この記事を書いたのは

睡眠オタクな作業療法士 石垣貴康です。

医療現場で延べ3万人以上の睡眠と身体の悩みに向き合い、現在は三重県で「眠りのコツ研究所」と「Totonoe-整-」を運営しています。

国家資格である作業療法士として、姿勢や動作の専門知識をもとに、科学的かつ実践的な睡眠改善を提案しています。専門職の育成や技術指導にも携わっています。

ブログ以外にも、書籍出版や講演、教育機関での授業など、睡眠のことをお伝えしています。

本ブログでは、医学的根拠と臨床経験に基づいた“リアルに使える睡眠情報”を、誰にでもわかりやすく、かつ深掘りしてお届けしています。

REM睡眠が遅れるとどうなるのか?

この記事は「ちょっと夜更かしくらい問題ないでしょ

って思ってる方にこそ、読んでいただきたいです。

「夜ふかししてスマホを見た翌朝、なんだか頭がぼんやりする」

「夢を見ていない気がする」――

そんな経験はありませんか?

これは単なる気のせいではなく、REM睡眠の開始が遅れる(REM遅延という科学的現象が関わっています。

体内時計が後退することで、翌朝起きづらい、日中の眠気などの原因となります。

定義
REM睡眠の開始遅延とは、就寝前の光曝露や刺激によって体内時計が後退し、NREMからREMへの移行が後ろ倒しになる現象である。

引用:こども睡眠テキスト▶詳細

REM睡眠とは?

REMとNREMのサイクル

人間の睡眠は90分前後の周期で、NREM(N1→N2→N3)とREMが繰り返されます。

前半はNREMが中心、後半ほどREMが増えるのが基本形です。

REMの役割

  • 記憶の統合(学習内容の再編成)
  • 情動処理(ストレスや不安の調整)
  • 創造性の促進(脳内ネットワークの柔軟化)

💡 豆知識
REM睡眠は「脳の夜間メンテナンス」。情報のゴミを片づけ、必要な記憶を残してくれます。

REM開始が遅れるメカニズム

光曝露と視交叉上核(SCN)

就寝前のスマホやLED照明に含まれる短波長光(ブルーライト)は、網膜のipRGCが感知してSCN(体内時計の中枢)を刺激し、メラトニン分泌を抑制します。

このメラトニンは天然の睡眠薬と言われるホルモンです。=分泌が抑制れると眠気がきません

その結果、眠気が起きにくくなり入眠が遅れ、REMの出現も後ろ倒しになります。

因果チェーン
光曝露 → SCN刺激 → メラトニン抑制 → 深部体温下降が妨げられる → 入眠遅延 → REM遅延

メラトニンと深部体温

メラトニンは深部体温を下げ、入眠を促すホルモン。抑制されると「眠気が来ない」「寝つけない」状態が起き、睡眠構造のスタートが乱れます。

概日リズムの位相後退

夜の光は体内時計を後方(遅い時刻)へずらす作用が強く、慢性的に続くと夜型化が進み、入眠とREM潜時が恒常的に延びがちです。

その他の遅延因子

  • アルコール:初期NREMを増やしREMを削る
  • カフェイン:睡眠圧を下げ入眠・REMを遅らせる
  • 交感神経優位(ストレス・運動直後・高温浴):脳が覚醒モードのまま

💡 豆知識
「寝る直前のスマホ=体内時計を約1時間遅らせる」レベルのインパクトになることがあります。

REM遅延がもたらす影響

睡眠構造の偏り

REMが後ろ倒しになると前半はN2・N3(深いNREM)に時間が割かれ、結果としてREM総量が削られやすくなります。

翌朝の認知・気分

REM不足は記憶統合や情動処理が不十分になり、翌日の学習効率低下、気分の不安定、集中力低下につながります。

臨床的アウトカムの例

  • 睡眠時無呼吸:低酸素・覚醒反応でREMが抑制
  • うつ病:REM潜時の異常・REM構造の乱れ
  • アルコール:夜明け前のREM(まとまって出る傾向)が減少

日常での自覚

  • 「夢を見ていない気がする」=REM不足のサインことが多い
  • 「朝ぼんやり」=夜明け前REMの減少で“脳の仕上げ”が足りていない

💡 豆知識
REMは夜明け前に集中して出る傾向。だから“朝のスッキリ感”はREMの恩恵です。

REM遅延と健康リスク

精神面

  • 気分障害(抑うつ・不安)と関連
  • 睡眠リズム障害(遅延型睡眠相)と悪循環

身体面

  • メラトニン低下に伴う代謝悪化(インスリン抵抗性↑)
  • 肥満・糖代謝異常・高血圧などの生活習慣病リスク増

💡 豆知識
REM不足は「メンタル」と「代謝」の両方をじわじわ蝕みます。

▼気になる記事3選▼

今日からできる実用的改善策

光環境の調整

  • 就寝60分前はスクリーン断食(スマホ・PC・TV)
  • 照明は2700K以下の暖色へ切替え、間接照明中心に

朝の光でリセット

  • 起床直後5〜10分の自然光浴(窓辺でも可)
  • 冬季や在宅時は光療法ランプ(2,500〜10,000lx)活用

行動習慣

  • 夜のカフェイン・アルコール控えめ
  • 軽いストレッチや呼吸法で副交感神経優位に

医療的介入

  • 不眠症:CBT-I(認知行動療法)
  • 睡眠時無呼吸:CPAP療法

セルフチェックリスト

□ 寝る前にスマホを触っていないか?

□ 部屋の照明は白色LEDのままではないか?

□ 朝の光を浴びているか?

□ 夜のカフェイン・アルコールを摂っていないか?

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よくある質問(FAQ)

Q1. REMが遅れてもNREMが増えるなら良いのでは?

確かにNREM(特にN3)は身体回復に重要。

しかしREM不足は「感情処理」「記憶の定着」に直結する。

つまり「体は休めるが、脳は休めない」状態になる。

両者のバランスが崩れると、翌日パフォーマンスが著しく低下する。

Q2. 昼間の光でも影響するのですか?

朝〜昼の光は体内時計をリセットする働きがあるのでむしろ有益。

問題は夜間(特に22時以降)の光曝露。

この時間帯に光を浴びると体内時計が「夜はまだ終わらない」と錯覚する。

結果:入眠が遅れ、REM潜時も後退。

Q3. 夢を見ないのは悪い睡眠?

夢=REMの象徴とされるが「覚えていないだけ」のケースが大半。

ただしREMが不足すると夢の記憶が減少する傾向は確かにある。

「夢を見ていない気がする」+「朝ぼんやり」が続く場合はREM不足のサイン。

睡眠日誌やアプリでパターンを追跡すると分かりやすい。

Q4. アルコールで寝つきが良くなるのに、なぜ朝はだるい?

アルコールは入眠を助けるが、NREM(浅い眠り)を増加させる。

その代わりREMが削られるため、脳の整理が進まない。

夜明け前のREMが減り、「朝のスッキリ感」が得られない。

長期的には依存・リズム障害・認知機能低下を引き起こす。

まとめ

  1. REM遅延=「夜の光」「生活習慣」が主因
  2. 翌朝の集中力・気分安定・学習効率に直結
  3. 防ぐには 「夜の光を避け、朝の光を浴びる」 が最強の対策

REM遅延=「夜の光」と「生活習慣」が主因です。

翌朝の集中力・気分安定・学習効率に直結するため、防ぐには夜の光を避け、朝の光を浴びるのが最も効果的です。

読者へのメッセージ
寝る前のたった60分の工夫が、翌日のあなたのパフォーマンスを劇的に変えます。

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