こんにちは、睡眠とリハビリテーションの専門家、作業療法士の石垣貴康です。
「夜中に何度も目が覚める」「長く寝たのに疲れが取れない」といった悩みは、単なる睡眠不足ではなく、医学的な問題が関係していることが多いです。この記事では、睡眠の質を高めるために必要な医学的知識と解決策を、専門家の視点で詳しく解説します。
目次
日本人成人の5人に1人が慢性的な不眠
厚生労働省が2022年に実施した「国民健康・栄養調査」によると、調査対象者の20.6%が「この1か月間で睡眠による休養が十分に取れていない」と回答しています。これは成人の5人に1人が慢性的な不眠状態にあることを示しており、睡眠障害は社会的にも大きな課題となっています。
呼吸と自律神経が睡眠に与える医学的影響
自律神経の役割
自律神経は、私たちが意識的に制御できない体の機能を司る神経で、以下の2つに分類されます。
- 交感神経:活動時に優位になる神経。心拍数を増加させ、血管を収縮させます。
- 副交感神経:休息時に優位になる神経。心拍数を抑え、血管を拡張させ、消化機能を促進します。
睡眠中は副交感神経が優位になる必要がありますが、浅い呼吸が続くと交感神経が優位に働き、体がリラックスできない状態になります。その結果、不眠や中途覚醒が引き起こされます。
呼吸の重要性
呼吸は自律神経に直接影響を与える唯一の手段です。深い呼吸をすることで、副交感神経が刺激され、心拍数が安定し、血管が拡張して血流が良くなります。これにより、体がリラックスした状態となり、質の高い睡眠が可能になります。
浅い呼吸が引き起こす医学的リスク
浅い呼吸は睡眠の質を低下させるだけでなく、以下のような健康リスクを高める可能性があります。
- 自律神経失調症:交感神経が過剰に優位になることで、体の調節機能が乱れます。
- 呼吸関連筋肉の凝り:横隔膜や肋間筋が硬直し、さらに呼吸が浅くなる悪循環を引き起こします。
- ホルモンバランスの乱れ:浅い睡眠では成長ホルモンの分泌が低下し、免疫機能や代謝に悪影響を及ぼします。
- 循環器疾患のリスク増加:交感神経の過活動が心臓血管系に負担をかけます。
寝具が睡眠中の呼吸に与える影響
枕の影響
市販の枕の中には、首を過度に前屈させるものがあり、気道が圧迫され呼吸が浅くなる原因となります。また、舌根沈下(舌の根元が気道を塞ぐ状態)が起こることで、無呼吸症候群のリスクも高まります。
推奨:気道を確保できる適切な高さの枕を選び、頭の角度を適切に保つものを使用しましょう。
マットレスの影響
硬すぎるマットレスや、反発力の強いウレタン素材のマットレスは、体圧が特定の部位に集中し、横隔膜や肋間筋への圧力が高まり、呼吸が浅くなる可能性があります。
推奨:体圧を均等に分散し、胸郭や横隔膜の動きを妨げないマットレスを選びましょう。
深い呼吸を促す日常的なトレーニング
医学的に推奨される腹式呼吸を習慣化することで、睡眠中の呼吸を深くし、副交感神経の働きを高めることができます。
腹式呼吸の方法(日本医師会推奨)
- 鼻からゆっくりと息を吸い、お腹を膨らませる感覚で空気を取り込む。
- 口からゆっくりと息を吐き、体内の悪いものを排出するイメージで。
- 吸う時間の倍の長さで息を吐き切る。
- 1日10~20回を目安に行う。
腹式呼吸は横隔膜を効率的に動かし、血流を改善するとともに、全身のリラクゼーション効果を高めます。
睡眠中の深い呼吸がもたらす医学的効果
- 酸素供給の効率化:血流が促進され、体内の酸素供給が改善されます。
- エネルギー代謝の活性化:ミトコンドリアの働きが活発になり、細胞の修復が進みます。
- 免疫機能の向上:深い眠りが免疫機能を高め、感染症の予防に寄与します。
専門家のまとめ
「何度も起きてしまう」「長く寝たのに疲れが取れない」という症状の多くは、睡眠中の呼吸や自律神経の乱れが原因です。適切な寝具選びや腹式呼吸の実践によって、質の高い睡眠を取り戻すことが可能です。
医学的知識に基づいたアプローチを活用し、日々の生活の中で睡眠環境を整えることが、健康的な毎日への第一歩となります。あなたも、今夜から呼吸を意識した睡眠改善を始めてみませんか?
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参考文献
- 厚生労働省「令和4年 国民健康・栄養調査」
- Good Sleep Media「深い呼吸が睡眠の質を高める」
- 日本成人病予防協会「浅い呼吸がもたらす健康リスク」
- 日本医師会「腹式呼吸のすすめ」
- Fujinkoron.jp「何度も起きてしまう睡眠問題の真実」
- 健康づくりのための睡眠ガイド2023
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