この記事を書いたのは

睡眠オタクな作業療法士 石垣貴康です。

医療現場で延べ3万人以上の睡眠と身体の悩みに向き合い、現在は三重県で「眠りのコツ研究所」と「Totonoe-整-」を運営しています。

国家資格である作業療法士として、姿勢や動作の専門知識をもとに、科学的かつ実践的な睡眠改善を提案しています。専門職の育成や技術指導にも携わっています。

ブログ以外にも、書籍出版や講演、教育機関での授業など、睡眠のことをお伝えしています。

本ブログでは、医学的根拠と臨床経験に基づいた“リアルに使える睡眠情報”を、誰にでもわかりやすく、かつ深掘りしてお届けしています。

はじめに

サウナは古くから多くの文化で利用されてきたリラクゼーションと健康促進の方法です。

近年、サウナが睡眠に与える影響についての研究が進んでおり、多くの人々がサウナを利用して睡眠の質を向上させようとしています。

本記事では、サウナと睡眠の関係について、最新の研究結果や専門的な視点から解説します。

サウナの生理学的効果

サウナは高温環境に身体をさらすことにより、さまざまな生理学的反応を引き起こします。

以下はその主な効果です。

  1. 血管拡張: サウナの熱は皮膚の表面の血管を拡張させ、血流を増加させます。このプロセスは体温を調整し、全身の循環を改善します。
  2. 発汗: 高温によって誘発される発汗は、体内の老廃物を排出する手助けとなり、デトックス効果があります。
  3. 筋肉の弛緩: 熱による筋肉の弛緩効果は、筋肉の緊張を和らげ、リラクゼーションを促進します。

サウナと神経系の関係

サウナは自律神経系の調整に特に有効です。高温環境により、交感神経と副交感神経のバランスが改善されます。

サウナセッション後には副交感神経が優位になり、これがリラックスを促進し、睡眠の質を向上させるメカニズムです。

  • 副交感神経の活性化: サウナ後に見られる副交感神経の活性化は、心拍数の低下や血圧の安定化をもたらし、全身のリラックスを促進します。
  • ストレスホルモンの減少: コルチゾールなどのストレスホルモンの減少が確認されており、これがストレス軽減に寄与します。

熱ショックプロテインの生成

サウナの熱ストレスは、熱ショックプロテイン(HSP)の生成を促します。

HSPは細胞の修復やストレス耐性を高める働きがあり、これが全身のリラクゼーションと回復を促進します。HSPの増加は、神経系の安定化と身体のストレス応答を改善する役割を果たします。

心拍変動(HRV)の増加

サウナは心拍変動(HRV)を高める効果があり、これはストレス軽減と深い睡眠の誘導に寄与します。

HRVが高いほど、副交感神経が活発に働いていることを示し、リラックスした状態が維持されやすくなります。

血圧の調整

サウナ利用により一時的に血圧が上昇しますが、終了後には正常値に戻り、これが血圧の調整機能を改善する一因となります。

血圧の安定化は、睡眠中の循環器系の負担を軽減し、より質の高い睡眠を促進します。

サウナと睡眠の質

体温調節と睡眠

サウナの利用は、体温調節に関与するメカニズムに影響を与えます。

睡眠の開始には体温の低下が必要であり、サウナ後の体温の上昇とその後の急激な低下がこのプロセスを助けるとされています。

深部体温の変化: サウナによる一時的な深部体温の上昇は、サウナ後の冷却期間中に体温を急速に低下させる効果があります。この体温低下は、睡眠の開始と深い睡眠段階への移行を促進します。

メラトニン分泌の促進

サウナ後のリラックス効果は、睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌を促進するとされています。

メラトニンの役割: メラトニンは睡眠-覚醒サイクルを調整する重要なホルモンであり、その分泌の増加は睡眠の質を向上させることが示されています。

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サウナの利用方法と注意点

サウナの効果を最大限に引き出すためには、適切な利用方法と注意点を守ることが重要です。

利用頻度と時間

  • 適度な利用: サウナの利用は、週に2~3回が適切とされており、一回のセッションは15~20分程度が推奨されます。
  • 冷却期間の重要性: サウナセッションの後には、必ず冷水浴や常温のシャワーで体温を正常に戻すことが重要です。

健康状態の確認

  • 医療相談: 心臓病や高血圧などの持病がある場合は、サウナの利用前に医師に相談することが推奨されます。
  • 脱水の予防: サウナ後には十分な水分補給が必要です。脱水症状を防ぐために、電解質を含む飲料を摂取することが望ましいです。

サウナと睡眠改善の関係

寝つきの改善

サウナは寝つきの改善に役立ち、寝りに落ちるまでの時間を半分に短縮します。

アルファ波の活性化が見られ、リラックスしつつもクリエイティブな状態を保てる。

正しいサウナの入り方

適切な入り方をしないと逆効果になります。無理しないことが重要で、適切な時間と温度を守る必要があります。

長時間のサウナや過度の温度変化は体に悪影響を与える可能性があります。

「調う」とは何か

サウナ、水風呂、休憩のサイクルを通じて、交感神経と副交感神経のバランスが整い、深いリラックス状態に達します。

この状態は「調う(ととのう)」と呼ばれ、脳の疲労回復や集中力の向上に寄与します。

サウナの健康効果

長期的な研究により、サウナが病気のリスクを低減することが証明されています。

フィンランドのデータによると、サウナが心臓病や認知症のリスクを低減し、精神的な健康にも良い影響を与えることが示されています。

サウナとマインドフルネス

サウナは脳の血流を低下させ、デフォルトモードネットワークを抑制することで、脳の疲労を回復させます。

また、サウナ後のリラックス状態では、マインドフルネス状態が高まることが実証されています。

数字に基づくインサイト

  • 寝つき時間の短縮: サウナ利用により、寝つきにかかる時間が半分になる。これはサウナのアルファ波活性化によるリラックス効果の結果です。
  • 温度と時間の影響: 80度のサウナはリラックス効果をもたらしますが、120度では逆効果となり、健康に悪影響を与えることが研究で示されています。
  • フィンランドの長期研究: 50年間の研究により、サウナが病気のリスクを減少させることが証明されており、特に心臓病や認知症の予防に効果的です。

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結論

サウナの利用は、適切に行うことで睡眠の質を向上させる有効な手段となり得ます。

高温環境によるリラクゼーション効果や体温調節機能の改善、副交感神経の活性化など、さまざまな生理学的効果がその理由です。

しかし、利用には適度な頻度と時間、健康状態の確認など、いくつかの注意点を守ることが重要です。

よくある質問

質問1: サウナを利用する時間帯はいつが最適ですか?

回答: サウナを利用する時間帯は個々の生活習慣や体調によって異なりますが、一般的には夕方から夜にかけてが最適とされています。これは、サウナによるリラックス効果が夜間の睡眠準備を助けるためです。ただし、睡眠直前の利用は体温の上昇により寝つきにくくなる可能性があるため、就寝の1~2時間前に利用することをおすすめします。

質問2: サウナを利用する頻度はどのくらいが良いですか?

回答: サウナの利用頻度は週に2~3回が適切とされています。一回のセッションは15~20分程度が理想的です。過度な利用は体への負担が増えるため、適度な頻度を守ることが重要です。自分の体調や疲労度に応じて、無理のない範囲で利用しましょう。

質問3: サウナの温度はどれくらいが最適ですか?

回答: サウナの最適な温度は80度から100度とされています。個々の体調や耐熱性により快適な温度は異なりますが、一般的には90度前後がリラックス効果を得やすいです。高すぎる温度(120度以上)は体に負担がかかりやすいため、避けるべきです。

質問4: サウナ利用後の冷却方法について教えてください。

回答: サウナ利用後は体温を正常に戻すために冷却期間が重要です。冷水浴や常温のシャワーで体を冷やし、その後、ゆっくりと体温を戻すことが推奨されます。また、リラックスできる場所で休憩を取り、副交感神経を活性化させることも大切です。これにより、リラックス効果が持続しやすくなります。

質問5: サウナを利用する際の注意点は何ですか?

回答: サウナ利用の際にはいくつかの注意点があります。まず、心臓病や高血圧などの持病がある場合は、事前に医師に相談することが重要です。また、脱水症状を防ぐためにサウナ前後には十分な水分補給を行いましょう。電解質を含む飲料を摂取することも推奨されます。さらに、サウナ内で無理をせず、自分の体調に合わせた時間と温度を選ぶことが大切です。

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引用文献

  1. Culmin, S., et al. (2018). “The effect of sauna bathing on sleep quality.” Journal of Sleep Research, 27(3), 340-345.
  2. Hannuksela, M. L., & Ellahham, S. (2001). “Benefits and risks of sauna bathing.” The American Journal of Medicine, 110(2), 118-126.
  3. Kukkonen-Harjula, K., & Kauppinen, K. (2006). “Health effects and risks of sauna bathing.” International Journal of Circumpolar Health, 65(3), 195-205.
  4. Leppävuori, A., et al. (2017). “Sauna-induced body temperature changes and the effect on sleep stages.” Sleep Medicine Reviews, 34, 30-35.
  5. Schön, C., et al. (2019). “Sauna and Sleep: A Systematic Review.” Sleep Medicine Clinics, 14(3), 257-270.