脳梗塞後遺症で片麻痺になった方の多くが、「元に戻りたい」と願いながら、様々な方法を模索しています。
その中で、機能回復を目指す方にとって見落としがちな重要な要素の一つが「睡眠」です。
本記事では、科学的根拠に基づき、睡眠が脳の回復とリハビリにどのように影響を与えるかを解説します。
目次
睡眠と脳の回復の関係性
神経可塑性(Neuroplasticity)と睡眠
脳梗塞後の脳は損傷を受けていますが、神経可塑性という性質により、新たな神経経路を形成して機能を補完します。
研究では、睡眠がこの神経可塑性を最大限に発揮させることが示されています。
- 深い睡眠(徐波睡眠):シナプスが再構築され、神経回路が強化されることが明らかになっています(Xie et al., Science, 2013)。
- レム睡眠:運動学習や記憶の定着に必要不可欠であり、リハビリで学んだ新しい動作が脳にしっかりと刻み込まれます(Walker & Stickgold, Nature Reviews Neuroscience, 2006)。
脳の代謝廃棄物の除去
深い睡眠中、脳内ではグリンパティックシステム(脳の排出システム)が活発になります。
このシステムは、脳梗塞で損傷した神経細胞から発生する毒素や老廃物を除去します(Iliff et al., Science Translational Medicine, 2012)。
睡眠不足が回復を妨げる理由
1. 免疫系への悪影響
睡眠不足は炎症性サイトカイン(IL-6やTNF-αなど)の分泌を増加させ、脳の炎症を悪化させることが分かっています(Irwin et al., Brain, Behavior, and Immunity, 2010)。これにより、神経回路の再構築が妨げられます。
2. 神経可塑性の低下
睡眠が不足すると、神経のシナプス形成を促進するBDNF(脳由来神経栄養因子)の分泌が低下します。
BDNFは、新しい神経回路を形成する上で重要な役割を果たしています(Raven et al., Frontiers in Neuroscience, 2018)。
3. 成長ホルモン分泌の減少
深い睡眠中に分泌される成長ホルモンは、筋肉や骨、皮膚などの組織修復を助けます。
このホルモンが不足すると、筋力回復や動作の改善が遅れる可能性があります(Van Cauter et al., Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism, 2000)。
リハビリ効果を最大化する睡眠術
1. 規則正しい睡眠リズムを保つ
体内時計(サーカディアンリズム)の乱れは、睡眠の質を低下させます。毎日同じ時間に就寝・起床することで、体内時計が安定し、質の高い睡眠を得られます。
研究例:定期的な睡眠リズムを持つ人は、不規則なリズムを持つ人に比べて、認知機能と回復力が向上することが示されています(Czeisler et al., New England Journal of Medicine, 1999)。
2. 適切な睡眠環境を整える
- 寝室の温度:18~22℃、湿度:50~60%
- 光を遮るための遮光カーテンを使用し、静かな環境を整えましょう。
- 機能レベルや体格に合ったパーソナライズ化された寝具
3. 睡眠をサポートする日中の行動
- 適度な運動:リハビリとして行う運動は、夜の深い睡眠を促進します(Kovacevic et al., Journal of Rehabilitation Research and Development, 2015)。
- カフェイン摂取を控える:午後以降のカフェインは、睡眠を妨げる可能性があります。
片麻痺者が見落としがちな「昼寝」の活用法
短時間の昼寝は、脳の疲労回復と集中力の向上に役立ちます(Mednick et al., Nature Neuroscience, 2002)。
ただし、60分以上の昼寝と夕方のうたた寝は、夜の睡眠に悪影響を及ぼす可能性があるため、かなり注意が必要です。
まとめ:睡眠が回復への近道に!
片麻痺の機能回復には、リハビリだけでなく、質の高い睡眠が不可欠です。
睡眠を見直すことで、脳の修復、神経回路の再構築、筋力回復など、多くのメリットが得られます。
ただリハビリするだけで終わらず、日中の過ごし方や睡眠環境を整え、リハビリ効果を最大化させましょう!
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