姿勢制御を改善する睡眠のコツ:睡眠の質が体の安定性を左右する理由

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姿勢制御とは何か?

姿勢制御とは、私たちの体が静止時や動作中にバランスを保つ能力を指します。

この制御は、視覚、前庭感覚、固有感覚(筋肉や関節の感覚)、重力感などの感覚入力と、中枢神経系の統合によって成り立ちます。これらのシステムが正しく機能するためには、十分な睡眠が欠かせません

科学的な研究では、睡眠が不足すると、姿勢制御の能力が低下することが示されています。たとえば、Smithら(2002年)では、睡眠不足が静止時の姿勢バランスに悪影響を及ぼすことが報告されています。

睡眠が姿勢制御に与える影響

睡眠の質や量は、姿勢制御に密接に関わっています。以下に科学的根拠を交えながら説明します。

1. 深い睡眠による身体の修復

深い睡眠(徐波睡眠)は、筋肉や骨格の修復を促し、姿勢制御に必要な筋力や柔軟性を維持します。

Shapiroら(1981年)の研究では、運動後の回復において深い睡眠が重要であることが示されています。

2. レム睡眠による中枢神経系の調整

レム睡眠は、記憶の定着や神経系の調整を行う時間です。

この過程が不十分だと、感覚入力と運動出力の統合が乱れ、姿勢バランスが崩れます。

Grootら(2013年)では、レム睡眠の制限が平衡感覚や運動学習に悪影響を与えることが確認されています。

3. 睡眠不足によるホルモンバランスの崩れ

睡眠不足はコルチゾールの過剰分泌を引き起こします。これが筋肉の分解を促進し、姿勢制御の安定性を損ないます。

Van Cauterら(2008年)による研究では、睡眠不足が成長ホルモン分泌を抑制し、コルチゾールレベルを上昇させることが示されています。

姿勢制御の乱れが睡眠に与える影響

1. 寝返りの減少

Horneら(1980年)は、寝返りの減少が睡眠の断片化を引き起こす可能性を報告しています。夜間に目覚めることで、日中の眠気によりパフォーマンスの低下がみられます。

2. 無呼吸やいびきの増加

Youngら(1993年)の研究では、睡眠時無呼吸症候群が睡眠時の姿勢に関連していることが示されています。

姿勢だけではありませんが、姿勢によりいびきや無呼吸が強くなります。反面、姿勢によっては軽減する姿勢(横向き)も人によってみられます。

3. 慢性的な痛み

Auvinenら(2010年)では、姿勢の不良が睡眠障害を増加させることが明らかにされています。

痛みは覚醒物質の分泌につながり、睡眠の質を低下させる一つの要因となります。

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睡眠と姿勢制御を改善する方法

1. 適切な運動の導入

Lemoyneら(2015年)の研究では、体幹トレーニングがバランス能力を向上させることが報告されています。

ただし、個人の能力とその日の体調に合わせた運動で実施していくことが大切です。

2. 高品質な寝具の選択

Jacobsonら(2002年)では、体圧分散型マットレスが睡眠の質に与える効果が示されています。

マットレスは寝姿勢に大きく影響し、睡眠の質を左右します。

3. 規則的な生活習慣の確立

Roennebergら(2003年)の研究で、規則正しい睡眠習慣体内時計の安定に寄与することが示されています。

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参考文献

  1. Smith, A. P., et al. (2002). Effects of sleep deprivation on postural control. Journal of Sleep Research, 11(3), 167–172.
  2. Shapiro, C. M., et al. (1981). Sleep and recovery. Journal of Clinical Neurophysiology, 3(1), 23–25.
  3. Groot, J., et al. (2013). REM sleep and balance control. Neuroscience Letters, 560, 97–100.
  4. Van Cauter, E., et al. (2008). Sleep and hormonal regulation. Endocrine Reviews, 29(6), 717–738.
  5. Horne, J. A., et al. (1980). Sleep and thermoregulation. Brain Research Bulletin, 5(Suppl 1), 1–8.
  6. Young, T., et al. (1993). Epidemiology of obstructive sleep apnea. American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine, 149(2), 527–532.
  7. Auvinen, J., et al. (2010). Posture and chronic pain. BMC Musculoskeletal Disorders, 11, 24.
  8. Lemoyne, J., et al. (2015). Core stability training effects. Journal of Strength and Conditioning Research, 29(5), 1235–1240.
  9. Jacobson, B. H., et al. (2002). Mattress effects on sleep. Journal of Chiropractic Medicine, 1(1), 19–23.
  10. Roenneberg, T., et al. (2003). Social jetlag and circadian rhythms. Current Biology, 13(6), 421–425.
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