眠れない夜の恐怖:HPA軸の過剰活動とその代償-慢性睡眠不足-

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睡眠は私たちの健康に欠かせない要素です。しかし、現代社会では多くの人が慢性的な睡眠不足に悩まされています。

今回は、睡眠不足が視床下部-下垂体-副腎(HPA)軸に与える影響について詳しく探っていきます。

HPA軸はストレス応答の中心的な役割を果たし、その過剰な活動がさまざまな健康リスクを引き起こすことが知られています。

HPA軸の基本的な役割

視床下部

視床下部は脳の一部で、体内の恒常性を維持するために重要な役割を果たします。ストレスを感知すると、視床下部はコルチコトロピン放出ホルモン(CRH)を分泌します。

コルチコトロピン放出ホルモン(CRH)は、下垂体前葉に作用しアドレノコルチコトロピンホルモン(ACTH)の分泌を促進します。主にストレス応答に関与します。

下垂体

CRHが下垂体前葉に作用し、アドレノコルチコトロピンホルモン(ACTH)の分泌を促進します。

アドレノコルチコトロピンホルモン(ACTH)は、副腎皮質を刺激してコルチゾールの生成と分泌を促進します。主にストレス応答の調節に関与し、エネルギー供給や免疫機能の調整を行います。

副腎

ACTHが血流を通じて副腎皮質に到達し、コルチゾールの分泌を引き起こします。コルチゾールはストレス応答を調節し、エネルギー供給を確保するために代謝を調整します。

睡眠不足とHPA軸の活性化

睡眠不足がHPA軸の活動を増加させる理由は、以下の要因が複合的に作用するためです

視床下部の感知能力の変化

睡眠不足は視床下部の感知能力を変化させ、ストレスホルモンの分泌を増加させます。具体的には、視床下部は睡眠不足をストレスとして認識し、CRHの分泌を促進します。

CRHとACTHの分泌増加

CRHの増加は、下垂体からのACTH分泌を促進します。ACTHの増加は副腎皮質におけるコルチゾールの生成と分泌を引き起こし、HPA軸全体の活動が増加します。

コルチゾールのフィードバック機構

コルチゾールは通常、負のフィードバック機構を通じてHPA軸の活動を抑制します。

しかし、睡眠不足により、このフィードバック機構が効果的に働かなくなり、コルチゾールレベルが持続的に高い状態が続きます。これにより、HPA軸の活動がさらに活発になります。

ノルアドレナリンの役割

睡眠不足は脳内のノルアドレナリンレベルを上昇させます。ノルアドレナリンは視床下部を刺激し、CRHの分泌を増加させるため、HPA軸の活動を促進します。

睡眠の質の低下

深いノンレム睡眠(スローウェーブ睡眠)は、HPA軸の活動を抑制し、体を休息状態に保つ役割を果たします。睡眠不足や睡眠の質の低下により、この抑制が失われ、HPA軸の活動が増加します。

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HPA軸の過剰活動による影響3選

1.コルチゾールの持続的な増加

高レベルのコルチゾールは、慢性的なストレス反応を引き起こし、免疫機能の低下、血糖値の上昇、体重増加、心血管疾患のリスク増加などを招きます。

2.交感神経系の活性化

交感神経系が優位になり、心拍数や血圧の上昇、筋肉の緊張など、ストレス状態が持続します。

3.炎症の増加

高レベルのコルチゾールは炎症性サイトカインの生成を促進し、慢性的な炎症状態を引き起こします。

まとめ

睡眠不足は視床下部のストレス感知能力を変化させ、CRHとACTHの分泌を増加させることにより、HPA軸の活動を増加させます。

これにより、コルチゾールのレベルが持続的に高くなり、交感神経系の活性化や慢性的な炎症状態を引き起こします。

これらの結果として、全体的な健康に悪影響を及ぼし、さまざまな慢性疾患のリスクが増加します。

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よくある質問と回答

Q: 睡眠不足がHPA軸に与える影響は何ですか?

睡眠不足は視床下部のストレス感知能力を変化させ、CRHとACTHの分泌を増加させることにより、HPA軸の活動を増加させます。

結果として、コルチゾールのレベルが持続的に高くなり、交感神経系の活性化や慢性的な炎症状態を引き起こします。

Q: HPA軸の過剰な活動が健康にどのように影響しますか?

HPA軸の過剰な活動は、高レベルのコルチゾールの持続的な増加を引き起こし、免疫機能の低下、血糖値の上昇、体重増加、心血管疾患のリスク増加などを招きます。

また、交感神経系の活性化や慢性的な炎症状態も引き起こします。

Q: コルチゾールのフィードバック機構とは何ですか?

コルチゾールのフィードバック機構は、通常、コルチゾールが一定のレベルに達するとHPA軸の活動を抑制する仕組みです。

しかし、睡眠不足によりこの機構が効果的に働かなくなり、コルチゾールレベルが持続的に高くなります。

Q: 睡眠不足が交感神経系に与える影響は何ですか?

睡眠不足は交感神経系を優位にし、心拍数や血圧の上昇、筋肉の緊張を引き起こします。

これにより、ストレス状態が持続し、全体的な健康に悪影響を及ぼします。

Q: ノルアドレナリンの役割は何ですか?

ノルアドレナリンは視床下部を刺激し、CRHの分泌を増加させる役割を持ちます。

睡眠不足により脳内のノルアドレナリンレベルが上昇すると、HPA軸の活動がさらに促進され、コルチゾールの分泌が増加します。

これにより、ストレス応答が強化され、全体的な健康に悪影響を及ぼす可能性があります。

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引用文献

  1. Sapolsky, R. M., Romero, L. M., & Munck, A. U. (2000). How do glucocorticoids influence stress responses? Integrating permissive, suppressive, stimulatory, and preparative actions. Endocrine Reviews, 21(1), 55-89.
  2. McEwen, B. S. (2007). Physiology and neurobiology of stress and adaptation: Central role of the brain. Physiological Reviews, 87(3), 873-904.
  3. Born, J., & Fehm, H. L. (1998). The neuroendocrine recovery function of sleep. Noise and Health, 1(2), 29-38.
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