考えすぎて眠れない人へ ― 脳が“守ろうとして壊す”夜の仕組み

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この記事を書いたのは

睡眠オタクな作業療法士 石垣貴康です。

医療現場で延べ3万人以上の睡眠と身体の悩みに向き合い、現在は三重県で「眠りのコツ研究所」と「Totonoe-整-」を運営しています。

国家資格である作業療法士として、姿勢や動作の専門知識をもとに、科学的かつ実践的な睡眠改善を提案しています。専門職の育成や技術指導にも携わっています。

ブログ以外にも、書籍出版や講演、教育機関での授業など、睡眠のことをお伝えしています。

本ブログでは、医学的根拠と臨床経験に基づいた“リアルに使える睡眠情報”を、誰にでもわかりやすく、かつ深掘りしてお届けしています。

【チェックテスト】あなたは“考えすぎ脳”かも?

  1. 布団に入ると今日の失敗ばかり思い出す
  2. 明日の予定が気になって眠れない
  3. 心配なことがあると夜が怖くなる
  4. SNSを寝る直前まで見てしまう
  5. 「寝なきゃ」と思うほど焦って眠れない

3つ以上当てはまったら“考えすぎ脳”の可能性大!

脳はなぜ「夜」に考えすぎるのか?

夜は外部からの刺激が減り、視覚・聴覚・触覚など五感の入力が少なくなる時間帯です。

すると、脳は“内面”に向かって動き出します。

これをデフォルトモードネットワーク(DMN)と呼びます。

DMNは、記憶の整理や感情の反芻に関わっており、

「なぜあんなこと言ったんだろう…」

「もし明日、うまくいかなかったら…」

といった“過去”と“未来”のシミュレーションを始めてしまいます。

とくにHSP傾向(敏感・繊細)の人や、ストレスがたまっている人ほど、この活動が強まりやすくなります。

💡豆知識:デフォルトモードネットワークは、創造的なアイデアが生まれるときにも活発になります。考えすぎ=悪ではなく、制御がカギです。

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考えすぎで眠れないと、脳と体はどうなる?

◎ 自律神経が夜に“交感神経優位”になってしまう

夜にリラックスすべき副交感神経が働かず、心拍数が上がり、呼吸は浅くなり、筋肉は緊張し続けます。

◎ 扁桃体が過活動になる

扁桃体は「危険!」を感知する警報装置。

過去の嫌な記憶を思い出すと、夜でも“戦う・逃げる”モードになります。

◎ 成長ホルモンやメラトニンが分泌されにくくなる

睡眠の質が落ち、肌や脳の修復が進まず、翌日にダメージが蓄積します。

💡豆知識:メラトニンは光の影響を強く受けます。

就寝前のスマホ光でも分泌が抑制され、結果的に“考えすぎやすい脳”になる可能性があります。

寝る前のSNSだけは絶対に避けましょう!!

脳が“守ろうとして壊す”夜のメカニズムとは

これは一種の防衛反応です。

「忘れたら危ない」

「次は失敗したくない」

という脳の善意による過剰警戒が、“考え続けること=安心”という誤った学習を生みます。

実際には、

  • 寝ないとミスが増える
  • 寝ないと記憶が定着しない
  • 寝ないと情緒が不安定になる にも関わらず、脳は“今すぐの安心”を優先してしまうのです。

💡豆知識:脳は「繰り返された行動」を“正解”と認識します。

つまり“夜に考えすぎる習慣”も、学習されてしまうのです。

夜考えすぎる人・考えすぎない人の違い

比較項目考えすぎる人考えすぎない人
脳の習慣「思考=安心」と誤学習している「休息=回復」と体が覚えている
自律神経夜でも交感神経が優位になりがち寝る前に副交感神経が優位になっている
情報の扱い方頭の中で反芻しがち紙に書き出す、話すなど外に出す習慣がある
感情の処理感情を抑え込んでいるか過剰反応している日中に処理している(例:運動・対話)
行動習慣寝る直前までスマホ・考え事夜はルーティン化され、脳が「考えないモード」に

💡豆知識:寝る前にリラックスできる人は、「考えることは明日でもできる」と脳が学習しています。

これは“眠ること”が大事だと心身が理解している証拠です。

今日からできる、考えすぎ脳へのアプローチ方法

🧘 思考を「紙」に出す(ジャーナリング)

寝る前に5分だけ、頭の中の不安や感情を紙に書くと、脳が「もう考えなくていい」と判断しやすくなります。

🛀  入浴のタイミングを見直す

寝る1〜2時間前の入浴は、副交感神経を刺激し、考えごとが減りやすくなります。

📱  スマホ断ちルールを設定する

「布団の上ではスマホ禁止」の環境を整えることで、DMNの暴走を防ぎます。

😌  “思考しない時間”を日中につくる

瞑想、ヨガ、散歩など、脳が「何も考えない練習」を日中に入れることが、夜の安心感につながります。

🧾 お役立ち豆知識まとめ
  • ✏️ ジャーナリングは手書きが効果的。感情の整理と外在化に優れる。
  • 🛁 ぬるま湯・15分の入浴で深部体温上昇 → その後の低下で入眠がスムーズに。
  • 📵 SNSやニュースアプリは扁桃体を刺激するため、入眠の妨げに。
  • 🧘 マインドフルネス瞑想は前頭前野を活性化し、「今」に集中する力を高める。
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まとめ:夜は「脳に考えさせない」が勝ち

夜は脳にとって、“過去と未来を旅する時間”ですが、それに付き合っていては睡眠の質が壊れます。

脳はあなたを守ろうとしているだけ。 けれど、「守る」は「眠れる」とは限らない

あなた自身が、「今は考えなくていい」と脳に教えることで、初めて本当の休息が訪れます。

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📚参考文献

  • Buckner, R. L., Andrews-Hanna, J. R., & Schacter, D. L. (2008). The brain’s default network. Annals of the New York Academy of Sciences.
  • Walker, M. (2017). Why We Sleep. Scribner.
  • McEwen, B. S. (2006). Protective and damaging effects of stress mediators. New England Journal of Medicine.
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