余計に疲れる?「座ったまま眠る」ことの不利益-睡眠オタの専門的解説-

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座位での睡眠は、生理学的および運動学的な観点から見ると、複数の不利益を伴います。

これらの不利益は、呼吸、循環系、筋肉・関節の健康、および睡眠の質に影響を及ぼします。

ここで、より詳細な生理学的および運動学的な観点を含めて解説します。

呼吸(胸郭と腹壁の動き)

座位では、腹壁に加わる圧迫が胸郭の拡張を妨げ、特に下葉(肺の下部)の換気が低下します。これは、肺の効率的なガス交換に必要な腹式呼吸を制限し、結果的に呼吸が浅くなります。

循環系(静脈還流)

座位での長時間の静止は、下肢の静脈内圧の上昇を招き、静脈還流の効率を低下させます。これにより、下肢の血液が心臓に戻る速度が遅くなり、血栓の形成リスクが高まります。

特に長時間のフライトや車椅子での移動では、深部静脈血栓症(DVT)のリスクが顕著に増加します。

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筋肉と関節

長時間同じ姿勢でいると、特定の筋群に持続的な緊張がかかり、筋肉疲労や痛みを引き起こします。

同時に、関節が非自然な位置に留まることで、関節の圧迫や痛み、さらには関節の損傷のリスクも高まります。特に首、肩、腰に負担が集中しやすいです。

ここでは、特に影響を受けやすい筋肉群と関節について詳しく見ていきます。

筋肉の部位

  1. 首の筋肉: 座位では、頭を支えるために首の筋肉に緊張がかかります。特に、長時間同じ姿勢でいると、僧帽筋(特に上部)や頚椎前屈筋が過剰に働き、疲労や痛みの原因となります。
  2. 肩の筋肉: 肩甲骨周りの筋肉、特に肩甲挙筋や三角筋が緊張し、肩こりの原因となります。肩を前方に丸める姿勢はこれらの筋肉に負担をかけ、不快感を増加させます。
  3. 背中の筋肉: 長時間座っていると、背骨を支えるために背中の筋肉、特に長背筋が緊張します。これにより、背中の痛みや疲労感が生じることがあります。
  4. 腰の筋肉: 腰部周辺の筋肉、特に腸腰筋が座位で緊張し、腰痛の一因となります。座位は腰椎に負担をかけ、腰部の筋肉に継続的な緊張を強いることになります。

関節の部位

  1. 頚椎関節: 長時間の座位で頭を前に傾ける姿勢は、頚椎関節に負担をかけ、首の痛みや不快感を引き起こします。
  2. 肩関節: 座位で腕を前方に伸ばしていると、肩関節に緊張がかかります。これは、肩こりや関節痛の原因になり得ます。
  3. 脊椎関節: 脊椎全体、特に腰椎部分には、座位によって前方への圧力がかかり、脊椎の自然なカーブが変化することで、痛みや不快感を感じやすくなります。
  4. 股関節: 長時間の座位は股関節を曲げた状態に保持し、股関節とその周辺の筋肉に緊張をもたらします。特に、股関節の屈曲に関与する腸腰筋などが影響を受けやすいです。

座ったまま寝た場合の「睡眠の質」

座位での睡眠は、体が完全にリラックスすることを妨げ、深い睡眠段階への移行を阻害します。

特に深い睡眠段階(ノンレム睡眠のステージ3、4)の割合が減少します。それは、身体の修復や成長ホルモンの分泌に不可欠であり、この段階が不足すると、疲労回復、記憶の定着、免疫機能の維持などが妨げられます。

さらに、不安定な姿勢は睡眠中の頻繁な目覚めを引き起こし、睡眠の断片化を招きます。

脳内の血流変化

脳への血流と酸素供給

脳は体重のわずか2%程度ですが、全身の酸素消費量の約20%を使用します。このため、脳への血流は酸素と栄養素を供給するために極めて重要です。

座位での長時間の姿勢は、心臓から脳への血液の流れに影響を与える可能性があり、結果として脳の酸素と栄養素の供給が低下するリスクがあります。

代謝産物の除去

特に、頚部の圧迫や不自然な姿勢により、頸動脈や椎骨動脈を通る血流が制限されることがあります。脳の活動は代謝産物を生み出しますが、これらは正常に機能するために血流によって除去される必要があります。

長時間の座位の睡眠によって脳への血流が悪化すると、これらの代謝産物の除去が遅れ、脳内での蓄積が生じる可能性があります。このように頭部への血液の戻りが悪化すると、頭痛や偏頭痛の原因にもなり得ます。

認知機能への影響

睡眠は、脳の健康と密接に関連しています。特に、深い睡眠は記憶の整理や学習の定着に不可欠であり、睡眠の質の低下は認知機能の低下を引き起こす可能性があります

長期的には、座位での不適切な睡眠姿勢が続くことで、認知症やアルツハイマー病のリスクが高まる可能性があるとの研究結果もあります。

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睡眠時無呼吸症候群

座位での睡眠は、呼吸が浅くなる傾向にあり、特に肥満や呼吸器系の既往症がある人では、睡眠時無呼吸症候群(SAS)のリスクが高まる可能性があります。

SASは、睡眠中の繰り返し呼吸停止により、睡眠の質が著しく低下し、日中の過度の眠気や長期的には心血管疾患のリスクが高まるとされています。

医療的な視点からの対策

筋肉や関節への負担を軽減するためには、定期的に姿勢を変える、適切なサポートを使用して体を正しい位置に保つストレッチや適度な運動を取り入れることが重要です。また、長時間座位での睡眠は避け、可能な限り横になって休むことが推奨されます。

また、睡眠の質を向上させるために、一定の睡眠環境を整える、睡眠前のリラクゼーションを心がける、カフェインやアルコールの摂取を控えるなどの生活管理の工夫が有効です。

また、適度な運動を取り入れることで血流を促進し、脳への酸素と栄養素の供給を改善することができます。

睡眠は基本減点法です。少しずつ改善し、少しでも良い睡眠を体感してください。

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