この記事を書いたのは

睡眠オタクな作業療法士 石垣貴康です。

医療現場で延べ3万人以上の睡眠と身体の悩みに向き合い、現在は三重県で「眠りのコツ研究所」と「Totonoe-整-」を運営しています。

国家資格である作業療法士として、姿勢や動作の専門知識をもとに、科学的かつ実践的な睡眠改善を提案しています。専門職の育成や技術指導にも携わっています。

ブログ以外にも、書籍出版や講演、教育機関での授業など、睡眠のことをお伝えしています。

本ブログでは、医学的根拠と臨床経験に基づいた“リアルに使える睡眠情報”を、誰にでもわかりやすく、かつ深掘りしてお届けしています。

「週に何回も通ってるのに、なかなか変わらない」

「痛みも疲れも、もうクセになってる気がする」

そんな悩み、実はリハビリそのものの問題ではなく、“体の土台”に原因があるかもしれません。

🔻結論から言います

リハビリで治したいなら、

まず「体内時計を整える」ことが最優先です!

🧠体内時計がズレると、“治る力”が落ちる3つの理由

① 筋肉も神経も「夜に修復される」

成長ホルモンは深い眠りのときに分泌されます。

つまり、睡眠の質が悪ければ、リハビリで得た刺激が回復や再構築に繋がりません。

② “覚える・動かす”は「朝〜昼」

脳は日中に最も活性化し、動作の学習や再訓練に向いています。

夜型生活では、訓練効率が落ちてしまうのです。

③ 痛みが強まり、意欲が低下する

体内時計の乱れは自律神経を狂わせ、痛みの感じ方を敏感にします。

睡眠不足のときに痛みが増した経験はありませんか?

🧩リハビリは「筋トレ」だけじゃない!

たとえば、歩き方の再獲得、手の使い方の再学習、姿勢保持やバランスの再構築。

これらはすべて、脳の中で“新しい地図”を描き直す作業です。

この「運動学習」は、脳の状態が悪いと学習効率が一気に低下してしまいます。

⏰体内時計が狂うと“脳が学べない”

🚫 睡眠不足 → 学習効率が低下

脳は睡眠中に「その日に体験した動作」を整理・定着させます。
睡眠時間が短い、リズムが不規則だと、せっかくの練習が“記憶”として残らないのです。

▶【参考】Walker MP et al., 2005「睡眠後の運動課題パフォーマンスは、睡眠を取らなかった群より20%以上向上」

🚫 朝が弱い → 脳が「起きてない」

朝型生活の人は、前頭葉(判断・集中・学習に関わる領域)が早く活性化しやすくなります。
一方、夜型の人は、リハビリの時間帯でもまだ“脳がスリープ状態”。これでは練習も効きません。

🧠豆知識:脳にも“体内時計”がある!

脳内には視交叉上核(しこうさじょうかく)という「親時計」があり、全身のリズムを統括しています。

これに従って、筋肉・内臓・神経も動くため、生活リズムがズレると“治る順番”も狂ってしまいます。

🚨間違った健康法5選 ~リハビリ効果が落ちる習慣~

❌ 1. 昼寝で帳尻を合わせる

長時間の昼寝は夜の睡眠を妨げます。目安は20〜30分、15時まで。

私は小学校の授業でも昼寝テクニックについては、お伝えするようしています。

❌ 2. 運動後、即冷房ガンガンでゴロ寝

急な冷却で自律神経が乱れ、回復力が下がります。

エアコンを制するものは睡眠を制する!

❌ 3. 寝る直前までスマホやテレビ

ブルーライトでメラトニン分泌が抑制され、深く眠れません。

特によくないのはSNSや動画で脳が覚醒することです。

さっさとスマホはお休みさせましょう。

❌ 4. 朝食を抜いてコーヒーだけ

朝食は内臓の目覚まし。抜くと体が“朝”と認識できません。

内臓は体内時計の副時計です。リセットしましょう。

❌ 5. 夜にリハビリの復習

脳が興奮し、かえって睡眠の質が下がります。復習は午前〜夕方に。

もしするなら、ゆったりしたストレッチや呼吸法などで心身ともに整えましょう。

🛌体内時計を整える3ステップ【OT直伝】

☀️Step1:朝起きたら即日光浴び

目に入る光が、脳の親時計をリセットしてくれます。

🍽Step2:朝食は“温かく・消化のよいもの”を

お味噌汁やスープなど、内臓の時計をスタートさせるスイッチになります。

📱Step3:夜のスマホは寝る1時間前に終了

部屋を暗く・静かにして、脳に“夜だよ”と教えましょう。

🔄覚えられる脳をつくるには?

脳が“学べる状態”にあるとき脳が“学びにくい状態”のとき
体内時計が整っている睡眠時間・生活がバラバラ
睡眠が足りている睡眠不足・中途覚醒がある
朝の光を浴びている朝起きるのが遅く、光も浴びない
日中に活動・運動している日中は横になってばかり、運動不足
夜はしっかり暗くして休んでいる寝る直前までスマホ・テレビを見ている

🎯こんな方にこそ伝えたい!

・頑張っているのに成果が出ない
・日によって体調にムラがある
・寝ても疲れが抜けない
・痛みがいつまでも続く

👉まずは「体内時計」、ここから整えてみてください。

▼気になる記事5選▼

❓よくある質問

Q. 寝る前のスマホ、本当にそんなに悪いの?

明るい画面はメラトニン分泌を抑制し、深い睡眠を妨げます。
【参考】Chang A-M et al., 2015『Evening use of light-emitting eReaders negatively affects sleep』

Q. 睡眠不足だとリハビリの効果は本当に下がる?

明確に低下します。睡眠不足時は運動学習が阻害され、痛覚過敏も起こりやすくなります。
【参考】Van Dongen HP et al., 2003『The cumulative cost of additional wakefulness』

Q. 睡眠とリハビリの記憶って関係あるの?

ノンレム睡眠中に運動記憶が強化されることが証明されています。
【参考】Fischer S et al., 2002『Sleep forms memory for finger skills』

Q. 睡眠不足があるとリハビリの効果は本当に下がるの?なぜ?

✅結論:はい、明確に下がります!!!

その理由は大きく分けて以下の3点です。

運動学習(motor learning)が低下するから

運動学習とは、歩行・起き上がり・手の使い方などを脳が再び“覚え直す”プロセスです。
このプロセスでは、**海馬や運動前野といった脳部位が活性化し、神経ネットワークの再構築(神経可塑性)**が必要です。

ところが、睡眠不足になると…

  • 記憶の整理が行われる「ノンレム睡眠」
  • 新しい動作パターンが定着する「レム睡眠」

これらが削られ、その日の学習が翌日に活かせなくなります

▶ 研究例:Fischer et al.(2002)では、睡眠を挟んだ群は指の運動課題で最大20%の成績向上を示しましたが、起き続けた群は変化なし。

脳の判断力・集中力が落ちるから

睡眠不足は、脳の中でも**前頭前野(判断・抑制・集中)**の働きを鈍らせます。

これにより、リハビリ中に以下のような現象が起こります:

  • 指導を受けても頭に入らない
  • 途中で集中が切れて手足が止まる
  • やる気が起きない、途中で諦めてしまう

つまり、**「刺激を与えても、それを脳が受け取れない状態」**になるのです。

痛みが強くなり、動くのがつらくなるから

睡眠不足により、以下のような痛み増強因子が働きます:

  • 内因性鎮痛系の低下(視床下部・前帯状皮質)
  • 炎症性サイトカイン(IL-6、TNF-α)の増加
  • 末梢の痛覚受容体(TRPV1など)が過敏に

結果として、

  • 痛みの“しきい値”が下がる(いつもより痛く感じる)
  • 動くことへの恐怖や回避行動が強まる
  • 緊張やこわばりが抜けず、リハビリが逆効果に

という悪循環が生まれます。

▶ 参考文献:Finan PH et al., 2013 “The association of poor sleep with pain: neurobiological and psychological mechanisms”

🧠睡眠不足の目安とは?

  • 6時間未満の睡眠が続いている
  • 朝起きてもだるく、午前中に集中できない
  • リハビリ中、眠気や気分の落ち込みがある
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→これらに該当する場合、脳が学習・修復モードに入れていない可能性が高いです。

✅この記事のまとめ!

・リハビリ効果は“睡眠と体内時計”が左右する
・脳の学習力を高めるには、日中のリズムが大切
・間違った健康習慣は、治りを遠ざける
・リハビリの時間外こそが、実は一番重要!