睡眠と生理学|眠れない・疲れが取れない理由を身体の仕組みから考える

この記事を書いたのは

睡眠オタクな作業療法士 石垣貴康です。

医療現場で延3万人以上の睡眠と身体の悩みに向き合い、「動きと休息のすゝめ」をベースに、現在は「Totonoe-整-」を運営しています。

国家資格である作業療法士として、姿勢や動作の専門知識をもとに、科学的かつ実践的な睡眠改善を提案しています。専門職の育成や技術指導にも携わっています。

ブログ以外にも、書籍出版や講演、教育機関での授業など、睡眠のことをお伝えしています。

本ブログでは、医学的根拠と臨床経験に基づいた“リアルに使える睡眠情報”を、誰にでもわかりやすく、かつ深掘りしてお届けしています。

☑寝たはずなのに、疲れが取れない。
☑夜になると眠いのに、布団に入ると目が冴える。
☑朝起きても、身体が重い。

こういう経験したことありますか?

このとき、多くの人はまず「睡眠時間が足りないのかな?」と考えます。

もちろん睡眠時間は大切!

成人では、健康のために7時間以上の睡眠が推奨されています【E1】。

ただ、ここで終わらせてはいけません。

というのが今回の内容です。

私は、睡眠は「何時間寝たか」だけではなく、身体が回復できる状態になっていたかで見る必要があると考えています。

ここで大切になるのが、睡眠の生理学的視点です。

睡眠は「休む時間」ではなく「整える時間」

睡眠というと、脳や身体を休ませる時間と思われがちです。

もちろん、それは間違いではないです。

ただ、生理学的に見ると、睡眠中の身体ではかなり多くのことが起きています。

睡眠中には、

  • 脳の情報整理
  • 自律神経の切り替え
  • ホルモン分泌の調整
  • 免疫機能の調整
  • 体温リズムの変化
  • 呼吸や循環の安定
  • 筋緊張の低下
  • 代謝の調整

などが関係しています。

つまり睡眠は、ただ停止する時間ではなく、身体全体の調整システムが働く時間です。

ここが面白いとこなんですよー!?

眠れない、疲れが取れない、朝からだるい。
これらは単なる気合いやメンタルの問題ではなく、身体の生理学的な反応がうまく整っていないサインかもしれません。

ノンレム睡眠とレム睡眠は何が違うのか?

睡眠には大きく分けて、ノンレム睡眠とレム睡眠の2つがあります。

一般的にいう、深い眠りや浅い眠りです。

専門的には、睡眠はN1、N2、N3、REMという段階で整理されいて、一般的にノンレム睡眠は睡眠全体の約75〜80%、レム睡眠は約20〜25%を占めるとされています【E2】。

ノンレム睡眠では、脳波がゆっくりになり、身体の修復や回復に関係しやすくなります。特に深いノンレム睡眠は、身体を回復させるうえで重要です。

一方で、レム睡眠では身体の筋緊張は低下しますが、脳は比較的活動しています。夢を見やすいのもこのタイミングです。

つまり、ざっくり言うと、

ノンレム睡眠は身体と脳の土台を整える睡眠
レム睡眠は記憶や感情、学習を整理する睡眠

こう捉えるとわかりやすいと思います!

リハビリや運動学習の視点で見ると、ここはかなり大切なポイント!

日中に練習した動作や経験は、眠っている間に脳内で整理される可能性があります。

ただし、睡眠と運動学習の関係はまだ研究が進んでいる途中の部分もあります。すべてが単純に「寝れば上達する」と言い切れる話ではないってことです。

でも、少なくとも私は、リハビリやトレーニングを考えるなら、睡眠を無視してはいけないと考えています。

自律神経から見る睡眠

眠るためには、身体が活動モードから休息モードへ切り替わる必要があります。

この切り替えに関係するのが自律神経です。

日中は、仕事、スマホ、運動、ストレス、緊張、人間関係などによって交感神経が働きやすくなります。

一方で、眠る前には副交感神経が働きやすい状態が必要です。

ただ、ここで誤解してほしくないのは、交感神経が悪者ということではないんですね。

大切なのは、必要なときに働き、眠るときには切り替えられることです。

睡眠に神経系が適応しているかっちゅうことです。

寝る直前まで頭が働いている。
呼吸が浅い。
首や肩に力が入っている。
歯を噛みしめている。
目の奥が緊張している。

こういう状態では、身体はまだ「起きて戦うモード」に近いかもしれません。

睡眠を生理学的に見ると、「眠れない」という悩みは、脳だけの問題ではなく、身体が眠れる状態に切り替わっているかを見る必要があります。

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ホルモンと睡眠の関係

睡眠はホルモンとも深く関係します。

代表的なのが、メラトニン、コルチゾール、成長ホルモンです。

メラトニンは、よく「眠りのホルモン」と言われます。ただ、私は「身体に夜を知らせるホルモン」と考える方がわかりやすいと思っています。

朝に光を浴びる。
夜に強い光を避ける。

このリズムが乱れると、身体の夜の準備が崩れやすくなります。

コルチゾールは朝方に高まり、身体を起こす働きに関係します。一方で、睡眠不足やストレスはコルチゾールを含むストレス反応や代謝に影響する可能性が指摘されています【E3】。

成長ホルモンは、子どもの成長だけでなく、大人の身体修復にも関係します。睡眠障害とホルモン調整の関係については、近年も研究が進められています【E4】。

つまり、睡眠はただ眠気の問題ではなく、身体の内側のリズムと深くつながっています。

免疫と炎症から見る睡眠

寝不足が続くと、風邪をひきやすい。
疲れが抜けない。
痛みが強く感じる。
肌荒れしやすい。

こういう体感をしたことがある方も多いと思います。

睡眠と免疫は双方向に関係しています。睡眠は免疫機能や炎症の調整に関わり、睡眠不足は免疫・炎症反応に影響することが報告されています【E5】。

ここは、リハビリや身体ケアの現場でもかなり重要です。

痛みがあるから眠れない。
これはもちろんあります。

でも反対に、

眠れていないから、痛みを感じやすくなっている。

この視点も必要だと私は考えます。

腰痛、肩こり、慢性疲労、メンタル不調。
こうした悩みを、筋肉や姿勢だけで見るのではなく、睡眠による回復力の低下として見ることも大切だと考えています。

呼吸と睡眠はかなり深い

睡眠中の呼吸はかなり重要です!

いびき、口呼吸、鼻づまり、睡眠時無呼吸があると、眠っているつもりでも身体は十分に休めていない可能性があります。

特に睡眠時無呼吸では、睡眠中に呼吸が止まる、浅くなる、酸素が低下する、覚醒反応が起こる、交感神経が高まる、という流れが起きることがあります。

つまり、ベッドの上にはいるけれど、身体の中では何度も緊急対応しているような状態です。

これでは、睡眠時間が長くても回復感が低い!

だから私は、睡眠を考えるときに「何時間寝たか」と同じくらい、眠っている間に呼吸が安定していたかを見るべきだと考えています。

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体温が下がると眠りに入りやすい

眠る前、私たちの身体は深部体温を下げる方向に向かいます

そのためには、手足から熱を逃がすことが大切です。

ここで問題になるのが、

  • 寝室が暑すぎる
  • 寝具内が蒸れる
  • 手足が冷えすぎている
  • 寝る直前に激しい運動をする
  • 入浴のタイミングが合っていない

といったことです。

「寝室環境」や「寝具」は、単に快適かどうかだけではありません。

体温調整を助ける環境かどうか。

ここがポイントです!

だから寝具を見るときも、柔らかい、硬い、高い、安いだけで判断するのではなく、身体が休める姿勢と体温調整を支えているかを考える必要があります。

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代謝と睡眠不足

睡眠不足は、食欲や血糖にも関係します。

睡眠不足とインスリン抵抗性の関連を示すレビューもあり、睡眠の乱れは糖代謝に影響する可能性があります【E6】。

また、睡眠不足と食欲関連ホルモンの関係も研究されていますが、レプチンやグレリンへの影響は研究条件によって結果が一致しない部分もあり、すべてが確定した話ではありません【E7】。

ここも大切です。(大切なとこばっかり、、、)

「夜更かしすると食欲が乱れる」
「寝不足の日ほど甘いものが欲しくなる」

こういう体感は、意志が弱いだけではなく、身体の生理反応として見ることもできます。

つまり睡眠は、メンタル、疲労、集中力だけでなく、体重管理や生活習慣病予防とも関係している可能性があります。

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睡眠リハビリテーションという視点

睡眠リハビリテーションについてはこちら

ここからが、私が特に大切にしたい視点です。

睡眠リハビリテーションは、単に「眠らせる支援」ではありません。

私は、睡眠リハビリテーションを、

眠れる身体・回復できる生活・安心して休める環境・日中に動ける身体を再構築する支援

として考えています。

作業療法の領域でも、睡眠は生活や日中活動と深く関係するテーマとして扱われています。睡眠マネジメントにおいて、作業療法士が環境調整、生活リズム、補助具、教育、活動プログラムなどに関われる可能性が示されています【E8】。

ここで大事なのは、睡眠を「夜だけの問題」にしないことです。

夜眠れない人は、日中の活動量、姿勢、呼吸、光の浴び方、食事、ストレス、寝室環境、痛み、不安などが関係していることがあります。

つまり、睡眠の問題は生活全体の問題でもあります。

だから私は、睡眠を改善するには、

  • 身体機能
  • 呼吸
  • 自律神経
  • 生活リズム
  • 睡眠環境
  • 日中活動
  • 医学的リスク

をまとめて見る必要があると考えています。

睡眠を「時間」で見るだけでは足りません。

その睡眠で、身体は回復できているのか。

ここを見たいんです。

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睡眠を生理学的に見るためのチェックポイント

まずは、次のように見てください。

視点見るポイント
寝ても頭がぼーっとするか、集中できるか
自律神経布団に入っても緊張が抜けるか
呼吸いびき、口呼吸、鼻づまりがないか
体温暑すぎる、寒すぎる、蒸れる感覚がないか
筋緊張首肩、顎、背中の力が抜けているか
免疫・炎症疲労、痛み、風邪のひきやすさがないか
代謝食欲や血糖、体重変化が乱れていないか
日中活動日中に動ける身体になっているか

この表を見ると、睡眠はかなり広いですよね?

だからこそ、睡眠の悩みを「寝る前のスマホだけ」「枕だけ」「睡眠時間だけ」で片づけるのは物足りない。

もちろん、スマホも枕も睡眠時間も大切。

でも、それらは睡眠を構成するほんの一部。

判断は、身体が眠れる状態になっているかです。

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まとめ

睡眠は、ただ脳を休ませる時間ではありません。

呼吸、体温、自律神経、ホルモン、免疫、代謝、筋緊張、日中活動。
これらが関係しながら、身体は夜の間に回復しようとしています。

だから私は、睡眠を「何時間寝たか」だけで判断するのではなく、
身体が回復できる状態だったかで見ることが大切だと考えています。

眠れない。
疲れが取れない。
朝から身体が重い。

その悩みは、身体からの大切なメッセージかもしれません。

その睡眠の中で、身体は何を伝えようとしているのでしょうか?

「これ、自分だけじゃないかも」と感じたら、同じように悩んでいる人にもシェアしてあげてください。

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睡眠の質を高めるために知っておきたい公的エビデンス

睡眠の質は「なんとなく良い・悪い」で判断するものではなく、科学的にも明確な指標や推奨が存在します。

例えば、厚生労働省では生活習慣や環境が睡眠に与える影響について詳しく解説されており、日中の活動量や光の使い方、就寝前の行動が睡眠の質を左右することが示されています( 厚生労働省 睡眠対策ページ)。

また、最新の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」では、適切な睡眠時間や生活リズムの整え方が具体的に示されており、特にスマートフォンの使用や夜間の光環境が睡眠に大きな影響を与えることが明記されています( 睡眠ガイド2023(厚生労働省))。

さらに、国立精神・神経医療研究センターのガイドラインでは、不眠や日中の眠気といった睡眠障害のメカニズムや対処法についても詳しく解説されており、医学的な視点からも睡眠の重要性が示されています( 睡眠障害ガイドライン(NCNP))。

国際的にも、WHO(世界保健機関)は睡眠を健康の重要な要素と位置づけ、身体活動や生活習慣と並ぶ「健康の柱」として推奨しています( WHO 睡眠に関するガイドライン)。

このように、睡眠は個人の感覚だけでなく、国内外の研究や公的機関によってその重要性が裏付けられています。

だからこそ「なんとなく」ではなく、根拠に基づいた習慣づくりが重要になります。

参考文献

  1. 【E1】Ramar K, et al. Sleep is essential to health: an American Academy of Sleep Medicine position statement. 2021.
    https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8494094/
    成人では健康のために7時間以上の睡眠が推奨されること、睡眠時間・タイミング・規則性・睡眠の質が重要であることの根拠として使用。
  2. 【E2】Brinkman JE, et al. Physiology of Sleep. StatPearls. 2023.
    https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK482512/
    ノンレム睡眠とレム睡眠の基本的な割合、睡眠周期、睡眠段階の説明に使用。
  3. 【E3】Hirotsu C, et al. Interactions between sleep, stress, and metabolism. 2015.
    https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4688585/
    睡眠不足、ストレス反応、コルチゾール、代謝との関係を説明する根拠として使用。
  4. 【E4】Jiao Y, et al. Sleep disorders impact hormonal regulation: unravelling the intricate relationship between sleep and endocrine function. 2025.
    https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC12315459/
    睡眠と内分泌・ホルモン調整の関係を説明する根拠として使用。
  5. 【E5】Singh KK, et al. Sleep and Immune System Crosstalk: Implications for Health and Disease. 2024.
    https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11559494/
    睡眠と免疫機能、炎症反応の相互関係を説明する根拠として使用。
  6. 【E6】Singh T, et al. Does Insufficient Sleep Increase the Risk of Developing Insulin Resistance: A Systematic Review. 2022.
    https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9036496/
    睡眠不足とインスリン抵抗性、糖代謝の関係を説明する根拠として使用。
  7. 【E7】Liu S, et al. Sleep Deprivation and Central Appetite Regulation. 2022.
    https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9783730/
    睡眠不足と食欲関連ホルモン、食欲調整の関係を説明する根拠として使用。ただし、レプチン・グレリンに関しては研究結果にばらつきがあるため、断定しすぎない形で記載。
  8. 【E8】Ho ECM, et al. Occupational Therapy Practice in Sleep Management: A Review of Conceptual Models and Research Evidence. 2018.
    https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6087566/
    作業療法と睡眠マネジメント、環境調整、生活リズム支援などの睡眠リハビリテーション的視点の根拠として使用。

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