寝る前のゲームは睡眠に悪い?睡眠オタクな作業療法士が「ゲームと睡眠」の関係を本気で考える

この記事を書いたのは

睡眠オタクな作業療法士 石垣貴康です。

医療現場で延3万人以上の睡眠と身体の悩みに向き合い、「動きと休息のすゝめ」をベースに、現在は「Totonoe-整-」を運営しています。

国家資格である作業療法士として、姿勢や動作の専門知識をもとに、科学的かつ実践的な睡眠改善を提案しています。専門職の育成や技術指導にも携わっています。

ブログ以外にも、書籍出版や講演、教育機関での授業など、睡眠のことをお伝えしています。

本ブログでは、医学的根拠と臨床経験に基づいた“リアルに使える睡眠情報”を、誰にでもわかりやすく、かつ深掘りしてお届けしています。

「寝る前にゲームすると、睡眠に悪いですよね?」

睡眠講演していると、

これ、よく聞く話です。

子どもが夜遅くまでゲームをしている。
ベッドに入ってからスマホゲームをしている。
大人でも「あと1試合だけ……」と思っていたら、気づけば深夜。

(ゲームって、本当に時間溶けますよね……)

睡眠について発信していると、

「ブルーライトがあるから、寝る前のゲームはダメ!」

という話になりがちです。

でも私は、これだけでゲームと睡眠の関係を説明するのは、ちょっと雑です。

なぜならゲームには、

  • 時間
  • 認知的な興奮
  • 感情の変化
  • 報酬
  • 「もう少しやりたい」という行動

など、睡眠に関係する要素がいくつも重なっているからです。

そして最近の研究まで見ていくと、さらに面白い。

ゲームをしたら必ず睡眠が悪くなる、と単純には言い切れないんですよ。

今回は睡眠オタクな作業療法士として、ゲームと睡眠の関係を少しマニアックに掘ってみます。

ゲームをすると、本当に睡眠は悪くなるのか?

まず研究全体を見ると、ゲームのやりすぎや問題のあるゲーム利用と睡眠との間には、かなり一貫した関連が報告されています。

問題のあるゲーム利用を扱ったシステマティックレビュー・メタ解析では、そうではない人と比較して、

睡眠時間が短い
睡眠の質が悪い
日中の眠気が強い
睡眠問題が多い

という結果が示されています。

特に睡眠問題については、問題のあるゲーマーで高い傾向が確認されています。

成人ゲーマーを対象としたシステマティックレビューでも、ゲーム依存傾向が強い人やゲーム時間が長い人ほど、睡眠時間が短く、睡眠の質が低く、就寝時刻が遅くなる傾向が報告されています。

つまり、

「ゲームと睡眠には関係がない」

とは、さすがに言えません。

でも、ここからが大切なんです。

「ゲームが悪い」のではなく、睡眠までの経路を考えたい

ゲームをした。

睡眠が悪くなった。

この2つだけを見ると、

「原因はゲームだ!」

となります。

でも、本当にそうでしょうか?

私は睡眠を見るとき、こういう因果関係を一度分解して考えます。

ゲーム

就寝時刻が遅れる

睡眠時間が短くなる

これなら、睡眠不足を生んでいる直接的な原因は「ゲームという物質」ではありません。

ゲームによって睡眠のための時間が削られたことです。

実際、ゲームをする人がゲームを続けるために就寝時刻を遅らせる行動は研究でも報告されています。

ここ、めちゃくちゃ重要だと思うんですよね。

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ゲームが睡眠に影響する5つの経路

では、なぜゲームによって睡眠が変化するのでしょうか??

私は大きく5つに分けて考えると理解しやすいと思っています。

① 睡眠時間そのものがゲームに置き換わる

これが最もシンプルです。

23時に寝る予定だった。

でもゲームが盛り上がっている。

「あと1試合だけ」

23時30分。

「負けたまま終われない」

0時。

(ありますよね、こういうの)

起床時間が自由ならまだ調整できます。

でも学校や仕事があれば、朝起きる時間はそれほど変えられません。

つまり、

就寝時刻だけが後ろにズレる。

結果として睡眠時間が削られます。

成人844人を対象とした研究では、ゲーム時間が長いほど就寝・起床時刻が遅くなり、睡眠の質とも関連していました。

私はゲームと睡眠を考えるうえで、まずここを見ます。

何時間ゲームをしたかだけではなく、「ゲームによって何時に寝たのか?」です。

② ゲームによって脳の覚醒度が上がる

ゲームって、テレビとは違いますよね。

自分で判断する。
反応する。
予測する。
勝つ。
負ける。
悔しい。
もう一回やりたくなる。

つまり、かなり能動的な活動です。

特に対戦ゲームやアクションゲームでは、注意、判断、運動反応などを連続して要求されます。

眠るというのは、単に目を閉じることではありません。

覚醒状態から睡眠状態へ移行していく必要があります。

そこに強い認知的・感情的刺激を入れれば、

身体はベッドに入っていても、脳はまだゲームをしている。

そんな状態が起こり得ます。

実験研究をまとめたレビューでも、長時間、特に夜間のゲーム後には入眠潜時の延長や総睡眠時間の短縮などが報告されています。

③ 光によって体内時計へ影響する可能性

そして、よく知られているブルーライトです。

ただ私は、

「ゲーム=ブルーライト=眠れない」

だけで説明するのは避けたいと思っています。

夜間の光曝露が概日リズムや覚醒に影響すること自体は重要です。

でもゲームの場合、

光だけではなく、画面を見る時刻、明るさ、ゲーム内容、覚醒度、ゲーム時間、就寝時刻の後退

などが同時に起こります。

だから、

「ブルーライトカットしたから夜中までゲームして大丈夫!」

とはならないんですよね。

(そこだけ解決しても、睡眠時間を2時間削っていたら意味が違ってきます)

④ 「キリがない」というゲーム特有の構造

ここは睡眠衛生だけでは説明しにくい部分です。

ゲームには、

レベルアップ。
ランキング。
報酬。
ログインボーナス。
デイリーミッション。
対人戦。
ストーリーの続き。

など、

「次の行動をしたくなる仕組み」

があります。

これが睡眠とぶつかります。

眠気が来たから寝る。

本来はこれでいい。

ところが、

「眠い。でもあと1戦」

になる。

つまりゲームと睡眠の問題は、

生理学だけではなく行動科学の問題でもある

ということです。

私はここ、すごく大事だと思っています。

⑤ ゲームが生活リズム全体を後ろへ動かす

さらに長時間のゲームが習慣になると、

ゲーム

就寝が遅れる

起床が遅れる

朝の光を浴びる時間が変わる

朝食や活動開始も遅れる

夜また眠くなる時間が遅れる

というように、

ゲームだけの問題から「24時間の生活リズム」の問題へ変わる可能性があります。

作業療法士として睡眠を見るときに、私はここをかなり重視しています。

睡眠だけを切り取ってもダメなんですよ。

人間は24時間生活していますから。

でも「寝る前にゲームしたら絶対眠れない」わけでもない

ここが今回、私が一番伝えたいところかもしれません。

最近の実験研究では、ゲームをした条件とデジタルメディアを使わず自然ドキュメンタリーを見た条件を比較したところ、ゲーム後に覚醒度は高くなったものの、睡眠時間や睡眠の質に有意差が認められなかった報告もあります。

さらに2025年の成人を対象とした研究でも、時間を制限して管理されたゲームでは、客観的な睡眠の質を悪化させなかったと報告されています。

これ、面白くないですか?

つまり、

ゲームという行為そのものを「睡眠の敵」と決めつけるのは早い。

可能性があるわけです。

問題になるのは、

  • いつやるのか
  • どれくらいやるのか
  • 何をやるのか
  • どれくらい興奮するのか
  • 睡眠時間を削っているのか
  • 自分でやめられるのか

なのかもしれません。

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子どものゲームと睡眠は、もう少し慎重に考えたい

特に注意したいのが子ども・思春期です。

デジタルスクリーンと睡眠を扱ったシステマティックレビューでは、過剰なスクリーン利用と、短い睡眠、入眠の遅れ、夜間覚醒、日中の眠気などとの関連が報告されています。

一方、2026年に発表された若年者の「その日のスクリーン利用と、その夜の睡眠」を検討したメタ解析では、スクリーン時間の増減と睡眠時間・睡眠効率・主観的睡眠の質との短期的な関連は小さく、特に問題になりやすいのは就寝予定時刻を越えて使うことだと示唆されています。

これも非常に重要です。

だから親御さんに、

「ゲーム禁止!」

だけを伝えるのは、私は少し違うと思っています。

見るべきなのは、

ゲームによって、その子の睡眠と翌日の生活がどう変化しているか。

です。

朝起きられない。
学校で眠い。
休日だけ昼まで寝る。
寝る時間がどんどん遅くなる。
ゲームをやめようとしてもやめられない。

こういう変化が出ているなら、ゲーム時間だけではなく生活全体を一緒に見直す必要があります。

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「何時間までならゲームしていいですか?」では答えが足りない

これもよくある質問です。

「ゲームは1日何時間までなら大丈夫ですか?」

気持ちは分かります。

でも睡眠の立場から言えば、私は時間だけでは判断しません。

例えば同じ2時間でも、

18〜20時にゲームをして23時に寝る人

と、

23〜1時までゲームをして、そのまま寝る人

では全然違いますよね。

さらに、

ゲームをしてもスッと切り替えられる人。

ゲーム後もしばらく興奮している人。

「あと1回」が止まらない人。

ここにも個人差があります。

だから私は、

ゲーム時間ではなく、「そのゲームがその人の睡眠に何を起こしているのか」を評価する。

こちらの方が本質的だと思っています。

\ 石垣のInstagram /

ゲーム好きの人に「ゲームをやめましょう」は簡単。でも、それでいいのか?

睡眠指導って、禁止するだけなら簡単なんです。

スマホやめましょう。
ゲームやめましょう。
夜更かしやめましょう。

でも、それって本当にその人の生活を見ていますか?

ゲームが友人とのコミュニケーションになっている人もいる。

仕事や学校のストレスから切り替える時間になっている人もいる。

純粋にゲームが大好きな人もいる。

だったら、

好きなものを全部取り上げて「健康になりましょう」ではなく、好きなものと睡眠をどう共存させるか。

私はこっちを考えたいんですよね。

例えば、

  • ゲーム終了時刻を決める
  • 就寝予定時刻から逆算する
  • 対戦系ゲームと落ち着いたゲームを使い分ける
  • ゲーム後にクールダウンする時間をつくる
  • 休日も起床時刻を極端にずらさない
  • 翌日の眠気まで評価する

こうやって調整できることはたくさんあります。

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ゲームと睡眠で本当に見るべきなのは「24時間」

結局、ゲームと睡眠の関係を考えていくと、

「ブルーライトが悪い」

だけでは説明できないことが分かってきます。

ゲームの時間帯。
ゲームの長さ。
ゲームによる覚醒。
やめにくさ。
就寝時刻。
睡眠時間。
翌日の眠気。
朝の起床。
日中活動。

全部つながっています。

だから睡眠って面白いんですよね。

「ゲームをした」という一つの行動だけを見ても、その人の睡眠は分からない。

私は睡眠を見るとき、

「夜、何をしているか」だけではなく、「その人が24時間をどう過ごしているのか」

を見たいと思っています。

ゲームが悪いのではありません。

でも、

ゲームによって眠る時間を失っているなら、それは一度考えた方がいい。

そして逆に、睡眠を確保しながらゲームを楽しめていて、翌日の生活にも問題がないのであれば、

「ゲームだから全部ダメ」

と決めつける必要もないと思っています。

ゲームをやめるために睡眠を学ぶのではなく、

ゲームも楽しみながら、ちゃんと眠れる方法を考える。

その方が、なんだか人間らしくないですか?

私はそんな睡眠との付き合い方の方が好きです。

この記事を書いたのは

睡眠オタクな作業療法士 石垣貴康です。

睡眠を、ただ「眠るための方法」としてではなく、毎日の生活や心身の状態、そして人生を楽しむための土台として伝えたい。そんな想いで、この記事を書いています。

作業療法士としての臨床経験と、睡眠に関する研究や知識をもとに、難しい内容もできる限り生活に落とし込んでお届けします。

睡眠を知ることで、自分の身体や暮らしを少し大切にしたくなる。そんなきっかけになれば嬉しいです。

この記事が、身近な方の睡眠や生活を見つめ直すきっかけになりそうだと感じたら、ぜひシェアしてください。

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睡眠の質を高めるために知っておきたい公的エビデンス

睡眠の質は「なんとなく良い・悪い」で判断するものではなく、科学的にも明確な指標や推奨が存在します。

例えば、厚生労働省では生活習慣や環境が睡眠に与える影響について詳しく解説されており、日中の活動量や光の使い方、就寝前の行動が睡眠の質を左右することが示されています( 厚生労働省 睡眠対策ページ)。

また、最新の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」では、適切な睡眠時間や生活リズムの整え方が具体的に示されており、特にスマートフォンの使用や夜間の光環境が睡眠に大きな影響を与えることが明記されています( 睡眠ガイド2023(厚生労働省))。

さらに、国立精神・神経医療研究センターのガイドラインでは、不眠や日中の眠気といった睡眠障害のメカニズムや対処法についても詳しく解説されており、医学的な視点からも睡眠の重要性が示されています( 睡眠障害ガイドライン(NCNP))。

国際的にも、WHO(世界保健機関)は睡眠を健康の重要な要素と位置づけ、身体活動や生活習慣と並ぶ「健康の柱」として推奨しています( WHO 睡眠に関するガイドライン)。

このように、睡眠は個人の感覚だけでなく、国内外の研究や公的機関によってその重要性が裏付けられています。

だからこそ「なんとなく」ではなく、根拠に基づいた習慣づくりが重要になります。

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参考文献

  • Kemp C, et al. Sleep in Habitual Adult Video Gamers: A Systematic Review. Front Neurosci. 2021.
  • Kristensen JH, et al. Problematic Gaming and Sleep: A Systematic Review and Meta-Analysis. Front Psychiatry. 2021.
  • Peracchia S, Curcio G. Exposure to video games: effects on sleep and on post-sleep cognitive abilities. A systematic review of experimental evidences. Sleep Sci. 2018.
  • Exelmans L, Van den Bulck J. Sleep quality is negatively related to video gaming volume in adults. J Sleep Res. 2015.

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