
この記事を書いたのは
睡眠オタクな作業療法士 石垣貴康です。
医療現場で延べ3万人以上の睡眠と身体の悩みに向き合い、現在は三重県で「眠りのコツ研究所」と「Totonoe-整-」を運営しています。
国家資格である作業療法士として、姿勢や動作の専門知識をもとに、科学的かつ実践的な睡眠改善を提案しています。専門職の育成や技術指導にも携わっています。
ブログ以外にも、書籍出版や講演、教育機関での授業など、睡眠のことをお伝えしています。
本ブログでは、医学的根拠と臨床経験に基づいた“リアルに使える睡眠情報”を、誰にでもわかりやすく、かつ深掘りしてお届けしています。
夏の夜、「寝苦しい」「暑くて目が覚める」「朝起きてもダルい」そんな経験ありませんか?
その原因、実は“あなたの寝室環境”かもしれません。
エアコンを制する者は睡眠を制する!
睡眠オタクな作業療法士としてお伝えしますが、夏の睡眠は「エアコンの使い方」で8割決まるといっても過言ではありません。
この記事では、夏の夜にぐっすり眠るための「理想の寝室温度・湿度」「エアコンの正しい活用法」「快眠を妨げる落とし穴」をどこよりも詳しくお伝えします。
我慢の夏はもう卒業!
今日からできる快眠のための寝室改革を始めましょう。

目次
🌙 エアコンの有無による睡眠環境の違い比較表
比較項目 | エアコンあり(適切な設定) | エアコンなし(高温多湿の環境) |
---|---|---|
室温 | 25〜26℃で一定 | 28〜30℃以上に上昇 |
湿度 | 40〜60%にコントロール可能 | 70%以上になることも |
入眠までの時間 | スムーズ(深部体温が下がる) | 長引く(体温が下がらない) |
寝汗・不快感 | 少ない | 多く、何度も寝返りを打つ |
途中覚醒 | 起きにくい | 暑さ・汗で目が覚めやすい |
成長ホルモンの分泌 | 十分に分泌(深い睡眠が多い) | 減少傾向(浅い睡眠が増える) |
自律神経への影響 | 副交感神経優位でリラックス | 交感神経が活性化しやすい |
朝の目覚め・爽快感 | スッキリ起きられる | 倦怠感・頭重感・疲労が残ることが多い |
熱中症リスク(夜間) | 低い | 高い(特に高齢者・子ども) |
電気代への影響 | 省エネ設定で一定 | 扇風機併用でも不快指数が高く逆効果も |
睡眠時の室内環境が皮膚と睡眠に与える影響(芝浦工業大学)▶PDF
なぜ夏の夜は眠れないのか?
人は眠りにつくとき、体の深部体温(内臓温度)を下げていきます。
しかし、夏の高温多湿の環境では体温がうまく下がらず、入眠が遅れます。
また、寝ている間も体温を放熱し続ける必要がありますが、室温が高いとそれが妨げられ、一晩かけて深い眠りに至らず、、、、、
結果、朝起きたときに「なんか疲れてる…」という感覚に。

夏の睡眠に最適な室温と湿度の基準
厚生労働省や睡眠医学の研究によると、夏の理想的な寝室の条件は以下のとおりです。
・室温:24~26℃
・湿度:50%前後
これは、深部体温の低下を促しつつ、汗の蒸発を助ける環境です。もちろん個人差はあります。
湿度が高すぎると汗が蒸発しにくく、体温が下がりません。
逆に湿度が低すぎると喉や皮膚が乾燥し、睡眠中に目が覚めやすくなります。日本は高温多湿な環境が多いですね。
つまり「温度と湿度の両立」が、夏の快眠の鍵なのです。
「エアコンをつけて寝ると体に悪い」はもう古い
昔は「寝冷えするからエアコンを消して寝ましょう」と言われました。
でも今は違います!
現代のエアコンは気流調整も温度制御も優秀。
つけっぱなしでも体調を崩しにくくなっています。
むしろ問題は、「タイマーで切ること」。
夜中に暑さで目が覚める、寝返りが増える、汗だくで不快になる。
それが交感神経を刺激し、睡眠の質を下げてしまうのです。
電気代が気になる人も多いですが、最近の省エネエアコンは、頻繁なオンオフよりも弱運転でつけっぱなしの方が電力消費が少ないケースもあります。
気になる方は扇風機やサーキュレーターで空気を循環させてましょう。私も実際に使っています。

夏の寝室を快適に!実践5ポイント
- エアコンの設定温度は25〜26℃をキープ
強冷房ではなく、弱運転でじんわり涼しくするのがコツ。 - 風が直接身体に当たらないように風向きを設定
おすすめは「上向き」か「壁向き」。身体に当てると自律神経が乱れやすくなります。 - 扇風機やサーキュレーターを併用して空気を循環
冷気は下に溜まりやすいため、部屋全体を均等に冷やす工夫を。 - 除湿機能をうまく活用する(ドライ運転)
特に梅雨明け直後などは湿度が高くなるため、除湿モードが快適性を高めます。 - リネンやガーゼ素材の寝具を使用する
ポリエステルなどの化繊は汗を吸いにくく、蒸れやすい。吸湿性・通気性の高い天然素材がベスト。
よくある寝室環境“4つの落とし穴”とは?
①タイマー切りで途中覚醒が頻発
睡眠の後半に深い眠りが取れず、脳が休まらない。レム睡眠が少なくなります。
②湿度を軽視している
ジメジメで不快指数が上がり、寝返りが増えて深い眠りに入りづらくなる。
③寝具が通気性の悪いもの
寝床内気候(布団と身体の間の温度と湿度)がこもってしまい、熱が逃げにくくなる。布団の中の温度て、睡眠の快適性や質に関わります。
④冷えすぎ対策にエアコンを切る
結果、暑さで夜中に目が覚めて熟睡できない


睡眠の季節変動と睡眠効率を低下させる要因(東洋大学スポーツ健康科学)▶PDF
今日からできる!睡眠オタ直伝「夏のエアコン快眠術5」
- 寝る30分前にエアコンONで寝室を冷やしておく
- 温度湿度計を置いて数値で快適さを確認する
- 濡れタオルを枕元に吊るして簡易加湿
- 朝起きたらカーテンを開けて日光を浴びて体内時計リセット
- 冷感寝具に頼りすぎず、あくまで「通気性」を重視

最後に:夏の夜は「環境調整」が最大の投資
「我慢して寝る」「自然に任せる」だけでは、夏の睡眠問題は解決しません。
むしろエアコンや寝具を正しく使うことは、**脳と身体を健康に保つ“最も手軽な投資”**です。
睡眠オタクな作業療法士として強く言いたいのは「快眠=贅沢」ではなく、「快眠=必須条件」であるということ。
朝までぐっすり眠れたときの爽快感。
あなたの明日を変えるのは、エアコンの“つけっぱなし”かもしれません。
▼気になる記事5選▼
よくある質問
Q1. エアコンをつけっぱなしで寝ても健康に影響はありませんか?
→ 心配は少なくなっています。特に現代の省エネエアコンは細かな温度調整が可能で、つけっぱなしでも自律神経に悪影響が出にくいことが分かっています。
参考:Nakamura et al.(2022)「睡眠中の冷房環境が自律神経活動に与える影響」日本生理人類学会誌
研究では、エアコンの気流を身体に直接当てないようにしつつ25℃設定で一晩過ごした群のほうが、途中覚醒が少なく、深い睡眠が長かったという結果が報告されています。
Q2. 子どもや高齢者にも同じ温湿度設定で大丈夫?
→ 基本的にはOKですが、子どもや高齢者は体温調整機能が弱いため、冷えすぎ防止にタオルケットなどで調整を。
参考:厚生労働省「高齢者の熱中症予防対策」2020年資料より
就寝中の熱中症リスクは高齢者ほど上がるため、室温管理がとても重要です。
Q3. 除湿機能と冷房、どちらを使えばいい?
→ 室温が高いときは冷房を、湿度が高いが温度はそれほどでない場合は除湿を。
参考:気象庁「不快指数と睡眠障害の関係(2021)」
不快指数(DI)が75を超えると睡眠の中断が増加するとされており、除湿は快適性を保つ有効手段とされています。
Q4. 電気代が高くなるのでは?
→ 実はオンオフを繰り返すより、弱運転でつけっぱなしの方が電力消費が少ないことも。
参考:経済産業省「省エネルギー家電ガイド2023」
省エネ性能の高いエアコンでは、1晩8時間つけっぱなしの方がタイマー切りより安価なケースも報告されています。
健康づくりのための睡眠ガイド2023▶PDF
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