側臥位で夜寝ているときに、下側の肩が痛くなる

療法士向けの睡眠セミナーでいただいた質問に対する回答ブログになります。

はじめに

寝ているときの「肩の痛み」。まずは「なぜ痛くなるのか?」その原因を特定することが、改善式睡眠の第1ステップとして重要です。

その他のアプローチとして、枕やポジショニングなど環境面でより睡眠をサポートできる方法をこちらの記事でお伝えさせていただきます。

講座内でお伝えさせていただいている。睡眠の最適性(Optimal sleeping)を高めるために、個別性に対して適応しやすい環境を調整する。これが今回の記事の内容になってきます。

枕の選び方

  1. 高さ: 側臥位で寝る場合、首と頭を支え、首の自然なカーブを保持するのに十分な高さの枕を選びます。首と脊椎が一直線になる高さが理想的です。
  2. 素材: メモリーフォームやラテックスなど、体の形に合わせて変形し、適切なサポートを提供する素材の枕が推奨されます。これにより、圧力点が減少し、快適性が向上します。
  3. 形状: 肩への圧力を軽減するために、特に側臥位用に設計された枕を選ぶことが有効です。これらの枕はしばしば凹凸があり、体の形状によりよくフィットします。
凸凹のある枕は側臥位で頭の位置を高くできます

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ポジショニングのヒント

  1. マットレス: 寝返りが効率的に行えるか?によってマットレスの選び方も変わってきます。肩の痛みがでやすい場合、寝返りが効率的にとれ、努力が少ない方であれば、柔らかいマットレスの選択で圧力を和らげる可能性があります。柔らかすぎると体が沈み過ぎるので、注意ください。
  2. 追加の枕の使用: 抱き枕を使用することで、下側への荷重を減らし、圧力が集中することを避けることができます。血流の低下を防ぐことで、痛みや痺れの増強を防ぎます。
  3. 枕の位置: 頭と首だけでなく、肩の一部が枕に乗るようにします。これにより、寝返りのしづらさはありますが、下側の肩への圧力が軽減し、関節へのストレス軽減になります。

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注意

睡眠リハビリで提唱しているのは、「夜は結果」です。無意識でコントロールすることが難しいです。そのため、寝返りなど自分自身で意識的に調整することはできません

大事なのは「昼が原因」ということです。枕など個人の身体にできる合ったものを選択することで、夜の睡眠を快適に過ごしやすくすることが可能です。

「夜間の肩の痛み」はコントロールすることが難しいですが、軽減する方法をとり、少しでも快適な夜を過ごしましょう。

睡眠調節と痛みの知覚

  1. 中枢神経系の役割: 脳の視床下部は、睡眠と覚醒のサイクルを調節する主要な部位の一つです。視床下部は、体内の様々な生理的プロセスを調整するために、メラトニンやコルチゾールなどのホルモンの分泌を制御します。痛みの信号は、視床下部を含む脳のさまざまな部位に送られ、これらの生理的リズムに干渉します。
  2. 痛み信号の伝達: 痛みの感覚は、周辺神経系から中枢神経系へと伝達されます。この信号は脊髄を通り、最終的に脳の痛みを処理する領域に到達します。特に視床が痛みの信号をさらに大脳皮質や扁桃体などの領域に転送し、痛みの認識、情緒反応、注意の方向付けに影響を与えます。
  3. ストレス応答の活性化: 痛みは体をストレス状態に置き、交感神経系の活性化と副腎からのコルチゾールの放出を引き起こします。これらの反応は身体を「戦うか逃げるか」の状態に準備させますが、夜間には睡眠を妨げる要因となります。
  4. 睡眠ホルモンの影響: 睡眠に重要な役割を果たすメラトニンの分泌は、痛みやストレスによって抑制されることがあります。メラトニンは視床下部の近くにある松果体で生成され、睡眠周期の調節に関与しています。痛みやストレスによるメラトニン分泌の抑制は、入眠困難の一因となります。

このように、痛みは脳のさまざまな領域に影響を及ぼし、睡眠を調節する生理的プロセスを乱すことで、入眠困難を引き起こします。痛み管理の改善は、睡眠の質を向上させるために重要なステップです。

▼参考文献▼

  1. “Pain and sleep: breaking the cycle” by Finan PH, Goodin BR, Smith MT. (Journal of Pain, 2013):この論文は、痛みと睡眠障害の相互作用について詳細にレビューしています。特に、痛みが睡眠パターンを乱し、その結果として睡眠不足が痛みの感受性を高める悪循環について説明しています。
  2. “The association between pain and sleep in fibromyalgia” by Theadom A, Cropley M. (Sleep Medicine Reviews, 2008):線維筋痛症患者における痛みと睡眠の質の関係を探る研究で、痛みが睡眠サイクル、特に深い睡眠段階への移行を妨げることを発見しました。
  3. “Effects of sleep deprivation on pain and immune response in mice” by Alexandre C, Latremoliere A, Ferreira A, Miracca G, Yamamoto M, Scammell TE, Woolf CJ. (Sleep, 2017):睡眠剥奪がマウスの痛みの感受性と免疫反応に与える影響を調べた研究です。この研究は、睡眠不足が痛みの閾値を下げ、炎症反応を増加させることを示しています。

これらの研究は、痛みと睡眠の質の間に密接な関係があることを示しており、特に痛みが睡眠障害の一因となっていることを支持しています。痛み管理と睡眠改善の戦略を組み合わせることで、睡眠の質を向上させ、痛みを軽減することができる可能性があります。

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