
この記事を書いたのは
睡眠オタクな作業療法士 石垣貴康です。
医療現場で延べ3万人以上の睡眠と身体の悩みに向き合い、現在は三重県で「眠りのコツ研究所」と「Totonoe-整-」を運営しています。
国家資格である作業療法士として、姿勢や動作の専門知識をもとに、科学的かつ実践的な睡眠改善を提案しています。専門職の育成や技術指導にも携わっています。
本ブログでは、医学的根拠と臨床経験に基づいた“リアルに使える睡眠情報”を、誰にでもわかりやすく、かつ深掘りしてお届けしています。
目次
🧠 中学生の不登校が増えている背景とは?
ここ数年で急増している「中学生の不登校」や「引きこもり」。
その背後には、学習や人間関係の問題だけでなく、生理的・社会的・心理的変化が複雑に絡み合っています。
とくに顕著なのが「中1の壁」。
小学校から中学校に進学するタイミングで、多くの子どもが環境の変化に適応できず、ストレスや疲労を抱え込みます。

🧱 中1の壁とは?
担任制から教科担任制へ、部活動やテストの開始、友人関係の再構築、通学時間の変化…
これらの連続した変化が、自律神経やホルモンバランスの乱れを引き起こし、心身の負荷となって現れやすくなります。
💡豆知識:中1で不登校になる割合
令和4年度の文部科学省データによると、中学1年生での不登校発生率は中学3年間で最も高く、約3.3%に達しています。

🔍 不登校と引きこもりの違いとは?段階的に理解しよう
「不登校」と「引きこもり」は同じではありません。
むしろ、状態の進行度に応じて支援の方法が大きく変わります。
📊 不登校・引きこもりの重症度ピラミッド
ステージ | 呼称 | 特徴 | 支援のポイント |
---|---|---|---|
レベル1 | 登校渋り | 行きたくないと感じるが、登校はしている | 心のケア、体調調整、保護者・教師の共感 |
レベル2 | 不登校(軽度) | 学校には行けないが、塾や外出はできる | 学びの場の柔軟な提案、外とのつながり維持 |
レベル3 | 不登校(中等度) | 外出が減り、家中心の生活。夜型やゲーム依存も | 生活リズムの再構築、心理支援、家庭内の役割 |
レベル4 | 引きこもり(重度) | 家族以外との接触が難しく、部屋にこもりがち。昼夜逆転・無気力 | 専門機関の介入、訪問支援、段階的な接触支援 |
💡豆知識:「不登校=悪いこと」ではない
「不登校」は、今の環境からの一時的な自己防衛。無理に戻すのではなく、“今の状態に合った関わり”が鍵です。
⏰ 思春期にズレる「体内時計」が問題の根底にある
思春期の子どもは、生物学的に体内時計が遅くなるようにできています。
夜眠くならず、朝起きられないのは「怠け」ではなく「脳の変化」によるものです。
🛌 睡眠リズムのズレが引き起こす「朝の機能低下」
起床困難・食欲不振・集中力の低下・無気力。これらが自己肯定感の低下につながり、不登校の引き金になることもあります。
💡豆知識:メラトニンのタイミングがズレる
思春期には睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌が通常より1〜2時間遅れます。
これは自然なことで、生活環境をそれに合わせて調整することが効果的です。

🤝 不登校を責めない、理解から始めるステップ
「朝起きない=怠け」と考えず、それが“えすおーえすのさいん”であると捉える視点が大切です。
👪 保護者ができる4つの対応策
・責めない声かけ
・夜のスマホ制限
・朝日を浴びさせる
・睡眠外来や支援機関の活用
💡豆知識:朝散歩は最高の体内時計リセット法
起床後1時間以内に15分程度の日光を浴びると、体内時計がリセットされ、睡眠リズムが整いやすくなります。

🏫 学校関係者に求められる視点
「遅刻=怠け」ではなく、睡眠と心のズレを前提にした支援が必要です。
時間の柔軟化や、別室対応も検討されるべきです。
🏢 学校ができる環境調整4
- 登校時間の緩和
- 保健室・別室登校の選択肢
- スクールカウンセラーの連携
- 睡眠教育の導入
💡豆知識:北欧では9時登校が一般化しつつある
思春期の体内時計に合わせ、学力・心の健康を向上させるために、登校時間の後ろ倒しが推奨されています。
🧩 不登校は「適応の一形態」であるという理解を
無理に戻そうとするより、「ズレたリズムを整えること」が根本的な解決に近づきます。
「戻す」ではなく、「整える」ことを優先しましょう。

✅ まとめ:不登校と睡眠・思春期変化の深い関係
・「中1の壁」がストレスの引き金に
・思春期は生理的に朝が弱い
・不登校と引きこもりには段階がある
・理解と支援の順序が大切
・整える支援が子どもを救う鍵
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📚 参考文献・エビデンス
・文部科学省『児童生徒の問題行動等調査』2023年度
・Carskadon MA et al. (1999). “Adolescent sleep patterns, circadian timing, and sleepiness.”
・Western Ontario University Sleep Lab, 2021年:思春期と体内時計の関係