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作業療法士・睡眠専門家としての医療的専門性に加え、企業の経営企画や人材育成支援に実務レベルで関わる「人的資本経営の伴走者」、石垣貴康が執筆しています。
これまでに、企業への健康投資導入や社内講座提供、ブランディング支援、助成金を活用した人材開発講座の企画・監修などを多数担当。
さらに、睡眠と健康をテーマにした書籍を出版し、専門家としてメディア出演の実績もあります。
自身も複数の事業を運営しながら、「科学的根拠 × 現場実践」の視点で、“働く人と組織=環境が健康的に成果を出す仕組みづくり”を支援しています。

目次
睡眠と俯瞰力の関係
睡眠不足になると、人は自分を客観的に見つめる「俯瞰力」を失います。
その理由は脳科学で説明できます。
- 前頭前野の活動低下:誤りや偏りに気づけなくなる
- 扁桃体の過敏化:小さなトラブルを過大に捉える
- 報酬系の歪み:短期的な得に飛びつき、長期リスクを軽視する
- 自己認識の低下:「眠気を自覚できず、自分は大丈夫と思い込む」
心理学者ダニエル・カーネマンが説いた「熟考的なシステム2」が働かなくなり、短絡的なシステム1に頼る状態に陥るのです。

脳内で起きているメカニズム
睡眠不足の脳では、複数の神経回路が崩れます。
- エラーモニタリングの低下
前帯状皮質(ACC)の働きが鈍り、誤りに気づけなくなる。 - 感情制御の断線
扁桃体が過敏化し、前頭前野との結合が弱まることで「小事が大事に見える」状態になる。 - 報酬回路の偏り
側坐核(快楽・報酬の回路)が強く反応し、リスクを軽視して「見たい未来」を選びがちになる。 - 注意の瞬断
マイクロスリープと呼ばれる“数秒間の意識の空白”が起こり、集中が途切れる。
結果として、俯瞰して自分を見直す力そのものが消えるのです。

ビジネス現場で失われるもの
- 経営判断の質:数字に飛びつき、長期リスクを無視
- チーム信頼:共感力が下がり、人間関係がギスギスする
- 倫理の基盤:小さな逸脱を見逃し、大きな不祥事に発展
- 成果の逆ROI化:長時間働いても成果は減り、本人は気づかない
ウォーレン・バフェットが言うように、「成功とは、正しい判断をすることではなく、間違った判断を減らすことだ。」
睡眠不足は、その“間違い削減機能”を壊してしまうのです。

実社会での“見えない損失”
睡眠不足は、本人の自覚を超えて社会全体に損失をもたらします。
- 医療現場
長時間勤務の医療従事者は、睡眠不足で重大な医療エラーを起こす確率が増大。命に関わるリスク。 - 交通安全
起床17時間後は血中アルコール濃度0.05%と同等、24時間起き続ければ0.10%相当の機能低下。居眠り運転や事故につながる。 - 経営・企業活動
睡眠不足のリーダーは「短期的利益を優先し、長期損失を軽視」する傾向が強まり、株主価値や組織文化にダメージを与える。 - チームワークと生産性
共感力・利他性の低下は、チームの士気を下げ、協働効率を落とす。小さな摩擦が離職や顧客離れに波及する。
つまり、睡眠不足は「見えないコスト」を膨らませ、個人だけでなく組織・社会のパフォーマンスを蝕むのです。

俯瞰力を守る4つの実践戦略
1. 意思決定を仕組み化する
- 大きな判断は翌日再確認をルール化
- 投資や契約はダブルチェック体制を導入
- GoogleやAmazonも「重要決定を翌日見直す」文化を持っています
2. タイミングをデザインする
- 会議・交渉・プレゼンは午前中に配置
- 徹夜や深夜作業の翌日は「意思決定タスク」を外す
- スタンフォード大の調査:睡眠不足のCEOはリスク評価を誤る確率が大幅に上昇
3. 戦略的リカバリーを組み込む
- 20分以内のパワーナップでエラー率を即改善
- 朝の散歩でセロトニン・BDNF・ドーパミンを活性化し、認知機能を回復
- ビル・ゲイツも「朝の散歩で一日の思考が整理される」と語っています
4. 睡眠をKPIにする
- ドラッカーの名言「測定できないものは改善できない」を睡眠に適用
- 睡眠時間・深睡眠割合・中途覚醒を定量管理
- FitbitやOura Ringでログを取り、PDCAを回す
- マッキンゼー調査:睡眠ログ導入チームは平均15%の生産性向上
▼気になる記事3選▼
セルフチェック ― 睡眠不足で俯瞰力を失っていないか?
- 誤りに気づくのが遅くなった
- 部下や顧客の感情に鈍感になっている
- 些細なことで苛立ちやすい
- 「今日は大丈夫」と思っても集中が続かない
- 判断を先延ばしにしてしまう
2つ以上当てはまれば、睡眠不足があなたの俯瞰力を奪っている危険信号です。

まとめ ― 睡眠はリーダーの最強の資本
ジェフ・ベゾスはこう断言しています。
「私は常に8時間寝る。そうすれば長期的に最高の意思決定ができるからだ。」
睡眠不足は、成果を上げるどころか誤った方向へ舵を切らせます。
真に意識の高いビジネスパーソンとは、睡眠を“戦略的資本”として扱う人です。

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よくある質問(FAQ)
Q1. 睡眠不足になると、なぜ自分を客観的に見られなくなるのですか?
A. 睡眠不足は前頭前野や前帯状皮質の活動を低下させ、誤りに気づく力=メタ認知を弱めます。また扁桃体が過敏になり、些細なことを過大評価しやすくなるため、冷静な俯瞰視点を失います。
Q2. 睡眠不足が続いても自覚がなくなるのはなぜですか?
A. 脳が「慣れた」と錯覚するためです。研究では、6時間睡眠を2週間続けると2日徹夜と同等の認知低下が確認されていますが、本人は「大丈夫」と思い込んでいました。
Q3. ビジネスにおける睡眠不足の最大のリスクは何ですか?
A. 意思決定の質低下です。短期的な利益に飛びつき、長期的リスクを見落とす傾向が強まります。さらに共感力や倫理判断が落ち、チームの信頼や企業ブランドを損なうことにつながります。
Q4. 睡眠不足による“見えない損失”にはどんなものがありますか?
A. 医療現場での重大エラー、交通事故リスクの増加、経営判断の誤り、チームの人間関係悪化など。本人の自覚がないまま、社会全体のコスト増大を招きます。
Q5. 「自分は短眠に強い」と思っていても大丈夫ですか?
A. ほとんどの場合、大丈夫ではありません。短眠耐性を持つ人は人口の1%未満。多くの人が真似すると判断力や集中力が低下し、成果や健康を失います。
Q6. 成功しているビジネスリーダーに短眠の人はいませんか?
A. 一部は存在しますが例外的です。ジェフ・ベゾスは「8時間睡眠が最良の意思決定を導く」と公言しており、成果を出す人ほど睡眠を戦略資本と考えています。
Q7. 睡眠不足でも即効性のある対策はありますか?
A. 20分以内の仮眠や朝の散歩、強い光を浴びることは即効性があります。セロトニンやBDNFを活性化し、一時的に集中力と俯瞰力を取り戻せます。ただし根本解決には7〜8時間の質の高い睡眠が必要です。
Q8. 睡眠を「経営資源」として活かす方法は?
A. 睡眠をKPI化することです。時間・深睡眠割合・中途覚醒を数値で管理し、会議や意思決定のタイミング調整に活用すれば、睡眠はビジネスの生産性を高める戦略資本になります。

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