
この記事を書いたのは
睡眠オタクな作業療法士 石垣貴康です。
医療現場で延3万人以上の睡眠と身体の悩みに向き合い、「動きと休息のすゝめ」をベースに、現在は「Totonoe-整-」を運営しています。
国家資格である作業療法士として、姿勢や動作の専門知識をもとに、科学的かつ実践的な睡眠改善を提案しています。専門職の育成や技術指導にも携わっています。
ブログ以外にも、書籍出版や講演、教育機関での授業など、睡眠のことをお伝えしています。
本ブログでは、医学的根拠と臨床経験に基づいた“リアルに使える睡眠情報”を、誰にでもわかりやすく、かつ深掘りしてお届けしています。
こんな悩み、ありませんか?
眠いのに、布団に入ると目が冴える。
疲れているはずなのに、頭だけがずっと動いている。
寝ても疲れが取れない。
マットレスや枕を変えたのに、思ったほど眠りが変わらない。
そんな経験はありませんか?
睡眠の話になると、よく言われるのは、
- 睡眠時間を確保しましょう
- 寝る前のスマホを控えましょう
- カフェインを減らしましょう
という話です。
もちろん、それは大切です。
でも、私はいつも思うことがあるんです、、、
それだけで睡眠を語るのは、ちょっと浅い。
いや、かなり浅い・・・・
そんなんで変わったら苦労しない・・・
なんでかというと、「睡眠は、単なる休息ではない」からなんです!
睡眠とは、脳と身体が環境への警戒を下ろし、自分自身を整え直す時間です。
もっと言えば、
睡眠とは「神経系と環境の関係性」です。
この記事では、睡眠オタクな作業療法士が、できるだけ分かりやすく解説していきます。

睡眠は「脳を止める時間」ではない
まず大前提として、睡眠中も脳は働いています。
睡眠は大きく分けると、NREM睡眠とREM睡眠に分かれます。
深いとか浅いとかいうやつです。
NREM睡眠(ノムレム睡眠)では、脳の活動がゆっくりと同期し、深い回復モードに入ります。
特に深睡眠では、デルタ波と呼ばれるゆっくりした脳波が中心になります。
一方、REM睡眠(レム睡眠)では、身体の筋肉は強く抑制されますが、脳はかなり活発に動いています。
夢を見やすいのも、このREM睡眠です。
つまり睡眠中の脳は、ただ休んでいるわけではありません。
- 記憶を整理する
- 感情を処理する
- 身体の状態を確認する
- 翌日の自分を作り直す
こうした働きをしています。
近年では、睡眠中に脳脊髄液の流れが変化し、脳内の老廃物除去に関わる可能性も報告されています。
だから私は、睡眠をこう捉えています。
睡眠とは、脳の停止ではなく、脳の再編集だと。

睡眠とは「世界との停戦」である
ここが今回の記事で一番大事なところです。
起きている間、私たちの脳はずっと世界を監視しています。
- 音
- 光
- 温度
- 人間関係
- 仕事
- 将来の不安
- 身体の痛み
脳はそれらを絶えず処理しながら、
「次に何が起きるか」
を予測しています。
神経科学では、脳は世界をそのまま受け取っているのではなく、常に予測しながら現実を理解していると考えられています。
これを予測処理、Predictive Processingと呼びます。
つまり、脳は未来予測の臓器です。
だから予測できないことが増えると、脳は疲れます。
不安が強い時に眠れないのは、脳がまだ未来を監視しているからです。
- 明日の仕事
- 人間関係
- お金
- 子どものこと
- 身体の不調
あーでもない、こーでもないという考え
脳がそれらを手放せない。
だから眠れない。
つまり不眠とは、単に「寝るのが下手」なのではありません。
神経系がまだ世界と戦っている状態とも言えます。
だから私は、睡眠をこう表現します。
睡眠とは、世界との停戦である。
脳が外界への警戒を少し下げ、
「今は少し無防備になっても大丈夫」
と判断した時、人は眠りに入ります。

睡眠講演はLINEで受付中
安心とは「気持ち」ではなく神経状態
「安心して眠る」
よく聞く言葉やないでしょうか?
でも、安心とは単なる気持ちではありません!
安心とは、神経系が防御を下げられる状態です。
安心している時、身体には変化が起きます。
- 呼吸が深くなる
- 呼気が長くなる
- 肩の力が抜ける
- 顎の緊張が緩む
- 胸郭が広がる
- 心拍が落ち着く
逆に、警戒している時はどうでしょう。
- 呼吸が浅くなる
- 首や肩に力が入る
- 奥歯を噛みしめる
- 胸郭が固まる
- お腹が緊張する
- 手足が冷える
この状態で、深く眠れるでしょうか?
無理です。
厳しく言います。
「寝なきゃ」と思っている時点で、もう神経系は戦っています。
気合いで副交感神経は上がりません。
根性で深睡眠は増えません。
必要なのは、神経系が防御を下げられる条件を整えることです。

快適性とは「柔らかさ」ではない
寝具の話になると、多くの人がこう考えます。
柔らかい方が気持ちいい。
ふわふわの方が快適。
包まれる感じがある方が眠れそう。
もちろん、寝た瞬間の気持ちよさは大切です。
不快な寝具では、そもそも覚醒します。
でも、ここで勘違いしてはいけません。
寝た瞬間に気持ちいいことと、一晩中よく眠れることは別です。
柔らかすぎる寝具で身体が沈み込みすぎると、寝返りのたびに脳と身体は余計な再計算を求められます。
- 骨盤が沈む
- 胸郭が潰れる
- 首が安定しない
- 呼吸が浅くなる
- 寝返りが重くなる
その状態は、本当に快適でしょうか?
睡眠オタの私は快適性をこう考えています。
快適性とは、神経系の予測負荷が低い状態。
つまり、脳が
- この支持なら大丈夫
- この姿勢なら呼吸できる
- この環境なら身体を預けられる
と判断できる状態です。
快適性とは、単なる柔らかさではありません!
脳と環境の摩擦が少ない状態です。

睡眠講演はLINEで受付中
枕やマットレスは「物」ではなく環境である
枕は、ただ頭を乗せる道具ではありません。
マットレスは、ただ身体を支える物ではありません。
神経科学的に見ると、寝具は、脳と環境の摩擦を減らす装置です。
人は単独で眠っているわけではありません。
- 重力
- 温度
- 湿度
- 光
- 音
- 空気
- 寝具
- 部屋
- 他者との関係
その全部と一緒に眠っています。
つまり睡眠は、個人の能力だけでは決まりません。
眠れない自分が悪い。
そう責める人がいます。
でも私は、それは違うと思っています。
もちろん生活習慣を整える努力は必要です。
ただし、眠れない背景には、神経系が環境に適応できていない問題があるかもしれません。
- 寝室が明るい
- 音が気になる
- 空気が重い
- 湿度が合わない
- 枕が合わない
- マットレスで寝返りしにくい
- 呼吸しづらい
ここまで読んでくださった方はわかると思いますが、こういう環境で「気合いで寝ろ」は、さすがに無理があります。
無理ゲーなんですよね。
▼オススメの記事▼
寝返りは「睡眠を邪魔する動き」ではない
寝返りが多いと睡眠が浅い。
そう思っている人は多いです。
たしかに、何度も目が覚めるほど寝返りが多い場合は、睡眠が乱れている可能性があります。
でも、寝返りそのものは悪ではありません。
むしろ寝返りは、眠りを守るための運動です。
寝返りには、
- 圧を逃がす
- 血流を回復する
- 皮膚感覚を更新する
- 体温を調整する
- 呼吸を変える
- 胸郭や骨盤の位置を変える
こうした役割があります。
人間は、完全に静止するようにはできていません。
心拍も揺らぎます。
呼吸も揺らぎます。
筋緊張も揺らぎます。
姿勢も揺らぎます。
生体は、揺らぎながら安定しています。
だから大事なのは、寝返りを止めることではありません。
必要な時に、力まず自然に寝返りできることです。

身体は世界を理解する器官である
私たちは、脳で世界を理解していると思いがちです。
でも実際は、身体を通して世界を理解しています。
- 足裏の接地感覚
- 皮膚の圧
- 関節の位置
- 筋肉の緊張
- 呼吸の広がり
- 温度
- 重力
これらの感覚によって、脳は「今ここ」を認識しています。
つまり身体は、世界を理解するセンサーです!
これを身体性、Embodimentと呼びます。
睡眠中は視覚情報がほとんど使えません。
だから脳は、接触、圧、呼吸、温度、前庭感覚、固有感覚を頼りにします。
そう考えると、寝具や寝室環境が睡眠に影響するのは当たり前です。
寝具は単なる物ではありません。
睡眠中の脳にとって、寝具は「世界」なんです。

睡眠講演はLINEで受付中
赤ちゃんはなぜ抱っこだと眠るのか?
発達の視点から見ると、睡眠はさらに面白くなります。
赤ちゃんは、自分で安心を作る力が未熟です。
だから、親の抱っこ、声、匂い、体温、心拍、揺れによって安心します。
つまり赤ちゃんは、他者の神経系を借りて眠っています。
これを共調整、Co-regulationと捉えることができます。
最初は他者に安心させてもらう。
少しずつ、その安心を自分の神経系に取り込んでいく。
そして、徐々に一人で眠れるようになる。
つまり発達とは、安心の内部化です。
この視点で見ると、子どもの睡眠も、大人の不眠も、かなり見え方が変わります。
眠れないとは、安心を作るシステムがうまく働いていない状態かもしれないのです。

現代人が眠れない本当の理由
現代人は、眠るのが下手になったというより、眠れる環境から遠ざかっています。
あえて寝ずにいられる環境がわんさかあります。
- 夜でも明るい
- スマホで情報が入り続ける
- SNSで他人と比較する
- 仕事の連絡がいつでも来る
- 座っている時間が長い
- 歩く時間が少ない
- 自然の光を浴びない
- 身体を使わない
つまり、脳だけが疲れて、身体は眠る準備ができていない。
これが現代人の大きな問題です。
私はこれを、身体性の喪失と考えています。
本来、人間はもっと身体を使っていました。
- 歩く
- しゃがむ
- 運ぶ
- 揺れる
- 呼吸する
- 光を浴びる
- 暗くなれば休む
でも現代では、身体よりも脳ばかり使います。
脳は情報でパンパン。
でも身体は動いていない。
これでは、めっぽう眠れなくて当然です。
寝る前だけ整えても限界があります。
日中の身体が、夜の睡眠を作るからです。
睡眠とは「動きと休息の循環」
睡眠と運動は別物ではありません。
良い動きが、良い睡眠を作ります。
良い睡眠が、良い動きを作ります。
呼吸も同じです。
姿勢も同じです。
生活リズムも同じです。
睡眠は夜だけの問題ではありません。
- 日中にどう動いたか
- どう呼吸したか
- どれだけ光を浴びたか
- どれだけ身体感覚を使ったか
- どれだけ安心できる人間関係や環境があったか
それら全部が、夜の睡眠につながります。
つまり睡眠とは、1日の結果です。
夜だけ頑張っても、正直きついです。
昼の過ごし方を変えずに、夜だけ何とかしようとする。
それ、かなり無理があります。

睡眠講演随時受付中

まとめ:睡眠とは、人間が世界との関係を整える時間
睡眠とは何か。
私は、こう考えています。
睡眠とは、単なる休息ではありません。
脳と身体が、世界との関係を整え直す時間です。
- 睡眠とは、世界との停戦です。
- 睡眠とは、神経系が環境への警戒を下げる時間です。
- 睡眠とは、身体が重力と呼吸と温度と圧に身を預ける時間です。
- 睡眠とは、昨日の自分をほどき、明日の自分を作り直す時間です。
だから睡眠を整えるには、何時間寝るかだけでは足りません!!
いいですか!?
時間だけで睡眠語らんといてくださいよー
- どんな環境で眠るのか
- どんな身体で眠るのか
- どんな呼吸で眠るのか
- どんな神経状態で眠るのか
そこまで見る必要があります。
睡眠は、人生の3分の1を占めます。
それをただの休息として扱うのは、もったいない!
睡眠は、自分自身を整えるための最も根本的な時間です。
さてさて、最後に少し厳しいことを言います。
睡眠を削って頑張っているつもりの人。
それ、努力ではなく、神経系への借金です。
いつか必ず返済が来ます。
だからこそ、睡眠を大切にしてほしい。
ただ長く寝るのではなく、神経系が安心して、身体を預けられる眠りを作ること。
それが、本当の意味での睡眠改善です。
「これ、自分だけじゃないかも」と感じたら、同じように悩んでいる人にもシェアしてあげてください。
\睡眠オタクな彼女|公式Instagram/

睡眠の質を高めるために知っておきたい公的エビデンス
睡眠の質は「なんとなく良い・悪い」で判断するものではなく、科学的にも明確な指標や推奨が存在します。
例えば、厚生労働省では生活習慣や環境が睡眠に与える影響について詳しく解説されており、日中の活動量や光の使い方、就寝前の行動が睡眠の質を左右することが示されています( 厚生労働省 睡眠対策ページ)。
また、最新の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」では、適切な睡眠時間や生活リズムの整え方が具体的に示されており、特にスマートフォンの使用や夜間の光環境が睡眠に大きな影響を与えることが明記されています( 睡眠ガイド2023(厚生労働省))。
さらに、国立精神・神経医療研究センターのガイドラインでは、不眠や日中の眠気といった睡眠障害のメカニズムや対処法についても詳しく解説されており、医学的な視点からも睡眠の重要性が示されています( 睡眠障害ガイドライン(NCNP))。
国際的にも、WHO(世界保健機関)は睡眠を健康の重要な要素と位置づけ、身体活動や生活習慣と並ぶ「健康の柱」として推奨しています( WHO 睡眠に関するガイドライン)。
このように、睡眠は個人の感覚だけでなく、国内外の研究や公的機関によってその重要性が裏付けられています。
だからこそ「なんとなく」ではなく、根拠に基づいた習慣づくりが重要になります。
よくある質問
睡眠の質を上げるには何が大切ですか?
まずは「質を上げる」よりも「質を下げる要因を減らす」ことが大切です。光、音、温度、湿度、カフェイン、スマホ、ストレス、寝具の不一致などを見直しましょう。
柔らかいマットレスの方がよく眠れますか?
人によります。ただし、柔らかければ良いわけではありません。沈み込みすぎると寝返りや呼吸を妨げることがあります。大切なのは、身体が支えられ、自然に動けることです。
寝返りが多いのは悪いことですか?
必ずしも悪くありません。寝返りは圧分散、血流回復、温度調整、感覚更新の役割があります。問題は、寝返りのたびに目が覚める、痛みで動いている、呼吸が苦しくて動いている場合です。
ストレスがあると眠れないのはなぜですか?
脳がまだ外界を警戒しているからです。不安や考え事が多い時、神経系は防御を下げにくくなります。つまり、眠れないのは意志が弱いからではなく、神経系が安全確認できていない状態とも言えます。
赤ちゃんが抱っこで眠るのはなぜですか?
赤ちゃんは自己調整が未熟なため、親の体温、匂い、心拍、呼吸、揺れによって安心します。つまり、他者の神経系を借りて眠っている状態です。
睡眠改善でまず何から始めるべきですか?
起床時間を固定すること、朝の光を浴びること、日中に身体を動かすこと、寝室環境を整えること。この4つは基本です。特別なことより、まず当たり前を整えることが大切です。
参考文献・参考理論
- National Institute of Neurological Disorders and Stroke. Brain Basics: Understanding Sleep.
- Xie L, et al. Sleep drives metabolite clearance from the adult brain. Science. 2013.
- Friston K. The free-energy principle: a unified brain theory? Nature Reviews Neuroscience. 2010.
- Revonsuo A. The reinterpretation of dreams: An evolutionary hypothesis of the function of dreaming. Behavioral and Brain Sciences. 2000.
- Porges SW. The Polyvagal Theory.
- Gibson JJ. The Ecological Approach to Visual Perception.
- Walker M. Why We Sleep.
- Dement WC. The Promise of Sleep.
-
睡眠とは何か?眠れない理由は“神経系と環境”にある|作業療法士が解説
睡眠とは何か、なぜ眠いのに眠れないのかを、神経科学・身体性・環境・発達の視点から作業療法士がわかりやすく解説。…
-
Sleep Is the Result of Your Life: Sleep Cascade, Sleep Frailty, and Sleep Rehab
This article was written by Takayasu Ishigaki, a sleep-…
-
寝ても疲れが取れない原因は“睡眠カスケード”|眠りが浅い・だるい人の根本改善法
寝ても疲れが取れない、眠りが浅い、朝からだるい…そんな悩みの原因は“睡眠カスケード”かもしれません。睡眠不足か…



