

A: 認知行動療法は、不適切な睡眠衛生や不健康な就寝前の習慣を特定し、修正することで睡眠の質を改善します。具体的には、睡眠に関する認知の再構築を通じて、不眠症に対する患者の自己効力感を高め、環境調整やリラクゼーション技術を組み合わせることで、シフト勤務による生体リズムの乱れに効果的に対処します。

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参考文献

  • 「概日リズムと睡眠」国立一般医学研究所。
  • 「シフトワークと睡眠」全米睡眠財団。
  • ウォーカー, M. (2017) 『なぜ我々は眠るのか:睡眠と夢の力を解き明かす』。
  • Knutsson A. Health disorders of shift workers. Occup Med (Lond). 2003.
  • Van Dongen HP et al. The cumulative cost of additional wakefulness: Dose-response effects on neurobehavioral functions. Sleep. 2003.
  • Czeisler CA et al. Stability, precision, and near-24-hour period of the human circadian pacemaker. Science. 1999.
  • Sack RL et al. Melatonin administration to blind people: phase advances and entrainment. J Biol Rhythms. 2007.
  • IARC Monographs. Night shift work. 2019.
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