
この記事を書いたのは
睡眠オタクな作業療法士 石垣貴康です。
医療現場で延べ3万人以上の睡眠と身体の悩みに向き合い、現在は三重県で「眠りのコツ研究所」と「Totonoe-整-」を運営しています。
国家資格である作業療法士として、姿勢や動作の専門知識をもとに、科学的かつ実践的な睡眠改善を提案しています。専門職の育成や技術指導にも携わっています。
ブログ以外にも、書籍出版や講演、教育機関での授業など、睡眠のことをお伝えしています。
本ブログでは、医学的根拠と臨床経験に基づいた“リアルに使える睡眠情報”を、誰にでもわかりやすく、かつ深掘りしてお届けしています。
日本では、母親が夫の帰宅を待つ間に乳幼児の就寝時間が遅れることがよく見られます。
これは私自身子育てする中でよくら耳にするのですが、みなさんいかがでしょうか?
一見、家庭内の自然な出来事のように思えますが、これが子どもの成長や発達にどれほどの影響を与えるかについて考えたことはあるでしょうか?
この記事では、乳幼児の睡眠が遅れるリスクとその科学的根拠、さらに具体的な対策について解説します。

目次
乳幼児の就寝時間が遅くなる4つのリスクと科学的根拠
1. 成長ホルモンの分泌低下
乳幼児の成長ホルモンは、深い睡眠(ノンレム睡眠)の間に主に分泌されます。
成長ホルモンは骨や筋肉の成長だけでなく、免疫系の発達にも関与します。
研究によると、成長ホルモンの分泌ピークは就寝後30分から2時間の間であり、特に夜22時から深夜2時の間に多く分泌されることがわかっています(参考文献: Takahashi et al., 2016)。
しかし、就寝時間が遅くなると、このピークタイムがずれたり、短くなったりするため、成長ホルモンの分泌量が減少します。
そのため、私は時間帯よりも睡眠の質の方が大切だと考えております。
睡眠不足が長期間続くと、身長や筋肉発達の遅れ、免疫力低下のリスクが増大する可能性があります。
2. 脳の発達への影響
睡眠は脳の発達にとって不可欠です。ノンレム睡眠中にはシナプスの刈り込み(synaptic pruning)が行われ、重要な記憶が整理され、不要な情報が削除されます。
また、レム睡眠中には創造性や感情の処理が進むとされています(参考文献: Walker, 2017)。
乳幼児期は、脳が急速に発達する時期であり、十分な睡眠が必要不可欠です。
睡眠不足により、学習能力や情緒の安定に悪影響を及ぼす可能性があることが、数多くの研究で示されています(参考文献: Mindell & Owens, 2015)。
3. 生活リズム(概日リズム)の乱れ
人間の体内時計(概日リズム)は、視交叉上核(Suprachiasmatic Nucleus)と呼ばれる脳の部位によって制御されています。
このリズムは、規則正しい就寝・起床時間によって安定します。
しかし、乳幼児の就寝時間が遅れると、体内時計が乱れ、日中の眠気や活動性の低下を引き起こす可能性があります。
さらに、不規則な睡眠スケジュールはメラトニンの分泌異常を引き起こし、入眠がさらに難しくなる悪循環を生むことも報告されています(参考文献: Crowley et al., 2007)。
4. 肥満リスクの増加
睡眠不足がホルモンバランスに与える影響として、食欲を抑えるレプチンと、食欲を促進するグレリンの分泌異常が挙げられます。
これにより、過食や不健康な食生活につながりやすくなることが報告されています(参考文献: Spiegel et al., 2004)。
特に、夜遅くまで起きていると、夜間に高カロリーのスナックを摂取する機会が増える傾向があります。乳幼児にとっても、この生活リズムの乱れが将来的な肥満リスクを高める要因となります。

乳幼児の睡眠リズムを守る具体策
1. 子どもの就寝時間を最優先する
家族全員の団欒を維持しつつ、子どもの固定の就寝時間を設定することが重要です。
例えば、19時から20時に就寝するスケジュールを守り、父親の帰宅後には短時間の絵本の読み聞かせなど静かな活動を取り入れることが効果的です。
2. 夫婦間での協力
母親が一人で負担を抱えないよう、夫婦間で役割を分担することが重要です。
例えば、父親が早朝に子どもと交流するなど、別の時間帯で家族団欒を工夫する方法もあります。
3. 睡眠前のルーティンを確立
一定のルーティンを持つことで、子どもの体内時計を安定させることができます。例として、以下のような流れが効果的です。
- 18:00:夕食
- 19:00:入浴
- 19:30:絵本の読み聞かせ
- 20:00:就寝
4. 母親自身のストレスケア
母親が夫の帰宅を待つ心理的要因を理解し、それに対処する工夫も大切です。
例えば、日中に夫婦でコミュニケーションを取る手段を増やすことで、夜の負担を軽減できます。

遅寝の乳幼児は“朝の行動”にも影響が出る
👀 朝の覚醒反応にも悪影響が?
乳幼児が夜遅くに寝ると、翌朝の目覚めも不安定になりやすくなります。
睡眠と覚醒のリズムは一対であり、夜遅くまで起きていると朝の「コルチゾール分泌リズム」にズレが生じます。
結果として「朝起きられない」「朝食を食べない」「保育園での活動が不活発になる」といった問題が生じやすくなります。
朝の覚醒がうまくいかないと、生活全体が乱れる原因にもなります。
まとめ
乳幼児の睡眠時間が遅れることは、成長ホルモン分泌の低下や脳の発達への悪影響、生活リズムの乱れ、肥満リスクの増加といった多くのリスクを引き起こします。
しかし、家族全員が子どもの健康を最優先に考えることで、これらのリスクを軽減することが可能です。
科学的根拠を基に、適切な睡眠習慣を築くことで、乳幼児の健やかな成長をサポートしましょう。
▼気になる記事5選▼
👶 よくある質問:乳幼児の理想の就寝時間は何時?
専門機関や研究の多くでは、乳幼児(1〜3歳)の就寝時間は19時〜20時が理想的とされています。
国立成育医療研究センターなどの報告でも、夜21時以降の入眠は「成長・発達に悪影響が出やすい」という指摘があります。
就寝が22時を過ぎる子どもは、発達遅延や情緒不安のリスクが高まる傾向もあるため、早寝の習慣づけが重要です。
「よくある実例:なぜ寝かせるのが遅くなるのか?」
🕗 子どもの就寝が遅れる“リアルな理由”とは?
- 夫の帰宅時間が遅く、「家族そろって食事・お風呂・遊び」を優先する
- 子どもが昼寝を長くしてしまい、夜に眠くならない
- 母親のSNSやスマホ時間が長く、入眠のタイミングを逃す
- テレビや動画視聴で脳が覚醒してしまう
- 兄弟がいる場合、上の子の就寝に引きずられてしまう
こうした日常的な背景が、「就寝リズムのずれ」を生むきっかけになっています。
対策としては、「家庭の流れ」を一度見直し、子ども優先のタイムテーブルを設計することが大切です。
追記:「簡易チェックリスト&診断つき」
📝 チェック!あなたのお子さんの睡眠リズム、大丈夫?
以下の項目に3つ以上当てはまったら注意が必要です。
- 平日の就寝時間が21時以降になっている
- 土日に1時間以上遅く寝る・起きる習慣がある
- 朝起きたときに機嫌が悪く、ぼーっとしている
- 朝食を食べない・または食べる時間がない
- 日中の活動中にあくびが多い・ぼーっとする
- 昼寝に3時間以上かかっている
- 夜中に何度も起きる習慣がある
✅ 3つ以上当てはまる場合は、就寝時間の見直し・生活リズムの調整が必要です!
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参考文献
- Takahashi Y, et al. (2016). Growth Hormone and Sleep: Clinical Implications.
- Walker, M. (2017). Why We Sleep.
- Mindell JA, Owens JA. (2015). A Clinical Guide to Pediatric Sleep.
- Crowley SJ, et al. (2007). Sleep and Circadian Rhythms in Children.
- Spiegel K, et al. (2004). Sleep Loss and Hormonal Regulation of Appetite.