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脳波とは何か?その基本的なメカニズムを理解する
脳波(EEG: Electroencephalography)は、脳内のニューロン(神経細胞)の電気的活動を測定したものであり、脳の状態を反映する重要な指標です。
脳波の存在は、脳がどのように機能し、情報を処理し、内部の状態を調整しているかを理解する上で不可欠です。
本記事では、睡眠中の脳波について、その役割、存在理由、そして脳波が睡眠にどのように影響を与えるかを睡眠オタクな作業療法士として、お届けします。
脳波の役割とその存在理由
1. 神経細胞のコミュニケーション
脳波は、神経細胞(ニューロン)の活動から生じる電気的信号の集まりです。脳内のニューロンは電気的なインパルスを使って相互に情報を伝達しています。
ニューロンが活動する際に、電気的な変動が起こり、その変動が集団として大きなシグナルとなって頭皮上で検出されるのが脳波です。
脳波は、このようなニューロン間のコミュニケーションを視覚的に表現したものです。
2. 情報処理と同期化
脳は絶えず外部からの情報を処理し、内部での思考や感情の生成を行っています。脳波は、この情報処理の過程でニューロンの活動がどのように同期しているかを示します。
例えば、特定のタスクや意識の状態に応じて、脳内の異なる部位が特定の周波数帯域で同期的に活動します。この同期がうまくいくことで、効率的な情報処理が可能となります。
3. 脳の機能状態の指標
脳波は脳の機能状態を示す指標として機能します。例えば、アルファ波が出現する場合はリラックスした状態、ベータ波が出現する場合は集中している状態といったように、脳波のパターンは脳の状態を反映しています。
睡眠時にも、異なる睡眠段階ごとに異なる脳波が現れます。これにより、脳の活動がどのような状態にあるのか、どのような機能を果たしているのかを判断することができます。
4. 脳内のリズムとホメオスタシスの維持
脳波は脳内でのリズムを表現しています。これらのリズムは、脳の正常な機能を維持するために重要です。
例えば、睡眠と覚醒のリズム、注意とリラックスのリズムなどがあり、これらのリズムが乱れると、認知機能や健康に影響を及ぼすことがあります。
脳波は、脳が自らの状態を調整し、安定した状態(ホメオスタシス)を維持するために機能しています。
5. 脳の適応と学習
脳波は学習や記憶の形成においても重要な役割を果たします。特定の脳波パターンが、経験や学習に伴って変化することが知られています。
例えば、睡眠中に見られるスピンドルは、記憶の定着に関与しており、新しい情報を脳が処理し、長期記憶として保存するプロセスにおいて重要です。
睡眠中の脳波の種類と特徴
睡眠は大きく分けて**レム睡眠(REM: Rapid Eye Movement)とノンレム睡眠(NREM: Non-Rapid Eye Movement)**に分類されます。ノンレム睡眠はさらに4つのステージに分けられ、それぞれ異なる脳波パターンが見られます。
- ステージ1(NREM1)
- 周波数: 4~7 Hz(シータ波)
- 特徴: 眠り始めの浅い睡眠段階。筋肉がリラックスし、心拍数と呼吸がゆっくりになる。脳波は主にシータ波が見られます。
- ステージ2(NREM2)
- 周波数: 12~16 Hz(スピンドル)
- 特徴: 睡眠の軽い段階。スリープスピンドル(短時間の高周波活動)とK複合波(高振幅で急激に変動する波)が特徴です。この段階で脳は外部の刺激に対して反応が鈍くなります。
- ステージ3(NREM3)
- 周波数: 0.5~4 Hz(デルタ波)
- 特徴: 深い睡眠段階で、最も回復力のある睡眠。デルタ波と呼ばれる低周波で高振幅の脳波が支配的です。ここでは身体の修復や免疫機能の強化が行われます。
- レム睡眠(REM)
- 周波数: 12~30 Hz(ベータ波)
- 特徴: 活発な脳活動と急速眼球運動が特徴で、夢を見ることが多い。脳波は覚醒時に似たベータ波が見られますが、筋肉は完全に弛緩しています。
▼睡眠の各ステージについて▼
各脳波の役割
脳波は睡眠の各段階で異なる役割を果たしています。
- シータ波: NREM1で出現し、意識の切り替えを助け、深い睡眠への移行をサポートします。
- スピンドルとK複合波: NREM2で見られ、外部からの音や光などの刺激から脳を保護し、記憶の定着を促進します。
- デルタ波: NREM3での支配的な脳波であり、身体の修復、成長ホルモンの分泌、免疫機能の強化などに寄与します。
- ベータ波: レム睡眠中に出現し、夢を見ること、感情の処理、記憶の統合などに関与しています。
脳波の視方
脳波を視る際は、以下のポイントに注目します。
- 周波数と振幅: 各睡眠段階に対応する脳波の周波数と振幅を確認し、どの段階にいるかを特定します。
- スピンドルとK複合波の出現: NREM2の指標としてスリープスピンドルとK複合波が適切に出現しているかを確認します。
- デルタ波の割合: NREM3の深い睡眠がどれだけ持続しているかをデルタ波の割合で確認します。深い睡眠が十分でないと、身体の回復が不十分になる可能性があります。
- レム睡眠のパターン: レム睡眠が周期的に現れているかを確認し、脳が夢を見ている時期やその質を評価します。
▼脳波と寝姿勢について▼
脳波異常が示すリスクとその対策
脳波の異常は、睡眠障害や神経系の問題を示す可能性があります。
例えば、スピンドルやデルタ波の欠如は、深い睡眠が得られていないことを示し、長期的には免疫力の低下や心身の回復力の不足に繋がる恐れがあります。
こうしたリスクを早期に発見し、適切な対策を講じることが重要です。
睡眠時の脳波の測定方法とその重要性
脳波は、主にポリソムノグラフィー(PSG)という検査で測定されます。この検査は、睡眠障害の診断や治療において重要な情報を提供します。
不眠症、睡眠時無呼吸症候群、ナルコレプシーなどの診断において、脳波のパターンが決定的な役割を果たします。
まとめ:脳波から見る睡眠の質と健康管理
脳波は、睡眠の質を評価し、健康を管理するための重要な指標です。睡眠中の脳波の解析を通じて、脳の活動状態を理解し、必要な治療や生活習慣の改善を行うことで、より質の高い睡眠を得ることが可能になります。
脳波に異常が見られる場合には、専門家の診断を受け、適切な対策を講じることが健康維持の鍵となります。
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引用文献
- Rechtschaffen, A., & Kales, A. (1968). A manual of standardized terminology, techniques and scoring system for sleep stages of human subjects. US Government Printing Office, Washington DC.
- Berry, R. B., & Wagner, M. H. (2015). Sleep medicine pearls E-Book. Elsevier Health Sciences.
- Carskadon, M. A., & Dement, W. C. (2011). Normal human sleep: an overview. Principles and Practice of Sleep Medicine.
- 健康づくりのための睡眠ガイド2023