
この記事を書いたのは
睡眠オタクな作業療法士 石垣貴康です。
医療現場で延べ3万人以上の睡眠と身体の悩みに向き合い、現在は三重県で「眠りのコツ研究所」と「Totonoe-整-」を運営しています。国家資格である作業療法士として、姿勢や動作の専門知識をもとに、科学的かつ実践的な睡眠改善を提案しています。専門職の育成や技術指導にも携わっています。
本ブログでは、医学的根拠と臨床経験に基づいた“リアルに使える睡眠情報”を、誰にでもわかりやすく、かつ深掘りしてお届けしています。
目次
👃まだ鼻がかめない子に「鼻水吸引器」は必要?
鼻水はウイルスや細菌を外に出そうとする体の防衛反応です。
しかし、まだ自分で鼻をかむことができない赤ちゃんや幼児にとって、鼻水が詰まると息がしづらくなり、ミルクや睡眠にも悪影響が出ます。
そんな時に役立つのが【電動鼻水吸引器】。
家庭でも簡単に使えるとして注目されています。
今回我が家で使い方を間違えていたので、ぜひみなさんにも知っていただきたいと思い、記事に仕上げました。

❌間違った使い方は危険!鼻中隔を傷つけるリスク
NG3ポイント
- 細いノズルを奥まで入れる
- 何秒も長時間吸引し続ける
- ノズルを縦に入れる
これらの使い方は、**鼻中隔(びちゅうかく)**という薄い軟骨部分を傷つけ、鼻の粘膜を痛める原因になります。
➡炎症が悪化すると、鼻血や慢性鼻炎にもつながります。

⏰正しい3つのタイミング
1⃣朝起きたとき:夜間の鼻水が溜まっているため
背景となる理由
- 夜間は副交感神経が優位になり、鼻腺の分泌が増えやすいため、鼻水が溜まりやすくなる
- 寝ている間は体を動かさないため、鼻水の排出がうまくいかず、鼻腔に貯留
- 乳幼児は自力でかめないため、起床時には呼吸を妨げるほど溜まっていることも
目的
- 朝一番の吸引で呼吸を確保し、機嫌や食事への影響を減らす
- 鼻詰まりがあると哺乳・朝食・登園準備にも支障が出るため、生活リズムの確立にも重要
2⃣お風呂上がり:蒸気で鼻水がやわらかくなって取りやすい
背景となる理由
- お風呂の蒸気や温熱によって、粘性の高い鼻水がやわらかくなる
- 温熱刺激により鼻粘膜の血流が一時的に改善し、吸引後の回復も早くなる
- 実際に耳鼻科では「吸引前に蒸しタオルで温める」指導が行われることもある
目的
- 粘稠(ねんちゅう)性鼻汁(ドロッとした鼻水)を無理なく吸引し、粘膜損傷のリスクを減らす
- 吸引効率が上がることで、手間や時間も短縮
3⃣寝る前:呼吸をスムーズにして睡眠の質を上げる
背景となる理由
- 鼻閉があると乳幼児は口呼吸になる
→これは浅い睡眠・覚醒・いびき・無呼吸の原因になる - 鼻詰まりのまま寝かせると、睡眠中に泣いたり起きたりしやすくなる
目的
- 鼻通りをよくして、スムーズな入眠と深い睡眠をサポート
- 特に成長ホルモンが分泌される22時〜2時の深い睡眠を妨げないようにすることが重要
📏吸引時間は「片方4秒以内」が目安
長時間の吸引はNG。片鼻あたり3~4秒以内でOKです。
「1回の吸引時間は3〜5秒以内を目安とし、長時間吸引は避ける」
(出典:American Academy of Pediatrics, Nasal suctioning Guidelines, 2021)
🔄ノズルは「横向き」が基本
鼻に対してノズルは横から沿わせるように入れましょう。縦方向に入れると奥に突き刺さる危険があります。
「ノズルは鼻腔の床に沿わせるように横向きに挿入するのが望ましい」
(出典:『小児鼻腔ケアマニュアル』福岡市立こども病院, 2020)
縦方向に無理に挿入すると、鼻中隔の粘膜損傷や出血のリスクが高まるとの報告も。
✅付属ノズルで十分!
「細いノズルの方が奥まで届いてよく取れる」と思いがちですが、それは逆効果。
奥まで入れすぎることで傷をつけてしまう可能性があります。
「市販品で付属以外の細いノズルを使用すると、過度に奥へ挿入され、鼻粘膜を損傷する危険性がある」
(出典:日本小児耳鼻咽喉科学会誌(2022)Vol.43 No.2)
特に1歳未満の乳児は鼻腔が非常に狭く、粘膜が敏感なため、付属品レベルの安全設計が優先されるべきと明記。

🛏️鼻詰まり→口呼吸→悪影響4点
鼻詰まりで口呼吸になると、以下のような睡眠への影響が出ます。
- いびきが増える
- 睡眠の質が低下する
- 夜中の覚醒が多くなる
- 朝の機嫌が悪い・不機嫌
そこで、「寝る前吸引」は最高のケアタイミング。
🌙寝る前ルーティン!吸引5STEP
- お風呂でしっかり湯気を吸わせて鼻水をやわらかく
- タオルで鼻周りを拭く
- 吸引器で片鼻ずつ4秒以内で吸引(横向きノズル)
- 鼻周辺をやさしく保湿(ワセリンなども◎)
- 頭を少し高くして寝かせる(枕調整)
💡豆知識:なぜ鼻水が多いと寝づらいの?
鼻づまりによる口呼吸は、睡眠時無呼吸のリスクを高めるだけでなく、深い睡眠(ノンレム睡眠)への移行を妨げます。
つまり、鼻の通りが悪いと、成長ホルモンの分泌が減りやすく、免疫力も下がりやすいのです。

📝まとめ:鼻水吸引は「タイミング」「やり方」「道具選び」がすべて!
ポイント | 内容 |
---|---|
最適タイミング | 朝・お風呂後・寝る前 |
使用時間 | 片鼻あたり4秒以内 |
吸引角度 | 横向きにノズルを入れる |
ノズル | 細すぎるものはNG、付属品で十分 |
睡眠への影響 | 鼻通りで睡眠の質が変わる |
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📚参考文献
- 日本小児科学会「小児の呼吸管理」
- 日本耳鼻咽喉科学会「鼻吸引の安全な使用方法」
- Sleep Health Journal 2022, “Nasal obstruction and pediatric sleep quality”
- 日本耳鼻咽喉科学会「乳幼児の鼻腔ケアに関する提言」
- Sleep Health, 2022; “Nasal obstruction and pediatric sleep quality”
- 小児耳鼻咽喉科マニュアル(南山堂)
- American Academy of Pediatrics: Guidelines on Nasal Suctioning (2021)